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積もる雪
ひゅう、とぬけていた風が、いつのまにかなくなった。
さっきまで隙間を通った風が通らなくなったのは、外の雪が小屋の壁を覆うほど降っているからだ。
ためしにのぞきにいった板と板の隙間はやはり、白いものがふさいでいる。
小屋の中には猟師たちがもちよった炭や薪、藁束や、むしろから椀と斧まである。
里近くに住む猟師たちは二人か三人で狩りをするので、ここで獲物をさばいたり、わけあったりする。
雪の季節は、こうして急な吹雪をやりすごす場所になる。
じいさんの罠には今日はなにもかかっていなかったので、ほんとうなら食べるものはないのだが、こどもは懐に干した餅をいれてきていた。
腹がへったのを思い出し、小屋のすみにある桶と柄杓を手にして、じいさんが出て行った戸をあける。
こちらは風向きが違うので雪は戸板にへばりついていない。
だが、すこし高台につくってある小屋の敷居よりも、積もった雪が高くなっている。
柄杓で積もった雪をかきとり、桶にいれて戸をしっかりと閉じた。