掴めるか
オリジナルの商品が作れる場合でも、どういうものを作ってほしいのかもある程度決めておいたほうがチーム内のプレゼンの時にイメージが付きやすいだろうと資料をまとめた。みんなで集まる前に秘書課の人に個別で連絡を入れて相談してみた。「こういうのは初めてなので資料に過不足がないか見てもらえないでしょうか?」もちろんOKの返事が来た。会議室を取るという話も出たが、一瞬で終わると思うので、直接席に行かせてもらうことになった。社内移動の時に持ち歩いているバッグにあるものを入れて行った。資料を見てもらい、いくつかアドバイスをもらった。最後に「小向さん、お忙しいのに、色々とありがとうございました!これ良かったら、召し上がってください」と今話題のスイーツをバッグから取り出した。周りの人もチラッとこちらを見た。「えー、そんなのいいのに~」と言いながらもとても嬉しそうだ。「たくさんあるので、みなさんにもお渡ししてもいいですか?」と少し大きめの声で言う。隣の人が「あ、ここの知ってるー!いつも並んでるよね。食べてみたかったんだ~」何人か集まってきた。好きなのを取ってもらい、手が離せなさそうでこちらに来ない人のところへは自ら渡しに行った。「お騒がせしてしまいすみません。よろしければ召し上がってください」低姿勢で持って行った。全員にお渡しし、「ありがとうございました。失礼します」と深めにお辞儀をし秘書課を後にした。本当の目的はこれだ。資料を見てもらうだけではなく、秘書課全員に顔とできれば名前を売っていく。なかなか秘書課に出入りすることはできないが、恐らくほとんどの人がやっているのだろう。みんなもらいなれている様子だった。でもこれを繰り返していくことで秘書課とのパイプを作っていく。
チーム内で集まり、それぞれピックアップしたお店を2・3店舗プレゼンした。どこも良さそうなところばかりで悩んでしまう。自分の選んだお店以外で、どこが良いか多数決をとることになった。ここは点数稼ぎというよりも本当にいいと思うところに挙手をした。予算範囲内で収まりそうなので、上位3店舗に発注することになった。残念ながら、自分の選んだお店は4番目立ったため選ばれなかった。ここで選ばれていれば上司の得点が稼げたはずなのに仕方がない。お店が選ばれなくても、オリジナル商品の案が採用されるように手を抜かないでやろう。注文するお店でどんなことができるのか確認し、予算を見つつ検討する。オリジナル商品の案を持ち寄っていたのは自分を含め3人だった。それを元にしてブラッシュアップしていく感じになった。自分が出していた「小さいカラフルなケーキを並べて、遠目から見ると一つの大きなデザインになる」というのが採用された。メンバーの一人にデザイナーがいたので、その人が中心となりデザインを考えてくれた。意見がまとまり、提案したお店が採用された人が発注してくれることになった。あとは当日の搬入を手伝うだけ。総会の3日前、グループチャットで搬入時間の確認をしていると、あることが発覚した。
一人発注し忘れていたのだ。デザイナーからデザインを後日もらってから発注する流れになっており、グループチャットに送られていたが担当者がスルーしていたようだ。急いでお店に問い合わせるも3日前では対応できないとのこと…。材料の発注や人員確保も必要だから断られて当然だ。そのメッセージを見て、すぐに自分がピックアップしていたお店に電話してみる。似たようなサンプルがあり、そこから連想して案を出したからもしかしたら…。結構凝ったデザインになっていたので、少しデザインを変更してもらえれば何とかできそうとのこと。急いでみんなにも知らせデザイナーを連れてお店に向かった。どういったデザインにすれば出来そうかお店の方と相談し、デザイナーが修正していく。本来なら小さい試作品を作ってもらえるが、今回は時間がないのでできる限り詳細を伝えて、あとはお任せになる。イメージ通りになるかはわからないが、お店の方もプロだから良きようにしてくれるだろう。でもどうにか総会までに手配できるところが見つかってよかった。会社に戻ると発注し忘れていた奴が待っていた。ひどく落ち込んだ様子で謝ってきた。「まぁ何とかなりそうだし、大丈夫だよ。当日の搬入は手伝ってくれよ~」どういう理由で忘れていたのかよくわからないが、落ち込んだ姿を見ると責めることはできなかった。
総会当日は14時から搬入が開始されるため、チームで集まってランチをし、そのまま向かうことになった。今日は何のトラブルも起きませんように…。搬入時間を店舗ごとにずらしているので、スケジュール通りに行けば混み合うこともないはず。まずは1店舗目の搬入が始まった。ホテルのほうの準備もあるため、人が多くぶつからないように慎重に運んでもらった。大体時間通りに搬入が終わりそうなタイミングで2店舗目の俺が発注したお店が到着したとの連絡が入った。すれ違うスペースはあるけど混雑を避け、一旦駐車場で待機してもらった。1店舗目の人をお見送りし、2店舗目の搬入を開始した。3日前に頼んだとは思えないほど良いものに仕上げてくれていた。色も鮮やかで目を引く。少し離れたときに見えるデザインや角度も重要なため、色んな場所から見ては配置を調整していく。バッファを見てスケジュールを組んでいたが、思ったより時間がかかってしまった。すると3店舗目の搬入が開始していた。担当者がメンバーに声もかけずに入れてしまったのだ。ホテルの人も増えてきている中、搬入が重なり一気に混雑し始めた。するとチームのリーダーが3店舗目の担当者にその場で注意し始めた。「おい、何で何も言わずに搬入進めてるんだよ」「到着したって連絡が来たし、スケジュール的にもあと数分だったから」言い訳にも呆れるが搬入してもらっているお店の方にも失礼だし、とりあえずこの場を納めないと…。小向さんに2人を移動させつつなだめて欲しいとお願いし、俺は2店舗目の調整時間を確認、3店舗目の人たちには少し角のほうで待機してもらうことにした。2店舗の調整も数分で終わった。俺は下までお見送りに行くため、3店舗目の担当者に声をかけに行った。秘書課の人が上手く2人をなだめてくれていた。「時間がかかってごめん、調整終わったから搬入頼む。」と伝え、担当者には搬入に向かってもらった。俺はリーダーを連れてお見送りに向かった。お店の方同士も申し訳なさそうな気まずい雰囲気が流れていた。
駐車場まで送り、3日前に発注したにも関わらず引き受けてくださったお礼と、先ほどのゴタゴタの謝罪、心ばかりに会社のグッズをお渡しした。うちの会社はいろいろとグッズを作っており非売品だが、取引会社へのお手土産とかで使われている。会社のグッズが思っていた以上に喜ばれた。お見送りし終わり、リーダーと2人になった。「さっきはごめん、あの場で言うのは配慮が足りなかった」と謝られた。「バタバタしていたんで仕方ないですよ~」と答え、3店舗目の搬入を手伝いに戻った。順調に進んでいるようで安心してみていると、総会を仕切っている部長が進捗確認に現れた。一瞬で空気が変わり、少しピリつく。部長の周りに集まろうとしたその時だった!