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おとなになったヒコイチ
そこから一年ほどあと、病で倒れた年寄が枕元にヒコイチを呼んでおのれのことを話すまで、その刀のことは黙っていた。
話し終えた年寄は、さっぱりとしたような顔で、食えるかどうかもわからないのに、「ゆがいただけの、餅がくいてえなあ」とすこしわらった。
じいさんが、なにか食いたいといったのはそれが最後で、ヒコイチがじいさんにつくった飯も、それが最後になった。
おとなになったヒコイチは、山をおり、街を流し歩き、物を売る商売をしている。
ひとりきりの質素な家にかえり、ときどき、『 ゆがいただけの餅 』を食べる。
食べていると勝手に涙がでてくるので、決まってひとりで食べるのだが、むかいには、いつも、もう一膳置くことにしている。
こうしておけば、
―― もしかして、またそのうちに、
『山の神様が、おもしろいこと』を
―― してくれるかもしれない。と、おもっている。
最後までお付き合いくださった方、目をとめてくださった方、ありがとうございます。
ヒコイチの話はほかもございます。お時間あるときにでも、のぞいてやってくださいませ




