役立たずだからとパーティーから追放されたけどちゃんと役に立ってることを説明したら取り消してくれた
「トッドは役立たずだから追放するよ! 戦闘中ピカピカ光ってるだけで何もしてないじゃん!」
「いや、それはみんなに支援魔法かけてるんだけど」
「あれ? そうなの? じゃあ取り消す!」
僕が所属する冒険者パーティー【珊瑚の船】
そのメンバーが暮らすパーティーハウスの朝食の席上で。
リーダーのエルシャが僕に追放を宣告して、すぐに取り消した。
「トッド役に立ってた!」
「あれ支援魔法だったのか」
「いつもピカピカしててきれい」
「そういえば光ってるとき強くなってるような気がしますね」
「楽でいいな!」
「助かる」
パーティーメンバーたちが口々に話す。
どうやら分かってくれたようだ。
「でもやっぱり追放だ。トッドはクエストの報酬をいつも自分だけ受け取ってる。ずるい」
「いや、僕が代表して受け取ってるだけで、あとでちゃんとみんなに配ってるでしょ」
「あれ? そうだっけ。なら追放は取り消す」
エルシャに続いて女重騎士のカイラが、僕を追放してまたすぐ取り消した。
「私の分は全部トッドに預かってもらってるよ!」
「私も。欲しいものは買ってもらう」
「お小遣いもらってるけど使い方が分からない」
「あなたたち、買い物くらい自分で出来るようになりなさいな。私なんか昨日一人で牛乳買ってこれましたよ!」
「すごいな! 私は見ててもらわないと無理だ」
「店員さん怖い」
分かってくれたようだ。
「トッドはダンジョンで私に苦い薬を飲ませた。ひどい。追放してやる」
「それ魔力回復薬だから。今度甘くしたやつを開発したからもう苦くないよ」
「じゃあ取り消す。甘いのがいい」
今度は女魔法使いのパウダが僕を追放してすぐ取り消した。
「傷薬も沁みないやつになったよね!」
「鎧の当たって痛いとこに当て布してもらった」
「私こっそり毒消しなめてる。甘い」
「古代書の難しいところにふりがなふってもらいましたよ」
「刀の鞘にかわいいストラップつけてもらったぞ!」
「枕がいいやつになった。ふかふかでむにゅむにゅ」
分かってくれたようだ。
「トッドさんは昨日の晩ごはんのカレーにタマネギ入れないでって言ったのに入れました。追放します」
「ちゃんとアメ色になるまで炒めたから食べられたでしょ」
「たしかに美味しかったですね。取り消します」
女神官のシェイミーが僕を追放してすぐ取り消した。
「一時間くらい炒めてたね!」
「お肉も半日煮込んでトロトロだったな」
「トッドのご飯はどれもおいしい」
「私は麻婆豆腐が好きです。ネギが入ってても食べられる」
「今食ってるベーコンエッグもうまいぞ!」
「おやつも絶品」
分かってくれたようだ。
「トッドはエッチだから追放だ! この間温泉で私たちの裸を見ただろ!」
「いやそっちが間違えて男湯に入ってきたんでしょ」
「そうだった! 取り消すぞ!」
女剣豪のヒラリが僕を追放してすぐ取り消した。
「あれは恥ずかしかったね!」
「ヒラリが自信満々で女湯はこっちだって言ったんだぞ」
「自信はあったんだがな!」
「自信はあっても根拠はない。それがヒラリ」
「貸切で良かったです」
「トッド以外の男客がいたら皆殺しにしていた」
分かってくれたようだ。
「トッドは今朝起きた時なでてくれなかった。追放」
「さっき起きたばかりでしょーが。ほら、なでてやるから」
「ん。取り消す」
女竜人のディアマンティナが僕を追放してすぐ取り消した。
「トッドのなでなでは気持ちいいよね!」
「トッドのなでなでは最高だな」
「トッドのなでなでは世界の至宝」
「トッドさんのなでなでは唯一無二です」
「トッドのなでなではエッチだ!」
「トッドのなでなでを永遠に享受する」
分かってくれたようだ。
これでメンバー全員から追放されて、取り消してもらった事になる。
「さてみんな、まずいことになったよ!」
食後のお茶を飲み終えて、エルシャが切り出した。
「トッドは有能なのに追放しちゃった! こういうことをやると後でざまぁされるんだよ! 取り消してももう遅いんだよ!」
「え、私らざまぁされるの? どうしよう」
「なにも思いつかない」
「打つ手がありません」
「私たちもうダメだな!」
「絶望」
「いやいやざまぁとかしないから。追放も実行されてないし遅くないから。大丈夫だから」
「それで思ったんだけど、死ぬ前にみんなでトッドにチューしようよ!」
「なるほど、せめてチューしてから死にたいな」
「いい考え」
「まだ出来ることがありました」
「チューなら自信があるぞ!」
「残された希望」
みんな聞いちゃいない。
しかたないなあ。
「お話を聞いてくれた子にはプリンをあげまーす」
「やったー、プリン!」
「私はいい子だからプリンがもらえる」
「どんなお話でも聞いてみせる」
「フルーツとクリームも乗せてもらいます」
「こないだは10数えるくらいじっとしていられたからな! 今なら3年くらい座っていられるはず。自信ある」
「プリンは幸福」
みんなが僕の前に行儀よく並んで座った。
「みんな僕を追放したと思ってるけど、実際はしてません。追放するときはちゃんとしないとダメです。追放勧告書に必要事項を記入して冒険者ギルドに提出が必要です」
「難しいよ! これは追放とか無理だね!」
「なに一つわからない」
「難解」
「公的手続きは全部トッドさんにお任せしてますから、追放もトッドさんに頼まないとだめだったですね」
「私は自分の名前が書けるぞ! えっへん!」
「人生は困難に満ちている」
追放手続きの説明をしたら、みんなが目を回した。
「なので僕は追放されてません。だからざまぁもありません」
「ざまぁが無いならひと安心だね!」
「助かった」
「生きていることを噛みしめる」
「これからの人生は悔いなくすごしましょう」
「座ってるのが辛くなってきたぞ! 3年は経ったはず」
「明けない夜は無かった」
分かってくれたようだ。
「みんなちゃんとお話を聞けてえらいね。約束のプリンだよー」
みんなにプリンを配った。
フルーツとクリームも乗せてプリンアラモードにしてやる。
「おいしー! おいしー!」
「うまうま」
「あまあま」
「プリンとフルーツとクリームが完全に調和しています」
「3年座ってた甲斐があったな!」
「真剣にプリンと向き合う」
僕のパーティーメンバーはみんなバカだけど、みんな素直でいい子たちだ。
手はかかるがそれが苦にはならない。
僕がいないと生活できなさそうなのが問題だけど、永久に世話する覚悟はできてる。
そのためにも不死身の体を手に入れないとね。
「トッド! ざまぁは回避できたけどチューはしたいな!」
「死ぬまでにはチューをしたい」
「チューをする。そして、チューをする」
「チューしましょう、永遠にチューしましょう」
「チューは初めてだけど絶対うまく出来るぞ! 自信ある」
「チューチューチュー」
「そ、そういうのは僕にそういう覚悟が決まったらにしてもらえるかな」
「分かった! トッドが覚悟を決めるまで待つね!」
「覚悟を決めるまで死ぬことはない」
「楽しみに待つ」
「覚悟を決めたら無限にチューしましょうね!」
「トッドは必ず覚悟を決める! 自信ある!」
「信頼」
覚悟が決まったら、とヘタレた僕にみんなは、覚悟を決めるまで待つ、と返してきた。
そうだね。
覚悟が『決まる』んじゃない。
覚悟を『決める』んだ。僕が。
何もかも責任を取る覚悟を。
うん。覚悟は決まった。
決めた。
みんなにチューしよう。
でもまあ、それはまた別の話で。
役立たずだからとパーティーから追放されたけどちゃんと役に立ってることを説明したら取り消してくれた、という出来事はこんな顛末だったのさ。




