34話 様々な事情
すいません、前話の投稿時間にミスがありました、
次話は12時10分投稿予定です。
大きく息を吐き出し一呼吸置いたあと、トオルさんは言葉を続ける。
「少しして、8人集まって話し合いが行われたんだ。どうするかってな」
「えっと、ど〜なったの?」
「8人を4人にまで縮小しようってな、要するに4人クビだ」
力無い言葉でトオルさんは続ける。
「戦闘能力が低いヤツを外そうって流れになって、それを聞いて俺はすぐに自分からチームを抜けると言った。それから、ここで採掘をするようになってな」
「自分から……?」
僕は思わず聞き返す。
「今まで世話になった仲間に、少しでも嫌な選択をさせたく……いや……仲間からクビを言い渡されるのが、しんどくてな。だから自分から辞めた」
トオルさんは言い直し、3本目のコーヒーを飲み干した。
「上手く言えないけど……ワタシはエライと思うよ……ミンナの事、考えて決めたトオルは……」
トオルさんの心情を察したのか、イルミは優しい言葉をトオルさんに投げかける。
「……ありがとよイルミの嬢ちゃん、少し救われた気分だぜ」
トオルさんは穏やかな表情でイルミにお礼を言う。僕には言えなかった優しい言葉を何の気負いなく紡げるイルミを、優しい子だと改めて思った。
「まあ、なんだ……色々あったが、俺も落ち着くとこに落ち着いたってわけよ、贅沢さえしなければ十分黒字だし、なにより、自分のペースで働けて、安全で誰かに気を遣うこともねえ。単純でつまらねえ作業と思われるかもだがよ、俺は採掘けっこう好きだぜ」
トオルさんの表情は明るさを取り戻し、少し元気になったようだった。
「その気持ち、分かる気がします……僕も、誰かのペースに合わせたり、気を遣うのが出来なかったから……」
「そうか、お前さんも色々あったみたいだな」
トオルさんが再び差し出してくれたコーヒーを僕は受け取り、一気に飲み干した。
「人生の先輩として俺から出来るアドバイスは1個だけだ。大金を稼げるようになっても、贅沢のし過ぎだけは止めとけ。1度贅沢に慣れちまったら、何らかの理由で稼ぎが少なくなっても、今の生活レベルを下げるのは簡単じゃねえ」
トオルさんは真剣な表情で僕に語りかける。
「マ……マジですか……?」
「ああ、みんな借金をしてまで今の生活を続けようとしていたぜ。一歩間違えば、俺も同じようになってた」
トオルさんは、その有様を見てきたのだろう。言葉の重みが違う。
「き、肝に銘じておきます……」
「おう、だが、必要なもんはケチるんじゃねえぞ。安物買いの銭失いってことわざがあるからな」
「ソノ、コトワザはドウイウ意味かな……?」
「わたし、わかるよ〜、やすいもの買いまくると、すぐこわれてお金を損するってやつ〜」
「はっはっ、そういうこった」
4人で談笑しながら穏やかな時間が流れて行く。
「……誰かとこんなに話し込んだのは久しぶりだ。ありがとよ、楽しかったぜ」
「ウウン、コッチコソ、ダヨ……」
「また、機会があったら、おはなししよ〜ね〜」
トオルさんは僕たちにお礼を言い、立ち上がった。
「なんか、色々あるんだろうが、野暮な詮索はしねえよ、じゃ、縁があったら、またな」
「はい、トオルさんも、お元気で……」
別れの挨拶を言い、トオルさんは横穴へと戻っていった。
僕はグラマトンを展開し、時空間転移にこの場所を登録する。さあ、いったん10層に戻ろう。
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