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変えてやる  作者: 三竹
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データ収集

あいつと上司が飲みに行く話が聞こえてきた。今夜19時かららしい。あいつらが向かうタイミングに合わせて退勤し、エレベーターホールで偶然を装う。「お疲れ様です!」とりあえず明るい声であいさつ。「おぅ、ちょうど帰りか。どうだ、仕事は慣れてきたか?」上司からの言葉にすかさず、「いや~まだまだ勉強の毎日です。今度相談に乗ってくださいよ~」と軽く言ってみる。すると「何か悩んでるのか?これから飲みに行くけどお前も来るか?」よしっ!!心の中でガッツポーズ。もちろんこの流れを期待してのセリフだ。「いいんですか?お邪魔じゃなければぜひ!」。あいつがどんな振る舞いをしているのかお手並み拝見だ。

お店は会社から少し離れていて、会社の人間が来なさそうなところだった。メニューを開いて上司に渡したが、すぐにあいつが「1杯目はレモンサワーでいいっすか?あとつまみ適当に頼んで大丈夫っすか?」さすが、上司の好みをすでに把握しているようだ。つまみのチョイスが問題だと思うが、何を頼むんだろう?店員を呼ぶと「だし巻き卵とタコわさ、焼き鳥盛り合わせ、レモンサワー2つ」「あ、3つで!」慌てて同じものを頼んだ。

今日のところは話を合わせてとにかく観察することに徹した。上司の好みを覚え、適度に上司を誉め最後はタクシーを止めてお見送り。これを週3・4日もやるのは体力が必要だ…。会社も行けばいいだけとはいえ寝ていていいわけではないし、お酒に強くならないとやっていけなさそうだ。注文したものや話していた内容など、今日のことは細かくメモに残しておいた。しばらくはあいつにくっついて間違わないように行動していこう。

翌日は上司にお礼を伝えに行き、あいつにもお礼とまた誘ってもらえるように根回しをしておいた。敵は作らないほうがいいから仕事もなるべくならしっかりやりたいところだが、どこかで手を抜いておかないともたない。お酒は飲めなくはないけどそこまで強くないから鍛えないといけないし、何か対策をとっておかないといけないかもしれない。お酒が強くない上司がいたらいいが、みんなそうやって出世していっている人しかいないからお酒が弱いはずがない。無理に飲ませるようなことはこのご時世だからないにしても、雰囲気が悪くなったり、呼ばれなくなると困るから、とりあえず今日から筋トレをして体力づくりとお酒を飲みなれておくようにする。

翌週、あいつが別の上司と飲みに行く話をしていたので、すかさず同行させてもらった。人が変わればあいつの態度も変わる。メニューはすぐさま上司に渡し、注文はすべてお任せ。前回は話をするほうが多かったが、今回は聞き役に徹する感じだった。昔の自慢話には大げさに驚き、相手を気持ちよくさせる相槌を打つ。真剣に話を聞いているふりをすればいいので、この人の時はあまり飲まなくても行けそうだな。

3日後はまた別の上司。ご家族がいるから12時には解散。サクッと飲んで帰る感じで、翌日に響かずに済むが、飲むペースが速いから付いていこうとすると大変。

翌週は、人事部長との飲み会。先輩や上司の話を聞かれたが、あいつも言葉を選んでマイナスにならないように気を使っているようだった。誰かを悪く言ってその人の評価が落とされても気分が悪いし、逆にそういうことを言う自分の評価が落ちても困る。ほかの上司と飲みに行くよりも気を張っていて解散後はドッと疲れた。味方につけられたらいいのかもしれないが、いまいち何を考えているのか掴みどころがない感じだった。

着実に上司のデータが揃ってきた。ここからは少しずつ懐に入っていこう。誰かターゲットを絞るべきなのか。いや、今後上り詰めていくためには味方は一人でも多いほうがいいから可能なら全員とある程度は距離を縮めておこう。

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