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プロローグ 生贄にされた青年

「ガルド! これは一体どういうことなんだ!」


 人1人入れる鳥かごのような檻の中で僕は叫んだ。

 魔方陣の上に立つように言われ、その通りにしたら檻が展開され今の状況に至る。


「はぁ? 見りゃ分かんだろ、部屋の仕掛けを開けるためにテメェを生贄にしてんだよ」


 全身を立派な鎧で固めた茶髪の大男、ガルドは下品な薄ら笑いを浮かべながら僕に向かって言い放った。


「アンタ、本当にバカよね、あたしたちのような強パーティが底辺のアンタを入れた時点で変だと思わなかったわけ?」


 胸当てと半ズボンを装備した軽装で短い黒髪の少女、クラはガルドの横で邪悪な笑みを僕に向けている。


「貴方みたいな単純なお人好しは、どうせ遅かれ早かれ死ぬんですから、ここで私たちの役に立って死んでください」


 灰色のローブをまとった長い黒髪の女性、エミは淡々とした表情で冷たく僕に言い放つ。


「そんな! うそだろ、みんな! 何かの冗談だよな!」


 僕は檻を揺らしながら必死に叫ぶ。

 うそだ……こんな……。

 

「ほんと、テメェは救いようのないお人好しだぜ。作戦があると言われたからって何の疑問もなく俺に蘇生石預けて魔方陣の上に乗るたぁ、バカにも程があるぜ」


 ガルドは嘲笑を僕に向ける。


「新しいヤツが入るまでのつなぎでテメェを入れたんだが、想像以上に使えないヤツときた。さっさと追放するつもりだったが、生贄に利用出来ることが分かってな、こうして利用させてもらったってわけだ。はっはははは!」


 そして僕に向かって大笑いを始めた。


「……全く疑問が無かったわけじゃなかった。でも、無職になってお先真っ暗な底辺の僕をパーティに入れてくれて良くしてもらったことが嬉しかった……だから、僕はみんなを信じようと思ったんだ……」


 僕はうつむきながらガルドに思いを吐露する。


「けっ、何が信じるだ、バカバカしい。所詮、世の中は力と金が全てなんだよ。テメェみてぇな弱者は強者に食われてハイ終わり。そんな末路がお似合いだぜ」


 ガルドは顔を歪めながら、侮蔑するような表情で僕に吐き捨てた。


「ガルド、こいつウザイよ、さっさと仕掛け作動させてお宝ゲットしよ」


 クラは苛ついた様子でガルドに促す。


「そうだな、じゃあ、あばよシオン」


 ガルドは後ろを振り返り、生贄の作動スイッチを押し込んだ。


「待ってくれ……助けてくれ!」


 僕は手を伸ばし、必死に命乞いをする。


「見苦しいですわよ。黙ってさっさと死んでくれませんこと?」


 エミは冷酷に僕に対して吐き捨てる。

 その時、真下の床が消え、僕を乗せた檻が下降してゆく。


「うわああああああ!」


 檻はゆっくりと下降を続け、僕の周りはすでに真っ暗闇に閉ざされてしまった。


「おい! 部屋の扉が全部閉じたぞ! どうなってんだクラ!」


「あ、あたし知らないわよ! 見立てじゃこんな……」


 2人の声が聞こえる。何が起こってるのかは分からないが、もうすぐ僕は……死ぬのか……。

 今までの記憶が走馬燈のように頭を駆けめぐる。


 ……小学、中学、高校とバカにされ、いじめられ、両親からは怒鳴られ殴られ、仕事も上手くいかずクビにされ無職となり、家賃を滞納して、もうすぐアパートを追い出されそうになる始末……。

 思えば、良いことなんてほとんど無い人生だった……。


 でも、ガルドのパーティに入れてもらって僕の人生好転するかもと思ったんだ……その矢先に、このザマか……。

 ガルドの言うとおり、僕みたいな人間の末路なんてこんなものなんだな、と不覚にも思ってしまった……それでも……。


「ふっ……ぐっ……死に……たくない……生ぎで……いだい……」


 僕は檻の中に座り込み、涙を流して咽び泣く。


「た……助けて……誰か……助けてくれぇーっ!」


 だが、無慈悲にも僕の声は闇の中に消え、檻の動きは止まることはなかった。


 ──どのくらい降りたのだろう。檻が小さく揺れ、底に着いたのだと分かった。手を伸ばしてみると、あるはずの鉄格子が無く、もしかしたら檻が無くなったのかもしれない。


 ……けど、真っ暗だ、何も見えない。こんな闇の中、とてもじゃないが動くことなんて出来ない。

 恐ろしくてたまらない……もうすぐ僕は無惨にも殺されるのだろう。一秒一秒が永遠にも思えるほど長く感じられた。その時だった。


「な、なんだ……あれは……?」


 闇の中に突然、淡く輝く水色の球体が現れ、僕にゆっくりと近づいてきた。

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