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37話 少年期の思い出

次話は21時10分投稿予定です。

「キミ……どうして1人でいるんだい?」


 いじめられて倒れていた僕に手を差し伸べ、その子は優しく語りかけてくれた。


「そうか、みんなとどこか違っていて浮いているから、うまくいかなかったんだね」


 肩まである黒髪を持つ半袖半ズボンの少年は、透き通るような眼差しと声をしていた。それは、とても安心感を感じさせるものだった。


「良かったら、ボクと友達になってくれないかな? あ、無理にとは言わないんだけど……」


 少年は恥ずかしそうに頭をポリポリかく。


「やったぁ、ありがとう! それじゃ、一緒に遊ぼう。あ、名前は何て言うんだい? そうか〜、それじゃ、シーちゃんって呼んで良い? そうだ、ボクの名前は……」


 ──少しずつ目が覚めてゆく……僕は寝ぼけ気味に右手を顔の前まで持ってきて握ったり広げたりを繰り返したあと、上体を起こし大あくびをする。


「夢……か……」


 それは子供の頃の夢だった。明るく元気で優しく不思議な子で、僕と友達になろうと言ってくれた。


 だが、出会った1ヶ月後、なんの前触れもなく転校していなくなってしまったんだ……ずっと、忘れていた……いや……忘れようとしていた……。


「なぜ、今になって思い出したんだろう……」


 僕はつぶやき、ふと周りを見る。すると……。


「……は……?」


 僕の右側にはローザが、左側にはイルミが僕を挟み込むようにスヤスヤと眠っている。


「ひぃぃやあああああっ!」


 僕はたまらず奇声を発し、ベッドから飛び跳ねて床に転げ落ちる。いかん! 冷静に、クールに。


「ア……シオン、オハヨウ……」


 目を擦りながらイルミは伸びをし、マイペースな挨拶をする。


「お、おはよう、イルミ……ところで、僕のベッドで寝ていたのは何故?」


「ン〜、ナンデダッケ……?」


「僕が聞いてるんだよぉっ! また、すっとぼけて誤魔化そうとは、くっ、そうはいかないぞ!」


 僕は両手をワナワナさせながら何かに立ち向かう素振りを見せてみる。


 そういえば、イルミとローザと喋っていた途中から記憶が途切れている。いつの間にか眠ってたのか?


「う〜ん、よくねたぁ……おはよ、シオンくん、イルミちゃん」


 ローザはムクリと起き上がり、大あくびをしながら首を回してポキポキ言わせている。真後ろまで首が回るのを見るのは少し怖い……。


「オハヨ……ローザ……」


「お、おはよう……」


 ぬぬ、朝っぱらから2人に押されっぱなしでは格好がつかないな、よし、ここは気を取り直してと。


「よし、まずは朝食を済ませよう。その後はブローカーに素材を換金してもらいアパートに帰ろう」


「ほ〜い」


「ウン、了解ダヨ、シオン……」


 僕たちは1階で朝食を済ませ、ブローカーの店に行く。さて、今回はいくらで買い取ってもらえるんだろう、楽しみだな。


 僕はグレート・アトラクターを発動させ、中の素材を全て出しブローカーに査定をしてもらう。


「む……少々お待ちください」


 ブローカーはパソコンを操作し、何かを調べているようだった。ま、まさか、素材が値崩れを起こしたんじゃああるまいな……。


 イルミとローザは店内を物色しながら談笑しているようだ。さあ……いくらになるんだ……? 僕は腕を組み、内心ヒヤヒヤしながら待つ。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

少しでも、面白そうだったり、先が気になると思っていただけましたら、

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