43話 思いつきの提案
次話は17時10分投稿予定です
「ヨカッタネ……許してもらえて……」
イルミは優しく悪霊に語りかける。
「いやー、ホントですよー、まさか許してもらえるとは思わなかったー。あなたたちって心が広いんですねー」
悪霊は揉み手をしながらにこやかな笑顔で僕たちを見上げる。
「でしょ〜、わたしのこころは宇宙よりひろいっ! やさしく、かわいく、あたま良く! ねね、シオンくんも、そ〜おもうでしょ」
「え、あ、うん……そ、そうだね……」
頭良いは同意出来なかったが、それ言うとうるさそうなので、とりあえず同意しておく。
「それでは、約束どおり、おれはこれでおいとましますんでー、さよならー」
悪霊は約束どおりにこの家を去ろうとする。ん……? ちょっと待て……。
「ところで、どこに行こうとしてるんだ?」
「ええ、どっかその辺の不幸そうな家に取り憑こうかと……」
「な、なんだって!? 冗談じゃない! 僕たちのせいで誰かが不幸になる状況とか、クソ面白くないな! えーと、ちょっと待ってて!」
「あっ、はい……」
僕は悪霊をひとまず引き留め、家の購入の手続きをしに山田さんのところへ戻る。
「ど、どうなりました……松武さん?」
「この家を買うことに決めたので、手続きをお願いします。えっと、1000万です」
僕は札束を取り出し、山田さんに手渡す。
「おお! 買っていただけるんですか? しかも現金払いとは、なんと気前の良い! いや、本当に助かりました。後の手続きは、こちらで済ましておきますので、この家は自由にお使いください」
「うん、お願いします」
山田さんは笑顔で立ち去り、残りの手続きをしてくれることとなった。よし、イルミとローザのところに戻ろう。僕は踵を返し、家の中へと戻る。
「ア、オカエリ、シオン、ドウダッタ……?」
「ああ、もうこの家は僕たちの物だよ。好きに使って良いってさ」
「オオ、ヤッタネ……!」
イルミはガッツポーズで喜びを表現する。心なしか水色のツーサイドアップの揺れが激しい気がする。あまりの嬉しさで揺れてるのかな?
「こんな良い家がきょうからわたしたちのものになるなんて、うれしい! イエーイ、やったね。ほら、家なだけに」
「く……くっだらねえ……」
ローザは家とイエーイをかけたダジャレを言いながらアホ毛を揺らし羽根をパタつかせはしゃいでいる。
あまりのくだらなさに僕は思わずツッコミを漏らしてしまった。ちなみに悪霊は僕たちを眺めながらうろうろしている。
「なにいってんのシオンくん、わたしのギャグは宇宙一! 神様や悪魔もわらいだす! わかった〜?」
「げっ! ツッコミに絡んできたし! わ、分かったよ、君が宇宙一!」
他愛もないやりとりをしばらく続け、きりの良いところで僕は悪霊に話を切り出す。
「ところで、悪霊にとっての家の代わりになるものってなんだい?」
「へ、おれにとっての家ですか? そーですね、霊的な力の強い石の祀られた祠とかがあれば……」
霊的に強い石ねえ……ダンジョンで手に入れた石でちょうど良いのはあったりするのかな? 僕は何となくグレート・アトラクターを発動させ、内部を調べる。
「あれ? これは……?」
それは、なんとレインボウ・ストーンだった。ブローカーに売却する際、どうやら売り忘れていたんだろう。
「おおー! なんですか、これ!? なんと心地良い波動の石! こんなのは見たことありません! ああー、癒されるー」
悪霊はホッコリとした表情で気持ちよさそうにしている。
「そ、その石で良いんだな。よし、さっそく庭に祠を建ててもら……いや、なんなら僕たちで作ってしまおうか?」
その方が早いような気がする。よし、イルミとローザにも聞いてみよう。
「シオン……良いの……?」
「え? うん、僕は良いと思うんだけど」
むしろイルミは乗り気なのだろうか? 僕に聞き返してきたくらいだし。
「わたしもさんせい! まっててね、悪霊ちゃん、わたしたちが立派なほこらをつくって、あげるから」
「あげるとか言ってるよ、この子! なんて恩着せがましいんだ!」
ローザは悪霊の頭をポンポン撫でながら恩を着せようとしている。僕はまたもやツッコミを入れる。
「ほ、祠を作ってくれるんですか……?」
悪霊は手を組んだまま唖然としていた。
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