14話 ゆったりとした時間
次話は7時10分投稿予定です。
「バ、バカな……こんな……おっかしいな、最初は勝っていたはずなのに」
僕はオセロ盤を見つめながら負けを受け入れられないでいた。
「フッフッフ……ゲームって面白いね。遊べば遊ぶほど上手になっていく実感があるし、勝つのは楽しい……」
イルミはオセロの駒と水色の髪をいじくりまわしながら不敵な笑みを浮かべていた。
「くっ、なんの! 今度は将棋で勝負だ。ルールはこのスマホに書いてあるとおりで、まずは3回ほど練習試合をしよう!」
「良いよ〜、受けて立つよシオン……」
僕は将棋盤と駒を用意し、スマホを使い、イルミにルールを教えながら3回ほど練習試合を始めた。
「ン〜、ダイタイ分かったかな……ンジャ、勝負しよ、シオン……」
「よーし、行くぞ、イルミ!」
僕は気合いを入れ、イルミと将棋を始める。こう見えても将棋には少し自信があったんだ。オセロのようにいかないぞ!
──10戦後……。
「バカな……こんな……こんなことが……!」
またもや僕は負けという事実を受け入れられず愕然とつぶやく。
「フフフ〜、10戦ともワタシの勝ちだね。マダ勝負してみる……?」
イルミはドヤ顔を始め、僕から取った駒を積み上げながら笑顔で答える。なんて物覚えの早さだ、このままでは何もかも追い抜かれてしまう。
「きょ、今日は少し頭の調子が悪いだけだよ、明日こそは勝つさ!」
「ワタシに勝てるかな〜」
イルミは上機嫌にニコニコしている。僕は負け惜しみを言い、将棋とオセロを綺麗に整理してテーブルの端っこに置く。その後、ソファーへと移動しリモコンでテレビをつける。
「シオン、ソノ、四角い箱は……?」
「テレビと言って、遠くで起こってる事やアニメやドラマとかを写してくれる機械だよ」
「ホホ〜ウ、ドレドレ……」
イルミはテレビにも食いついたようだ。僕がソファーに座るとイルミも隣に座ってきた。
改めて間近で見ると、イルミは凄く可愛い。まるでこの子自体がアニメやゲームの世界から来たかと思うほどだ。やはりドキドキする。
「コノ、アニメっていうの、ワイワイして楽しいね……」
それは子供向けのアニメだった。
「子供に人気のコメディアニメだったかな。以外に大人も見ているって話で、僕もたまに見ていたな」
「ソレジャア、一緒に見ようか……」
「ああ、良いよ」
僕はイルミと一緒にアニメを見る。アニメの場面に合わせてイルミの表情が驚いたり笑ったり泣きそうになったりとコロコロ変わる。
イルミは物静かで辿々しい喋り方をするけど、本当に表情豊かである意味賑やかだ。そんなイルミを見るのは、やはり楽しいな。
「ウ〜ン、面白かった……」
「だな、一緒に見ると、なおさらだ」
アニメを見終わり、イルミは伸びをしてくつろいでいる。さて、そろそろお風呂の使い方も教えておかないとな。
「ソウイエバ、シオン、向こうの部屋で何かしてたけど、アノ部屋はナニカナ……?」
「ああ、あの部屋はお風呂場と言って、温かいお湯に入って体を綺麗にする所だよ、ちょうど使い方を教えようと思ってたんだ」
「ウン、教えて……」
本当にちょうど良かったな。僕はイルミをお風呂場に案内する。
「ここが服を置く所で、奥が湯船であの中に入って温まるんだ。上がったら、大きなタオルで体を拭いて服を着て戻るんだ。それじゃ、ゆっくりしてってくれ」
僕はお風呂の使い方をイルミに簡単に教え、ささっと居間に戻ろうとした。
「アレ……一緒に入るんじゃないの……? ご飯やゲームやテレビは一緒だったのに……?」
イルミの立場からしたら、もっともな疑問をストレートにぶつけられ、僕の思考は数秒停止してしまった。
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