本音の隠し場所 五
オモイカネは、物心ついたばかりの自分に繰り返し教えもし諭しもした。
『血』におごってはならぬと。爪は隠すべしと。
できるだけ守ってきたつもりだった。年頃になるにつれ同輩の悪ふざけは度を越すようになり、しまいには母親まで馬鹿にされるようになった。
いくらオモイカネが頭を下げて回ろうが、子供同士の喧嘩ではすまなくなりつつあった。それやこれやにうんざりし、身を持て余していたのだ。
そう考えると、オオクニヌシの件はむしろ渡りに船だった。
「これで満足だろ? じゃあ、お前の話も聞かせろよ」
「待って。翔翼は、あなたになにも渡さなかったの? だって、皇帝なんでしょ? こう、特別な道具とか……」
「いいや。少なくともオモイカネからはなんにも聞かねえよ」
つくべきときには平然と嘘をつくワカヒコであった。
「そう。じゃ、あたしも言うわ。オオクニヌシ様のことだけどね、クニタマ様じゃないけど、たしかに化け物って言ってもおかしくない。オオクニヌシ様は、人前にいない時は秘密の部屋にいる。その部屋では本当の姿でいるけど、正体はね……木よ」
「キ!?」
思わず木霊を返してしまった。
「そうよ。宮殿にとても大きなお部屋を構えて、そこに生えているわ」
「おいおい、アヂスキやシモテルは木から生まれたってのか?」
「さあ」
サグメは肩をすくめた。
「じゃあ、どうしてお前は死なねんだよ」
「許可を取って見たわけじゃない。覗いたの。好奇心で。もっとも、暗くて良くわからなかったわ」
「な、なんと大それた……」
ぽろっと箸を落とし、クニタマは絶句した。