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XXXX.三百年後、とある村で

 それから三百年余りの後――アストニア王国の外れ、とある小さな村。

 一人の吟遊詩人が道端に座り込み、リュートの弦を調律していた。

 そこに、子供達が駆け寄ってくる。

「ねえおじさん、またあの歌、聴かせてよ!」

「私も私も!」

「おじさん、俺も聴きたい!」

 吟遊詩人の男はリュートを持ち直すと、

「……俺はまだ、おじさんじゃねぇって言ってんだろが。お兄さんと呼べ、お兄さんと」

 そう、乱暴な調子で子供達に返した。

「分かったよ、おじさん!」

「早くしてってば!」

「てめぇら……」

 男は「こほん」と咳払いを一つすると、何度と無く読み上げてきた口上を語る。

「これは、今を遡る事300年。貴族に虐げられた人々が絶望する中、それでも希望を捨てず、自由に生きた一人の少女の物語――」

 リュートを鳴らし、男は歌い出す。

 それは、名も無き少女の歌。

 人を愛し、国を愛し、自由を愛し、平民として誇り高く生きた、一人の少女の歌。

 その歌の名は――『高貴(エーデル)』。

 何処の誰が作ったのかも分からない――しかし旅の吟遊詩人達の間でこの数百年、歌い継がれてきたその歌は、今も人々の心に癒しと希望をもたらしている。

 だが、現代の歴史学者達の間では、この歌は当時、貴族の圧政に苦しむ平民達が創作したものという見方が一般的であり、ここに語られる少女が実在したと主張する者は、一人もいない――

ここまでお読み頂いた皆様、本当にありがとうございます。


物語はここで一区切りとなりますが、ただいま第二章を構想・執筆中です。

お付き合い頂ける方は、今後ともよろしくお願い致します。


第二章の連載開始は2022年9月を予定しております。

開始次第、あらすじ・活動報告にてお知らせさせて頂きます。


評価・感想など励みになりますので、よろしければお願い致します。


最後にもう一度、お読み頂いた全ての方に深い感謝を。

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