99話 僕という存在を生み出してくれて、ありがとう……
ウンブラと青年は抱き合って泣き続けたあと、ゆっくりとお互いを離し、そして青年は僕を見上げる。
「シオン……ボクを……恨んでいるかい……?」
「え……?」
青年の姿は銀髪であること以外は僕とそっくりで若々しく、肉体も細めの筋肉質で強壮で、彼も人智を超えた力を有しているであろうという事実は直感的に感じ取った。
だが、その目は遠い目をしており、力の無い声の感じからも、まるで疲れ切った老人を思わせるようだった。
彼からの意図の理解出来ない問いかけに僕は聞き返す。
「恨んでいるって……何があったんだ……?」
「……ボクが次元上昇によって存在が昇華した際、ボクの魂の一部は現世に取り残されてしまい、それが転生してキミになったんだ……全ては……ボクが原因なんだよ……」
「一部……原因……?」
魂の一部が転生……? それに、原因って……?
銀髪の青年は人が座れそうな大きな流木に腰掛ける。
僕も続いて青年に相対する形で流木に腰掛け、ウンブラは羽根をパタつかせ僕の隣に飛び乗り座り込む。
「何もかもが……他の人と違い、上手く行かなかったと思う……両親とも……外見も気質も似てなかったはずだ……軋轢が生まれないはずがない……辛い人生だったろう……」
青年は申し訳なさそうにうなだれる。確かに、父さんと母さんは、僕がどちらにも似てないと、よく口論をしてた……どちらかが浮気したのだろうと、お互いに疑心暗鬼になってしまってた。
「普通の人が出来ることが出来ず……考え方も感じ方も他の人とはズレてしまってた……周囲は理解も許容も出来ようはずもない……誰が悪いわけでもなかった……ただ……ボクたちは……そこにいるべきではなかったんだよ……」
「クニヒロさん……」
ウンブラは哀れみの声を青年にかける。
他人の気持ちを考えて行動出来なかった……回りに合わせて上手くやれなかったし、能力も低かった……いつしか僕は孤立し、1人で過ごすようになり、それが僕にとっての普通になっていた……でも……。
「僕は……あなたを恨んでなんかいないよ、むしろ、感謝してる」
「か……感謝……?」
青年は驚き、目を丸くして唖然としている。
「そのおかげで、僕は望む全てを与えてもらった……力も、仲間も、自由も……不死身の存在となりて、絶対に失うことのない永遠の幸せが……今、僕のもとにあるんだ……」
改めて、僕は全てを与えてもらった喜びを噛みしめる。
「シオン……キミは……」
「シオンさん……」
「だから、そんなに自分を責めないでよ、むしろ、僕からはこう言わせてもらいたい」
僕は立ち上がり、銀髪の青年に頭を深く下げる。
「僕という存在を生み出してくれて……本当に、ありがとう……」
波の音に混じり、銀髪の青年が静かに嗚咽する声が聞こえてくる……。
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