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24話 ローザの謎

次話は18時10分投稿予定です。

 ローザはしばらくイルミと戯れたあと、ベッドの上から羽ばたいてイスに着地する。


「ふ、普通に歩いて座るんじゃダメなのか……?」


「うん、だって、このほうがおもしろいし」


 呆れる僕をよそにローザは楽しそうに首を左右にフラフラさせている。イルミもイスに腰かけ、水色のツーサイドアップをいじりながら話に参加する。


「……モシカシテ、ローザは、ワタシと同じ存在ナノカナ……?」


 漠然としていて、端から見れば意味は分からない。だが、イルミはある意味核心をついたかのような質問をローザに投げかける。


「ん〜、正直なところ、わかんない……わたしという意識……っていったらいいのかな。それがめざめたら最下層にいて、剣とコートをとりかえさなきゃと感じたままにゲートをくぐっていったら、シオンくんとイルミちゃんに出会ったんだよ」


 ローザはこめかみに指をあてながら多少おぼつかない口調で話す。


「この剣とコートが元々ローザの物なら、それを探知して僕たちの所に来たというのは変じゃあないよな、確かに」


 僕は考えを自分なりに整理しながら腕を組んで話す。つまり、剣とコートは1点物のモナドでジーベン・ゲバウトで習得した際、ローザからモナドが外れてしまったということか……。


「ローザ、サッキ、自分のことを裏ボス……って言ってたけど、ソレガ、ダンジョンのことに詳しい理由ナノカナ……?」


 イルミは少し身を乗り出す。


「うっ……じ、じつはなんだけど……わたしが裏ボスってことと、剣とコートがわたしのものっていう実感がシオンくんたちと話していくうちに、ど〜でも……じゃなくて一気にうすれていっちゃって、さらに……」


「さ、さらに……?」


 ローザは少し目を泳がせながら話を続けていく。さっき、どうでもって言おうとしたのは流すとして、僕は聞きにまわる。


「なぜか、ダンジョンやふつうの知識っていうのが沸き起こってきて、わかるようになっていっちゃったんだよね〜」


「ソッカ……ダンジョンのこと分かるのは、トテモ便利だけど……理由が分からないというのは、ナンカ不安だね……」


 イルミはうなずきながら少し不安そうな顔をする。自身の存在がはっきり分からない不安は僕も分かる気がする。


 僕のこの力も、イルミのことも、ダンジョンのことさえも、根本的には上手くいってるという事実以外は、何も分かってはいないのだから……。


「なあローザ、このダンジョンを創った存在が誰なのか、なんで日本にダンジョンへのゲートが現れたのか分かるかい?」


「う〜ん、それはわかんないかな〜」


 ローザは僕の顔をマジマジと見ながら答える。僕は少し照れてしまい、目をそらしそうになるが、対話をする以上、真っ正面から見て話そうと思った。


「そうだ、ローザ。手をタッチして……僕たちと同じようにディスプレイのようなものは出せるのかい?」


「うん、グラマトンは出せるよ、じぶんの能力が数字とかモナドとかでわかるのはべんりでおもしろいよね〜」


 ローザは、あっけらかんとしながら左手をタッチしてグラマトンを展開してみせる。


「オオ〜、ローザも出来るんだね……ドンナ、モナドを持ってるのか気になる……」


 イルミはローザのグラマトンを覗き込もうとする。


「……イルミとローザは、何らかの関係性がある可能性が一気に大きくなったな……」


「ほわっ!?」


「フェッ……?」


 僕はテーブルに両肘をついて口の前で手を組みつぶやいた。イルミとローザはすっとんきょうな声を思わず上げる。


「ディスプレイやスキルって言い方は僕たち地球人がそう呼称していただけなんだ。正式名称が分からなかったからさ……グラマトン、モナドという本当の名を知っているのはイルミだけだった。でも、ローザは自然にディスプレイをグラマトンと言い、スキルをモナドと言った……なら、イルミとローザは無関係じゃあないと僕は思う」


 イルミとローザはお互いを見合ったあと、僕の方を向いて身を乗り出してきた。


「……! そ、そうだ! 直感的な推論に過ぎないんだけど、僕の考えを聞いてくれないか?」


「ウン、聞きたい……!」


「わたしも、シオンくんの妄想を聞きたい〜!」


「妄想言うなーっ! ゴ、ゴホン……では、今から僕の考えを述べさせてもらうよ」


 僕はわざとらしく咳払いをし、気取った言い回しをして自分を落ち着かせる。でも、ローザのボケですでに幾らかリラックス出来たのは有り難かったな。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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