40話 特売の訳あり一軒家
次話は12時10分投稿予定です
誰が来たんだろう? 僕は玄関に向かい、ドアを開ける。
「おはようございます。私、赤鳥不動産の山田と申します」
灰色のスーツを着た、七三分けの髪型でメガネをかけた男性が現れた。
「お、おはようございます……」
不動産屋さんが僕に何の用なんだろ?
「実はですね、この近辺に良い物件がありましてね、そのご紹介をさせていただこうと思い、足を運ばせてもらいました」
「良い物件?」
確かに一戸建てが欲しいとは思ってたけど、高いだろうしなぁ。僕は腕を組んで考え込む。
「なになに? どしたのシオンく〜ん?」
「シオン、オキャクサン……? エ〜ト、ナンダッケ……? お茶を振る舞うと良いのかな……?」
考え込んでるとイルミとローザがパタパタと後からついてきた。
「……お、おはようございます。赤鳥不動産の山田と申します。特売の一軒家の紹介をさせていただこうと思いまして……」
「おはよ〜、わたし、ローザっていうんだ〜」
「ワタシはイルミ……ヨロシク……」
山田さんは一瞬ギョッとした顔をしたが、すぐに持ち直し2人に挨拶をした。イルミとローザも挨拶を返す。
そりゃあ、いきなりアニメから出てきたような水色髪と金髪の美少女が出迎えてきたらビックリもするよね。
「こちらが、その一軒家となります」
山田さんはパンフレットを開き、物件の紹介をする。
「満天市赤鳥4丁目にある和風の一戸建てで、築60年と少し古めですが、しっかりとした良い家ですよ」
「赤鳥4丁目? ここと目と鼻の先でめっちゃ近い。確かに良い家ですけど、特売とはいえ、やっぱり高いんですよね……」
やっぱ、3〜4000万はするんじゃあなかろうか……とても手が出せない。良さそうな家なだけに少し残念だな……。
「2割3割は当たり前、赤鳥不動産は最高の物件を提供いたします。ちなみに今回の物件は超特売の1000万円となります。もちろんローンも可能です。どうですかな?」
「なっ! い、1000万!?」
マ……マジで……? 今、僕たちの手元には3500万円ある。下手に手を出せる金額なのが悩ましい……うぬぬ、どうする?
『必要なもんはケチるんじゃねえぞ。安物買いの銭失いってことわざがあるからな』
トオルさんの言葉が頭をよぎった。これは、買っても良いという天の声なのだろうか……?
「このアパートの部屋で3人は少し狭いと思われます。これほどの特売物件はそうそうないと思いますが、これを機にいかがですかな?」
山田さんはグイグイと特売物件を勧めてくる。しかし、冷静になって考えてみると、一戸建てとしては安すぎる気がするな。
「ねね、シオンくん、いいんじゃないかな〜、おかねもたくさんあるし、わたしは買うのにさんせいだよ〜」
「広いお家は……イイネ……ワタシもイッテミタイナ……」
イルミとローザは賛成のようだ。とりあえず、物件を実際に見せてもらおうかな、幸いすぐそこだし。
「うーん、そうだな……」
「この子たちも、こう言ってますし、土地も含めて1000万円というのは中々ありません。さあ、ぜひ!」
「と、土地も含めて1000万だって!? いくら何でも安すぎる! これ絶対何か訳あり物件だ! 山田さん、もしかしてこの家幽霊でも出るんですか!?」
僕はうっかり冷静さを欠き、ツッコミ気味に山田さんに問いつめてしまう。
山田さんは、しまったという表情で僕を見つめていた。
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