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異世界飯処いつき  作者: 倉田深夜
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プロローグ1

プロローグ1


  俺の名前は佐藤樹(さとういつき)、転移者だ。

 しがないサラリーマンだった俺は、ある日通勤中の事故に巻き込まれて、気がつけば今いる世界に放り出されていた。

 この世界の住人は、自分たちの住む星のことをオドリーヴァと呼ぶ。古い言葉で『祭り』という意味らしい。何故、祭りなのかはよく分からんが、オドリーヴァは今まで暮らしてきた元の世界、つまり地球ととても似ている。

 人間の容姿はほぼ同じだ。まあ、こちらは亜人のエルフやホビット、ドワーフなどもいるので、地球より更に多様だが。

 文化もとても似通っている部分が多い。しかし文明の発達度合いはいわゆる中世レベル。ネットなんて便利なものは存在せず、電気やガスも無いし、人は移動に徒歩か馬を使う。しかしその代わりに魔術や魔法が発達している。

 よくゲームのRPGなどで出てくる剣と魔法の世界と言うとイメージしやすいだろう。

 そう、このオドリーヴァもご多分にもれずその剣と魔法の世界だ。

 街の外に出れば、ゲームや映画でしか見た事のない化け物がわりと当たり前に目に入る。

 転移したばかりの頃には、どこともよく分からない山の中にいた俺は、ゴブリンやスライムとか雑魚っぽいモンスターに何度も殺されかけながら山林を逃げ回ったものだ。

 逃げ惑う俺を新種のモンスターと見間違えて斬りかかってきたギルドハンターもいた。

 こういう場合、異世界に来た主人公は何かしらのチート能力を持っているのが定番だが、異常に魔力を持っているとか、ステータスが最初からカンストしてるとかそう言ったことはいったことは一切俺には無かった。

 色々試してみたが結局無理だったので、今もモンスターに出くわしても基本的にとっとと逃げることにしている。。

 では、そんな特に目立つ特徴のない俺が、この世界で何をやって生計を立てているかと言うと、若い娘がオーナーをしている飯屋で雇われ店長をしている。

 命からがら魔物の森でゴブリンから逃げているところを助けられたのがオーナーとの最初の出会いだ。

 この娘、名前はキラウエルという。苗字はミドルネームのそのまたミドルネームみたいなものがつらつらと連なっており正確には知らない。

 断崖絶壁の貧乳で気が強くガサツで生意気なティーンエイジャーだ。

 顔と声がいいのと、魔法で大体のことが解決できること以外には、一緒にいてあまりメリットは無い。

 とにかくこの娘、齢14にして魔道士としてやたらめったら強いのだ。

 初めて出会った日には、俺を狙う十数体のゴブリンを指から吹き出す炎の魔法で一掃してくれた。俺もこうなりたかった。勇者は君だキラウエル。

 そして夜には森の開けた場所でキャンプをし、夕食までご馳走になったのだが、しかし、その料理の不味いこと不味いこと。

 キャンプの設営地を探す道中にキラウエルが捕まえた野うさぎをキラウエルが皮を剥ぎ、内蔵を取りだして無骨な鉄のフライパンで丸焼きにしてくれたのだが、ただただ肉をなんの味付けも下処理もせずに焼いただけの焼肉は、現代の豊かな食文化に親しみ育った俺には耐え難い苦痛だった。とてつもなく臭いのだ。

 俺は助けられた恩もあり味についてとやかく言うような野暮なことはしなかったが、キラウエルにお礼として手料理を食べさせる約束をした。

 俺の唯一の趣味は料理なのだ。

 しがないリーマンの俺が唯一楽しみにしていたことが、毎晩の自炊だ。

 だから、この世界でも最高の家庭料理を食べたい。

 そしてキラウエルという命の恩人にも、本当に美味しい食事を楽しんでほしかったのだ。

 俺とキラウエルが近くの街の宿にたどり着い時、俺は宿の厨房を借りて簡単な野うさぎの照り焼きをキラウエルに振舞った。

 特筆すべき点は特にない普通の照り焼きだ。うさぎは鶏肉と味が近いので、チキンの照り焼きをイメージして作ったが、これがキラウエルにどハマりした。日本の家庭料理風に味付けした俺の照り焼きがとても新鮮だったらしい。

 キラウエルは俺に言った。

 「あなた、私と料理店をやらない?」

 

 

 

 

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