ここからが勝負時
とにかく上司や人事を接待する毎日。でもそのおかげで?査定は毎回高評価でお給料も上がっていく。プロジェクトが上手くいこうが行くまいが関係なかった。本当は上手くいっていなくても、上手くいっていたときの一部分だけを大きく言い、あたかも上手くいっているように見せればいい。立ちいかなくなってもリーダーのせいではなく、会社の方針が変わったとか違う理由をつけてプロジェクトを終了させる。その後はまた新しいプロジェクトを立ち上げ、再びリーダーになれる。そんなんでよくこの会社潰れないよな~と思う。
リーダーの次は複数のプロジェクトを束ねる課長のようなポジション、その次は部長と進んでいくが、仕事ができなくても気に入られているだけでいいからどんどん人があふれていく。そのたびに新しい部を作り、部長職につかせる。プロジェクトもどんどん立ち上げリーダーや課長も増やしていく。部長まではすいすいと上り詰められそうだ。問題はその後、部長職でとどまっている人は大勢いる。どうやったらその先に行けるのか、部長以上の職に昇進した人はここ数年で一人もいない。役員になると辞める人はそうそういないし、首を切られることもないから停滞しているのだ。だけどこの会社はまだ若い会社だから役員たちは40~50代前半。定年には程遠い。どうしたら部長以上になれるのか。今の部長たちはもちろん役員や常務・社長にしっかりゴマを擦っている。でもそれだけでは昇進できないのだ。今から別の対策をとっておかないと部長どまりになってしまう。
とりあえず役員たちの詳細を調べる必要がある。直接探ってもマイナスな部分は入ってこないだろうからそれぞれの秘書に探りを入れていくとするか。秘書課には同期もいないし、接点もほとんどないから親しい人もいない。まずは秘書課の人と仲がいい人を見つけよう。秘書課に同期がいる先輩に声をかけてみた。「先輩の同期ってよく集まったりされるんですか?」同期で仲がいいのかが重要だからな。「急にどうした?まぁちょこちょこ集まったりしてるよ」おぉ、仲良さそうだな。「いや、最近集まる回数が減っていて、このまま無くなっていくものなのかなって思って~」適当にごまかしつつ、この先輩から秘書課の人を紹介してもらうのがいいかもしれないな。
翌週、社内イベントを行うことが発表された。各部署数名、運営担当を決めるようにとのこと。これはチャンス!秘書課からも数名出てくるわけだし、普段かかわらない色んな部署にパイプがあったほうが今後何かと都合がいいはず。率先して立候補した。もちろんこういう時に先陣きって立候補すると上司の点数稼ぎにもなる。すると、あいつも立候補してきた。もちろん点数稼ぎのためだろうが、何を考えているのかやはりわからない。
キックオフに集まると出世したい勢の集まりという感じだった。違う部署の人と5・6人でチームになり、仕事が割り振られる。運良く秘書課の小向さんがいるチームだった。みんな簡単に自己紹介をし、役割を決めていく。俺のチームは、イベント後の立食パーティー用にケータリングの手配係だ。こういうのは秘書課がいろんなお店を知っていて詳しいから頼りになる。ホテルで行うので、ホテルのケータリングとその他に目玉となるものを用意する。手分けして目玉になりそうなお店のリサーチをする。以前、評判が良かったお店を確認し似たようなものを探すことにした。見た目の華やかさに加えて、味も良くないといけない。できれば会社のオリジナルとして発注できるところがベストだ。良さそうなお店を見つけては、秘書課の人に意見を求めて少しずつ距離を縮めていく。それぞれ候補となるお店を出し合い、どういったことができるのかと見積内容をまとめて後日集まることになった。