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本音の隠し場所 八

 数週間後。


 クニタマはおろかサグメも褒めずにはいられなかった速さで知識を積みあげ、準備は終わった。


 いよいよ出発だ。クニタマ、サグメと三人そろって旅姿になり中庭に集まった。


 馬はない……だれか一人でも逃げるときに使われかねないという理由で、タカミムスヒがわざわざ使者をよこして断ってきた。


 使者に対しては鼻を鳴らしただけで追い返した。無理に乗っていくつもりもなかった。


 それにしても、送別会など開けるはずもないし見送りもいない。オモイカネにさえ人を介して出発を伝えただけだ。


 ただ、サグメとクニタマのおかげで道中は退屈しないで済みそうだ。


 それとは別に、アヂスキとは会っておきたかった。結局、あの日から一度も会わずじまいで少し物足りない。


 性格からいって会いたくなったら万難を排して会うのが流儀なのに、相手が迷惑するかも知れないなどという実に『らしくない』気持ちになってしまった。


「ぼつぼつ行くか」


 後ろ髪を引かれそうになる気持ちを振り払って、二人を促した。


「そうね」

「参りますか」


 二人にうなずき返してから、改めて屋敷を見上げた。鳩が軒先に止まっていて、のんびり鳴いている。


 三人で門をくぐり、ひたすらてくてく歩く。


 旅といったらまず歩くことで、時間を消化するのが一苦労だ。


 そんな道中の楽しみは食事なわけで、サグメの用意した携帯食……干し飯や干し果物が主役だった。機会があれば獣や魚を取って足しにもした。


 道のりもそろそろ半ばにさしかかった時。


 小高い丘が連なる細い道の脇に、ぼろぼろに朽ちた小屋があった。


 一目見ただけで、泣けてきそうなほど懐かしい気持ちが込みあげてきた。なぜだろう。

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