100話 超存在となった青年の吐露
「……キミを知った時……ボクは申し訳なかった……あの辛い人生を……キミにも辿らせてしまったのだと……」
青年は顔を押さえ、涙を流しながら思いを吐露する。
「小、中、高校と……ボクもいじめられていた……当時はいじめられる原因なんて考えもしなかったよ……ただただ……いじめてくるヤツらに……憎悪と殺意を抱くばかりだった……!」
憎悪と殺意……表向きの雰囲気からは彼がそんな感情を内に秘めていただなんて想像もしなかった。
「学校を何とか卒業して……20年間働いて……色々経験したよ……初めて親の気持ちが分かった気がする……正直、辛かったよ……働くの……何度も胃潰瘍になったし、頭髪もほとんど無くなった……」
労働の苦しみ……1年ちょっとに過ぎなかったが、上司に怒鳴られ、追い立てられ、怖かった日々を僕も思い出していた……青年の話をうなずきながら聞き入る。
「早く死んで……楽になりたいと思ったことも……1度や2度じゃあなかった……でも……お父さんに紹介された看護士見習いの時に……死に損なってしまって……もうボクには自ら命を絶とうとする選択は……選べなくなっていた……!」
「そこまで……だったのか……」
かける言葉が見つからない……僕はそこまで追いつめられた経験はなかった……気持ちが分かるなんて言えない……。
「仕事に追われ……軋轢を生んでしまいながら生きるうちに……思い知ったよ……ボクに関しては……いじめられる原因は……何もかもボクにあったんだよ……他人の気持ちを考えて行動出来ない……それに気づいても……改善しようと出来な……いや……しなかった……!」
青年は、心の底に秘めていたであろう思いを吐き出し続ける。僕もウンブラも、ただ青年を見つめていた。
「何もかも……嫌になっていた……自分のことも……働くことも……生きることさえも……そして……嫌気が差すこと自体が……もう心底嫌になっていた……」
「クニヒロさん……」
「そんな時だった……ある情報を耳にしたのは……」
「ある情報……?」
僕はまさかと思い、聞き返す。
「現状を何とかしたいと模索するうちに、2012年に世界が滅ぶという予言を聞きつけてしまった……また、ノストラダムスのような終末予言だと軽く考える一方で……今度こそ当たって世界が滅んでしまうのかと怖かった……死んで……楽になりたいと思っていたのに……変だよな……」
青年は自嘲気味に微笑み、話を続ける。
「ボクなりに調べてみたよ……ネットや書籍の情報を手当たり次第に集めていった……アセンション……フォトンベルト……アカシックレコード……聞き慣れない単語ばかりで……最初は混乱してたな……」
青年は背筋を伸ばし、深呼吸をしたあと海岸に目をやる。
「調べていくうちに……奇妙な話が発覚していった……実は滅びの予言ではなく……宇宙から光がやってきて……人類が進化する年だったのだと……」
青年の瞳に僅かだが、光が戻ったように見えた。
「のめり込んでいった……ボクは、いつしか……真実を探求しているという崇高な意識のもとに行動してるのだと錯覚するようになってしまっていた……」
やっぱり、次元上昇に傾倒してたんだ……何かにすがらずには……いられなかったんだな……。
「全ての出来事を……その時に備えるために魂を成長させる糧だと認識するようになり、表層意識においては……前向きになったような言動をとるようになった……会社の人からも、そう思ってもらえることが増えた……」
そして青年は一呼吸置き、僅かにうなだれ微笑みを消す。
「だけど……何もかもが……幻想に過ぎなかった……」
心が折れたような表情をしながら青年は続ける。
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