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さとられる
サトリは、・・・・サトリ?
―― サトリをみてしまったら・・・
「あ。家の入り口にイワシの頭を刺した枝をつけて追っ払うってやつだ」
『 そりゃ、ちがう 』
むこうに立つ子どもが腹を立てたように一歩ふみだす。
「松の根方に矢を射ってあたった矢じりを」
『 ちがう、ちがう 』
幼いこどもがするように地団駄をふみ、数歩出る。
「餅を五升ついて家の外に置いて」
『 ちがう、ちがう、ちがう 』
からだをふるようにして、こちらとおなじ顔をゆがませ近づいてくる。
みかけはこのおのれなのに、近づいたその気配に、首の裏がさかだつ。
サトリではない妖のはなしを口にだして、目の前の妖のことを考えないようにしていたのに、そこでまた、あいては『サトリ』だったのだと、 ―― 思ってしまった。
すぐそこの、おのれと同じ顔が、にい、っとわらう。
『 おまえ、 おれのことを 《 おそろしいアヤカシ 》だと、おもったな? 』
横にひらいた口がさらに、耳のそばまで、にちゃり、と割れた。
おもいだした。
サトリに返事をすると、
―― おのれとサトリが入れ替わる