3話 不死身の肉体
ちっ、近い! イルミの顔が近い!
「ン……ドシタノ……シオン?」
「い、いや、何でもないよ」
女の子とこうしてまともに会話したことのない僕にとって、この距離は刺激が強すぎる。恥ずかしいやら嬉しいやらの感情が混ぜ混ぜになって、ドギマギしてしまった。
「ソレジャ……次は3の項目をタッチしてくれるかな……」
「3だな、よし」
僕は気を取り直し、ジーベン・ゲバウトの3の項目をタッチする。
「モナドの検索って項目が出たはずだから……そこから欲しいモナドを絞り込んで探すと良いよ」
「確かに出てきた。よし……」
欲しい能力……僕が望むものは……くっ、考えると以外と咄嗟には出てこないものなんだな……。イルミはその間、伸びをしたり髪をいじったり自身の体を見て触って興味深そうにしていた。
『死にたくない……ずっと……生きていたい……』
……っ! ああ……そうだったな……僕の……望みは……。
「ア、ソウダ、シオン……もし、思いつかないなら、ワタシからのおすすめのモナドがあるん……」
「死にたくない……」
「エッ……?」
うっかり、イルミの言葉をさえぎってしまう。
「ずっと……生きていたい……いつまでも……」
思い出していた。檻の中で咽び泣いていた……あの時の気持ちを……。
「不死身の肉体が欲しい……老いることも死ぬこともない……いつまでも力強く永遠を生きていける不老不死の肉体を……」
なにを望むか……もうすでに決まってたんだな……なら、僕は……。
「……シオンは……ワタシの心が読めるのかな……?」
「へ……?」
突然、何を……?
「すすめようとしたモナドが分かったのは、ナンデカナ……と思ってね……」
「……ま……まさか……」
鼓動が高まる……何かがザワザワと上がってくる、この感覚……。
「エリジオン……不死身の肉体を手に入れる永遠のモナドだよ……。望むものが……ワタシと同じだったというのは……アレダネ……嬉しい、と感じているよ……」
イルミは心底嬉しそうに僕を見つめ微笑む。
「ワタシも……虚無に戻りたくない……ずっと……生きていたい……このカタチある存在として、アナタの世界で共に生きる喜びを……永遠に……」
言葉に出来ない思いが僕を満たしてゆく……。
この不思議な気持ちは何だろう……分からない……。
でも……悪いものじゃ……ない……。
『エリジオン──習得者を永遠の存在へと変貌させる超常の力。現在の年齢と外見で固定化され、完全消滅状態からでも3分で完全に復元するほどの再生能力を得られる。副次効果として飢餓と窒息状態に陥ることがない。だが、その状態の際はステータスが低下する』
「しょ、詳細の時点でとんでもないモナドだな、これは……」
僕はジーベン・ゲバウトの3の項目にエリジオンをセットする。
「コレデ……ワタシもシオンも不死身の存在となったんだね……」
「実感は感じられないけど、なんか体の調子が良くなった気がする」
しかし、本当に不死身になったんだろうか……いや、簡単に試す方法はあるぞ! 僕は試しに呼吸を止めてみた。
「ン……? ドシタノ、シオン?」
「ちょっとした実験さ」
──1分経過……。本来なら息苦しくなり耐えられなくなるころだが、今のところ全くその様子がない。
──10分経過……。少し力が抜けてダルくなる感覚がやってきたが、それだけだった。これは凄いぞ!
「ふう……詳細どおり、無酸素状態でも大丈夫みたいだ」
「オオ……やったね、シオン!」
よし、次はどんなモナドをセットしよう……。
僕の心は高揚感と安堵感、全能感で満たされていた。
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