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25話 飛躍した推論

次話は21時10分投稿予定です。

「10年経った今も41層を突破出来ないこと、ローザが最下層にいて剣とコートを失った途端、自我に目覚めたこと、グラマトンとモナドという単語と意味を知っていたこと……そして、僕の見た不思議な夢……それらを関連づけて考えてみたんだ……」


 僕は神妙な表情で話を続ける。


「うんうん、それでそれで?」


「不思議な夢……? ソレハ、ワタシもトテモ気になる……」


 イルミとローザはさらに身を僕の方に乗り出す。


「41層以降を突破して最下層に辿り着くにはジーベン・ゲバウトを持っていないと不可能なのかもしれない。多分、それ前提のモンスターの強さなんだと思う」


 Sランクのオブリオンでもステータスは1万が限度だと耳にはさんだ。そのパーティで太刀打ち出来ないんじゃ、通常の突破は無理だと仮定してみる。


「そういえばローザは裏ボスと言ってたけど、ダンジョンのラスボスはどんなモンスターなんだい?」


 僕はローザに聞いてみる。


「うん、50層にすっごくおおきなドラゴンがいて、そいつがラスボスなんだよ、そのさきの火山のマグマのなかに秘密のゲートがあって、そこからわたしのいる隠された51層にいけるってかんじで」


 ローザは両手を広げながらドラゴンの大きさを表現していた。相当大きいんだろうな。


「なるほど、巨大なドラゴンがラスボスなんだな。ただ、確信したよ、ローザの元に辿り着くには絶対にジーベン・ゲバウトが必要なんだと」


「ン……? ソウナノ……?」


 イルミは何故? といった顔で僕を見つめる。


「どんなに強くなっても、マグマの中を潜っていったら死んでしまう。ジーベン・ゲバウトで得られる規格外のモナドを習得してれば別なんだろうけど……」


「ホウホウ……」


 少し決めつけが酷いと自分でも思ったが、あえて断定して話を進める。


「本来は51層にいるローザに勝てれば、剣とコートを入手するのと同時に自我に目覚め、仲間になってくれるイベントだったんだと思う。ただ、検索して入手してしまったから、不具合というか前倒しという状態になったのかもしれない」


 イルミとローザはうなずきながら僕を見つめている。


「何者かが導いてるんだ……ジーベン・ゲバウトを持つ存在が来るのを、ずっと待っていたんだ、きっと……」


 僕はイルミと出会った時のことを思い出していた。ほんの昨日のことだったはずなのに、何故か遠い日のことのように感じる。


「ワタシと似ているね……シオンと出会って自由になれたってところが……」


「うん、だよね、わたしもそう思うよ〜」


 イルミとローザはお互いを見ながらうなずいている。


「夢の中の存在は……どうか、頼む、と言ってた。どういう意味かは分からないけど……」


 そう……何が目的なんだろう? このダンジョンやジーベン・ゲバウト、イルミとローザを創り出した存在の望みは……? 


 いや、そもそも、夢の存在と同一かどうかの確信も無い。


 僕の独断と偏見による推論は、こんな感じか……自分で言ってて苦しい理論だよ……。結局何も分からなかったし。


「あ、わたし、わかっちゃったかも、神様がわたしとイルミちゃんをシオンくんと出会わせてくれた理由ってのが」


「な、なんだってーっ!?」


「ローザ、ソレハ本当!?」


 ローザは自信満々に両手をグーにしながら満面の笑顔になる。


「わたしとイルミちゃんを永遠によろしくって意味でねっ、とゆ〜わけでシオンくん、わたしたちとけっこんしよ〜、ねっ♪」


 ローザは僕の手を握り、イルミの手と重ね合わせ一緒に両手で握り込んできた。


「……いきなり何言い出すんだぁーっ! ローザ、冗談も休み休み言ってくれ!」


 僕は2秒ほど思考が止まり思わず大声で叫ぶ。


「今まで女の子とつきあったことすら無いのに、それすっ飛ばして結婚とか有り得ないだろーっ! しかも2人だなんて、問題しかないわ!」


「わたしたちさえよければ、なんにももんだいなし! ねね、イルミちゃん、どう?」


 叫ぶ僕をよそにローザは笑顔でイルミの肩にポンッと手を置く。


「ケ……ケッコン……? ナンダロウ……コノ、胸の高鳴りは……? ウン、ローザ、良いかも……」


 イルミは顔を赤らめ、すっかり乗り気になっている。


「ちょ、ちょっと待って、何この展開は……? いやね、嫌というわけじゃあないんだけど、あまりにも急過ぎて頭がついていってくれなくて、嬉しいという感情より困惑のほうが大きくてさ……」


 僕はまたもやうろたえ、席を立って後ずさりをし、部屋のドアに向かおうとする。


「フッフッフ……逃げられないよ、シオン……」


「しまった! ドアに先回りされた!」


 イルミは嬉しそうにドアの前に立ち、僕の退路を塞ぐ。


「さあさあ、シオンくん、おとなしくしようね〜、今からいっぱい、かわいいかわいいしてあげるから」


 ローザは両手を広げ、手をワキワキさせている。


「マズい! このままじゃ、イルミとローザに襲われる! 2人ともとても可愛いけど、こんな情けない展開は嫌だーっ!」


「エ、カワイイ……? 嬉しいよシオン……」


「よし、イルミちゃん、いちにのさんで、とびかかるよ〜」


「ヨシキタ、ローザ……イチ……ニノ……」


「ま、待て、落ち着け2人とも……物事には順序というものがあってだな……」


 僕はイルミとローザを落ち着かせようと必死に説得を試みる。飛躍した推論がこんなことになるとは夢にも思わなかった。


 ……うろたえながらも、内心思う。僕は今まで、こんな風にバカ騒ぎしたことなど無かった……。


 すっかり暗くなってしまった僕を、なんの気負いもなく喋れるようにしてくれたこの子たちには感謝しかないよ……。


 あなたの目的が何なのかは僕には知る由は無い……。それでも……この子たちと僕を引き合わせてくれたことを……ありがとう……。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

もし少しでも、面白そうだったり、先が気になると思っていただけましたら、

ブクマと★を入れていただけますと、嬉しいです。


広告下から入れられますので、よろしければお願いします。

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