32話 15層の中継地点
次話は23時10分投稿予定です。
僕たちの凄まじい勢いは止まらず、13層、14層を超え、15層へと到達しようとしていた。
ふと、懐中時計を見てみると、時計の針は夜の7時を指していた。
「15層に着いたら、素材を売ったあと10層の宿まで時空間転移で戻ろう。宿代はすでに払ってたし」
「ウン、イイヨ……マタ、ステーキが食べられるね……」
イルミはよほど、ダンジョン牛のステーキが気に入ったのか、目をキラキラ輝かせている。
「わたしもいいよ〜、ちょうど、おなかペコペコだったし、こんどは、なにをちゅうもんしよっかなぁ〜」
ローザは伸びをしながら料理の注文を考えている。しっかし、イルミもローザも食欲旺盛だ、食べるのが本当に好きなんだなぁ。
僕たちはゲートを潜り、15層の中継地点へと到達する。
そこは、今までの中継地点とは違い、岩で出来た狭い洞窟になっており、とても栽培や牧畜、住居を建てるには向いてない場所だった。
「え〜、なにここ〜、せまいし、いわしかないし、たてものなんてないみたいだよ〜」
ローザは少しガッカリした様子で愚痴る。
「本当だ……いつもなら、広い空間で建物が建てられてたはずなのに」
岩の中には所々、光る鉱石が埋まっており、洞窟の中は思ったより明るかった。まるで坑道の中にいる感覚だ。酸素も存在してるようで、もしかしたら酸素を生成する鉱石かコケなどがあるのかもしれないと思った。
「ン……奥の方から、ナニカ聞こえるよ……カツン、カツン、ッテ……」
イルミは洞窟の奥を指差している。
「確かに音が聞こえる、誰かいるのかもしれない」
「ちょっと、いってみよっか、なにか、おはなしきけるかも」
「よし、行ってみよう」
「ウン……」
僕たちは音のする方へ歩いてゆく。ここの洞窟、坑道と言った方がいいかな、縦、横幅とも3メートルほどの広さの一本道で、坑道の横には人が通れるくらいの横穴が複数空いている。
「オ……ココカラのようだね……アレ……音が消えたよ……?」
イルミは横穴の1つを覗き込みながらつぶやく。
「イルミちゃん、もしかしたら、だれかでてくるかも、こっちおいで〜」
「オットト……ウン……」
ローザはイルミに手招きをしながら自分のところに来るよう促す。すると、横穴の中から1人の男性が姿を現した。
「ん? 見ない顔だが、あんたらも採掘に来たのか?」
男性はボサボサの髪をかきながら気だるそうにつぶやいた。
「いえ、モンスターを倒して素材集めてる最中で、立ち寄っただけなんですよ」
「なるほどな、にしても砂漠はヤバかっただろ? 相当消耗したはずだ。ここには何の設備もねえから、先に進むなら帰還石で帰った後、改めて転移石で来ることをお勧めするぜ。多少、金はかかるがよ」
男性はぶっきらぼうな口調ながらも、僕たちの身を案じてくれる言葉を言ってくれた。
外見は30くらいだろうか、少し目つきが悪く三白眼をしており、緑色のジャージを着ている。
ボサボサの髪と無精髭を生やしていることから、あまり自分の外見にはこだわらない性格なんだろうか?
「えっへへ〜、わたしたちは、まだまだげんきだよ、でっかいサンドワームやムカデも、楽勝ってかんじで」
ローザは両腕で力こぶを出すポーズをとりながら笑顔で答える。
「な、なに!? あれを倒せるってことは、あんたらSランクのオブリオンなんか?」
「え?」
男性は目を見開き驚いている。どういうことだろう? まだここは15層でSランクのモンスターは出ないんじゃなかったっけ?
いや、思い返してみれば本来、僕はオブリオンとしては駆け出しで、経験はほとんど無く、知識も聞きかじった程度だったんだ。
本当は入念な準備をしてダンジョンに潜るべきなのに、その必要がなかったから、情報も準備も不十分なまま行き急いでしまった。
少し、この人と話をしていきたい……僕は男性の次の言葉を待つ。
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