39話 本が見つかりシオンは大ピンチ
次話は8時10分投稿予定です
景色が真っ白になり、少しずつ見覚えのある内装が見えてきた。アパートの僕の自室だ……にしても、ずいぶん久しぶりな気がする。
「うわぁ〜、ここがシオンくんのおへやなんだね〜、ちらかってて、きたな〜い」
「うっ! 返す言葉が無い! ちょ、ちょっと待っててくれ、ささっと片づけるからさ」
「ウン……待ってるよ……」
僕はグレート・アトラクターを発動させ、部屋のゴミをどんどん放り込む。こんな使い方をしたらモナドが泣くかもしれんが、後でまとめて捨てるから、まあ良いかな。
5分ほど片づけて部屋が綺麗になった。トイレも風呂場も完璧だ。僕はイルミとローザに部屋の片づけが終わったことを伝えようとする。
「あれ? イルミとローザはどこ行ったんだろう?」
外には出た様子はないし、トイレにも風呂場にも居ない……あ、寝室はまだ片づけてなかったな……。
「え……寝室……? しまった! 1番先に寝室を片づけなきゃあいけなかったんだ!」
忘れていた……そもそも昨日イルミを寝室に寝かせる前に対処しておく必要があったというのに、なんてマヌケなんだ僕は!
「マズいぞ……まさか……僕の寝室に行ったんじゃあないだろうな?」
恐る恐る僕は寝室のドアを開けてみる。すると、イルミとローザは何かの雑誌を読んでいるようだった。
……少し、離れてて雑誌の表紙が見えないな……あれ……? 何で2人とも顔を赤らめてるんだ……? ベッドの位置もズレてるし……。
僕は必死に嫌な予感を振り払おうとする、が……。
「はぁ……はぁ……イルミちゃん、すごいのみつけちゃったね……」
「ウン……ナンダロ……トテモ、ドキドキする……」
嫌な予感は確信に変わり、僕は悟った……ああ……間違いない……。
「ぎぃやあああああっ! しまったぁーっ! 見つかった!」
僕は頭を抱え、酷い顔で叫び散らす。
「んふふ〜、みつけちゃったよ〜、シオンくんのエッチなほん」
ローザは口元を雑誌で隠し、ニタニタとした笑みを僕に向けていた。
「くっそー! ピンポイントでベッドをズラしたってことは、さては初めから当たりをつけてたなー!」
「えへへ、バレちゃった」
ローザは頭をカリカリかきながら羽根をパタつかせ上機嫌でとぼけている。
「と、とにかくだ! イルミは見ちゃダメだ! 早すぎる! さあイルミ、僕に本を渡すんだ」
僕はイルミに駆け寄り、雑誌を取り上げようとするが、その瞬間、イルミは凄い速さで雑誌を真上に持ち上げる。
「ン〜……ヤダ!」
イルミはほっぺたを赤らめ、きっぱりと拒絶の意志を表明する。
「ひぃぃぃぃっ! ヤダじゃあない! とにかくマズいんだ! 良い子だから、大人しく僕に雑誌を……」
僕は諦めずに雑誌を取り返そうと説得を試みようとした瞬間、イルミが突然僕に飛びかかってきた。
「うおわぁ!?」
イルミに抱きしめられ、またも僕はベッドに押し倒される。宿の時の二の舞だ。
「エ〜ット、シオン……マズハ……コウシテミタイ……」
イルミは顔を赤らめ、僕に顔を近づける。
「ちっ、近い! 近すぎる! 待ってくれーイルミ! 嬉しい状況なんだろうけど、女の子に押し倒されてファーストキス奪われるとか、こんな情けない状況は、やっぱり嫌だーっ!」
僕は何とか抜け出そうと、もがいてみる、が……。
「ぐぉっ! ダメだ! 凄い力だ、抜け出せない! 力の使い方にこんなにも差があるなんて!」
「シオンくん、あきらめなさい♪」
ローザはあっけらかんと笑顔で言い放つ。
「なあんてこったぁーっ!」
僕の絶叫は空しく響き渡り、イルミの唇は、あと数センチのとこまで迫っていた。もはや僕は脱出不可能で絶対絶命だ! どうしよう!
「ピンポーン……」
玄関のチャイムが鳴り響く……誰か来たようだ。イルミは突然のチャイムにビックリし、僕を離して立ち上がりキョロキョロしている。まだチャイムの音を小さくしてなかったな。
だ、だが、とりあえず助かった……僕はホッと胸を撫で下ろす。内心、嫌じゃあなかったのは秘密なんだけどね。
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