27話 不穏な噂
次話は22日の7時10分投稿予定です。
「どうやらガセじゃないらしい、1層のモンスターにすら歯が立たなくなってるって話だ」
「そりゃあ、スキルがなければ地形を変化させることやモンスターを倒すことが出来ねえからな、もうどうしようもねえ。オブリオン廃業だな、あいつら」
男性2人はコーヒーを飲みながらタバコを吸っている。煙がこっちに少し流れてきたが嫌な香りではない。ハーブのような線香のような、そんな感じの香りだった。もしかしてダンジョン由来のタバコなんだろうか?
「俺たちも他人事じゃねえぞ、いつ、そのトラップにかかってスキルがゼロになるか分かったもんじゃねえ」
「でもよ、もうすでに調べが入ってんじゃねえのか? どんな部屋か、どんな形状のトラップか、分かってりゃ避けられんだろ」
「それがよ、調べられねえらしい。ガルドたちがフロアに到着したタイミングで、ちょうど72時間のリスポーンが起こってたらしく、もうそのフロアには二度と行けねえって話だ」
「マジかよ……おれ、しばらくオブリオン休業するぜ」
「そう考えるやつは少なくねえって話だ、実際、ダンジョンに潜るやつが減ってるらしい」
「はー、早いとこ解明されて欲しいもんだぜ」
ため息をつきながら2人組の男性は席を立ち、宿の外へ出て行った。
「……シオン、今の人たちの話、気になるネ……」
イルミは僕の手をいじりながら顔を寄せる。照れはあったが、今は話の方が気になった。
「イルミも聞いてたんだな、確かに、あの部屋と同様の罠が他にもある可能性は高いよな」
僕はイルミの方を見ながら呟く。
「う〜んとね、ほかには存在しないはずだよ〜」
ローザは左手で僕の髪をワシワシとしながら断定する。
「知ってるのかい、ローザ?」
「ん〜、しってるといっていいのかな〜、わかるってかんじで直感的にまちがいないって、いいきれる自信はあるよ〜」
僕はローザに向き直ると、ローザは僕の髪から手を離し、こめかみに指をあてて自信たっぷりに答えてくれた。
「ありがとう、それは良い情報だ! モナドがゼロになるトラップとかヤバすぎるからね、さっそく他の人にも伝えよう」
「えへへ、ほめられちゃった♪」
ローザは頭をカリカリかきながら照れている。この辺の挙動はイルミと似ているし、やはり可愛いな。
「ア……デモ、根拠ってのが示せないから、信じてもらえるカナ……?」
「うっ、それは確かに……」
イルミの言い分はもっともで、ローザの情報が絶対に正しいという証拠を持ってない。
ローザが裏ボスであるとか、ジーベン・ゲバウトを所有してるとか言っても信じてもらうには怪しい情報だし、そもそも、言っちゃマズい気がする。これは、僕たちだけの秘密ということにしておこう。
「シオンくんは、わたしのおはなし、しんじてくれるんだねっ」
ローザは上機嫌で笑顔を僕に向けてきた。
「え? いや、ほら……断定してるってことは間違いないんだろうし、そもそもウソをつく必要ないだろうから、疑う理由なんてないって」
「んふ〜、わたしからのシオンくんへの好感度が100万ポイント上がったぁ〜」
ローザは満面の笑顔で僕の眼前に顔を近づける。
「上がりすぎだし! また、めっちゃ近いし!」
「ムム……ワタシもウカウカしてられないね……」
僕はローザにツッコミを入れ、イルミは対抗意識を燃やしている。にしても、本当に賑やかになったなあ……。
「お……お待たせしました……ダンジョン牛のステーキ3人前です」
店員さんは少し呆れた様子で注文したステーキを運んできてくれた。とりあえず、難しいことを考えるのは後にして、遅めの昼食を食べよう。
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