表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/53

本音の隠し場所 九

「どうしたの?」

「今晩は、あの小屋に泊まろう」

「見たところは廃屋ですが、先を急いだ方が良くはございませんか?」

「いいや。あの小屋からはなにかを感じる」


 そう言いきると、クニタマとサグメは顔を合わせて肩をすくめた。


 二人を置いて、まっさきに出入り口を……扉はなく、ただ穴が空いているだけの出入り口を……くぐる。


 空だった。当たり前なのにもかかわらず、空のはずがないという気持ちが強く湧いてくる。


「どうしちゃったの?」


 サグメが、いつの間にかすぐそばに立っていた。


「なんでもねえよ」


 わざと乱暴に荷物を置いて、クニタマと入れ替わるように外にでる。


 道をへだてて、向かいにある藪の際に一羽の雉がいた。じっとこちらを見ている。


 いつもなら捕まえて食べようとするはずなのに、そんな考えは少しもでてこなかった。


 それどころか会いたくてたまらなかっただれかにようやく会えたような、切ないうれしさが込みあげてくる。


 気がつくと、両手の平が胸の前で向かい合っていた。なにかを包むように持つ格好になっている。


「ワカヒコ?」


 サグメが、戸口から声をかけた。雉はあわててどこかに飛びさり、はっと我に返る。


「ワカヒコ、さっきからおかしいわよ」

「なんでもねえよ」


 芸のない答えを繰り返して、雉のいた藪を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ