サトリ
懐にはいっている干し餅を着物の上からおさえ、塩をもってくればよかったとおもいながら桶が置いてあったそばの鍋に手をのばしたとき、 ―― 小屋の中にいる それ に気づいた。
『 おまえ、塩をもってくればよかったと、おもったな? 』
「・・・・・・」
じいさんが座っていたところに、おのれと同じ顔をした子どもがいた。
『 おまえ、おれがおのれと同じ顔をしていると、おもったな? 』
「 、・・・」
『 おまえ、返事をしたらまずいと、おもったな? 』
これは、じいさんにきいていた山の妖だ。
『 おまえ、おれを山のあやかしだと、おもったな? 』
たしか、サトリ、というやつだ
『 おまえ、おれのことをサトリだと、おもったな? 』
返事をしたら、―― ・・・なんとなるんだっけ?
『 おまえ、・・・おれに返事をしたら、・・・なんとなると、・・おもったな? 』
おかしい。じいさんにきいたはずだ。
『 おまえ、・・・じいさんにきいたはずを、・・・・・おもいだせんのか? 』
たしかにきいた。サトリはたしか・・・・
『 おまえ、・・・おもいだせんのか?サトリじゃ。サトリに返事をすると、どうなる? 』