斬(ざん)
残酷描写あり。ご注意を
『 おまえ、こどもが言ったことがほんとうだと、おもったな? 』
「山のアヤカシに会ったのは初めてだ」
男がこたえたのに、こどもはあわてて「返事をしちゃなんねえ」ととめる。
「サトリに返事をすンと、いれかわっちまう」
「ほお、そうか。アヤカシとはやはり、あやしい術をつかうのか」
『 おまえ、おれがあやしいジュツをつかうと、おもったな? 』
「それは先におれが口にした。どうした?さあ、おまえが先に、なにか言え」
『 おまえ、・・・・おまえが、先に、なにかおもえ! 』
「なにも思わん。ただアヤカシのくせにこの程度か、と今おもうたから口にした。先に言われてしまえば何も言えまい」
『 なにかおもえ! おまえ、―― なにもおもうておらんな! 』
「ああ、そうさな。なんとも、―― 」
一瞬で低くふみこんだ男が刀をぬいてサトリの首をなぎった。
首は音もなくむこうへとび、からだは血をふくこともなくたおれた。
「・・き、・・・」
きった。 妖を。
こどもはむこうへとんだ首から目をはなせないまま、たちつくす。
めをはなせない首がとつぜん消え、からんと何かが転がった。
侍があゆみより、ひろいあげる。
「鏡か。こりゃ、ジュソのたぐいより、ツクモガミに近いのか。 ―― おい、おれはそういうものにくわしくないから、じいさんが戻ったらきくといい。この鏡をどうしたらいいのか」
侍が子どもにいいながら、土間を掘り、その鏡をそこにうめた。
子どもは、いやそうな顔で、ただうなずくしかない。