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0007.少女の見た夢

 ベッドの上には、使い古された寝巻が置かれていた。これも多分、サーシャの使っていた物だろう。

 寝巻に着替えると、エーデルはいそいそとベッドに潜り込んだ。監獄の薄汚い藁床からすれば、天国のような寝心地だ。

 余程の疲労が溜まっていたらしく、目を閉じたエーデルは、時を待たずにすうすうと寝息を立て始めた。


 その晩、夢を見た。

 幼い頃の自分がいて、隣には一人のメイド。ただ、どうしてもそのメイドの顔が見えなかった。こちらを向いて笑っているのに、顔の辺りにだけ、もやがかかっているかのようだった。

 二人は楽しそうに料理をしている。作っているのはスープだった。

 細かく切った野菜を鍋に放り込み、じっくりと煮込んでいく。

「お上手ですよ、お嬢様」

 メイドに褒められて、幼い自分は満開の笑顔になる。

 野菜が煮崩れたら、次は味付けだ。メイドに言われた通り、少しぎこちない手つきで調味料を入れていく。

 塩を入れて、胡椒を入れて――

「――最後に、タイムをほんの少々。これで、味がぐっと良くなります」

「たったこれだけでいいの?」

「ええ、これだけでいいんです。これだけで、嘘みたいに味が変わるんですよ」

 とても暖かく、幸せな光景だった。もう二度と戻れない、あの頃の記憶。

 永遠に失ってしまった、大切な人――


 目覚めた時、エーデルは自分の目に涙が溜まっているのに気付いた。

「……初めての場所で、少し興奮していたのかしら」

 涙を拭いながら、体を起こす。

 ふと、何か夢を見た気がした。どんな夢だったかは思い出せない。でも、とても良い夢だった事だけは、何となく覚えていた。

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