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第82話 陰謀の中に蠢くもの

前話のあらすじ!!


・ルナすっげ~~!

・剣斗の奇跡

・春樹登場!

 王城周辺には騎士団の姿は少ない。王都内に現れたモンスターを討伐するため出払っているからだ。



 そんな中―――



「ここに来るのも久しぶりだね」



 そう呟いたのは銀色に輝く美しい髪に美少年と言い表すに相応しい容姿の少年。その少年はゆっくりと王城に近づき、中に入る。



 中は普段とは比べものにならないほど物静かだった。



 少年はゆっくりと、ゆっくりと目的の場所に向かう。右に、左にと進んだ先にある王城一階のとある部屋。その部屋に入り、少年は壁を探る。



 すると、その壁が消えた。



 そしてその先に現れたのは地下へと続く階段だ。



「へ~、()()()が言っていた通りだ。流石の僕もこれは()()()()()()()



 少年は階段を降り、地下へと向かう。




 数百はあるであろう階段を下り、着いた先。その場所は現アイゼンブル王家の者たちですら知らない部屋。



 その部屋は幻想的な雰囲気を醸し出していた。石畳の床の両端には水路が引かれており、壁からは木の蔓のようなものが生え、柱に巻き付いている。灯りには電球を使っているのではなく光を発する球体が部屋中を漂っており、それが灯り代わりになっている。



 その部屋の奥。そこには円錐型の祭壇のようなものがあった。祭壇の上には光り輝く大きな球体。その球体の周りを無数の数字や文字の羅列が並び、浮かびながら回っている。



「これは…………【0の魔法】?」



 それを見た少年は信じられないとばかりに呟く。



「凄いな……まさかこれに辿()()()()()のか?…………これを造ったのは【時空の勇者】かな?……なるほど、()()なら納得だ」



 少年はこれを造ったであろうかつての勇者に心からの称賛の言葉を送る。



「だけど、まだ()()()だ。これなら僕にも解除できる」



 手を伸ばし、黒いオーラを発動。その魔法を侵食する。



 目的の物。それは球体の中にある「()」だ。



「まぁ、少し時間がかかるだろうけど……その時間は()()が作ってくれるだろう」



 その少年―――アガリアレプトは不気味な笑みを浮かべていた。













「あ、朝比奈……?」



 ポツリと呟いたのは戦いを後ろの方で見ていた飯嶋大河。その呟きをきっかけに他のクラスメイト達も「本当だ……朝比奈だ」「死んだんじゃなかったのか?」「佐々木もいるぞ」「ど、どうなってるの?」と話し出す。



「ふ~~、死ぬかと思ったぜ」



「朝比奈くん、佐々木さん。助かったわ」



 ため息をつくように言葉を発したのは大介で、安堵の表情で呟いたのは望月だ。



 大介はともかく、望月も俺たちのことを知っていたのか?



 大介や西山が話したのかな?



 まぁ、とにかくみんなを攻撃していたモンスターは《火魔法》の最上位魔法である《火炎龍》で倒した。これで大丈夫かな。



「ア、アサヒナ・ハルキ、ササキ・ユイカ。……生きて、いたのか?」



「ライオットさん!大丈夫ですか!?」



 腰の部分から血を流しているライオットさんを見て唯香が即座に《回復魔法》を使用し、ライオットさんの傷を治す。



 もうライオットさんは大丈夫だな。そう思い、辺りを見回すと俺たちのことを凝視している人物が居た。

 白い髪、同じく白い髭を生やし、鋭い目つきに紅い瞳の六十代くらいの男性。



 あれが……もしかして……



「ヘルマン・フォン・オールフェイ……」



「アサヒナ・ハルキか……。なぜ、生きている」



 お互いにそうボソッと呟く。



 その時、広間の扉が開き、騎士団たちが中に入ってきた。



「団長!大丈夫ですか!?」



「カルラ……?なぜここに……」



「副団長からの命令で加勢に来ました。城の中にオールフェイ公爵側についた騎士が何人かいたため到着が遅れましたが、全員無力化しました。後はここだけです」



 騎士からの報告を聞き、ヘルマンが顔をしかめる。そして、恐らくヘルマン側についているであろう騎士たちにも動揺が見えた。



 優位はこちら側に傾いている。



 そう感じたから俺はあえて発言した。



「ヘルマン・フォン・オールフェイ公爵。貴方の企みもここまでですよ。王都内に現れた大量のモンスターも王都周辺に設置した召喚魔法陣もそのほとんどを無力化しました。私兵を動かそうとしているガルフ・フォン・オールフェイのところにはSランク冒険者のティアナさんが向かった。貴方の計画は完全に潰れたんです」



「王都にモンスター?召喚魔法陣?……ヘルマン、そんなことまでして王位を……」



 ローランドがそうヘルマンに問いかけた。やっぱり国王は知らなかったんだな。



「な、なんだよ、それ……。おい!どういうことか説明しろよ!朝比奈!」



「そ、そうだ!なんでお前生きてるんだよ!?その装備はなんなんだよ!説明しろ!」



 事情を知らないクラスメイト―――飯嶋大河と工藤光輝(くどうこうき)からそんな声が叫ばれた。それをきっかけにその他のクラスメイト達からも説明を求められる。



 これ、説明しないと駄目なのか……。



「えっと……。まず、嘆きの洞窟に現れた黒竜は倒した。だから俺は死んでないし、この装備もその黒竜から作った物だ」



「た、倒した……?」



 飯嶋が信じられないというような呟きを発する。だけど、それにいちいち反応していたら埒が明かないので無視して続きを話す。



「俺はとあるスキルで皆の状態を鑑定したんだけど、皆に呪いがかかっていることが分かった。だから、その原因、理由を突き止めるために今まで冒険者として活動していたんだ」



「の、呪い?俺たちに?……う、嘘だ!でたらめなこと言うんじゃねぇよ!」



「嘘なんかじゃない……。俺たちを召喚する時の、教室に現れたあの魔法陣。あれに俺たちに呪いをかける魔法も混じっていたんだ。そして、その計画はこの国、四大貴族や国王も関わっている。……目的は強力な勇者の力をコントロールすること」



 そう言いながら国王であるローランド・フォン・アイゼンブルを見ると明らかに狼狽していた。



「呪い……?計画……?どういうことですか!?お父様!」



 俺の言葉に一番強く反応したのはこの国の王女であるフレリーカ・フォン・アイゼンブルだ。



 彼女は呪いの件について教えられてなかったらしい。



「どうもこうも彼の言った通りですよ、フレリーカ王女殿下。我々は勇者たちをコントロールするため、呪いをかけました」



「オールフェイ公爵、そんな……。勇者様たちに呪いをかけるなんて……」



「し、仕方がなかったのだ……」



「お父様……」



「勇者たちは魔王に対抗できる程の力を持つ。そう……あれほどまで恐ろしく、強大な魔王の力に勇者は匹敵するのだ。それが我らに向けられれば五年前の悲劇をまた繰り返すことになるかもしれん。もう、あのような想いはしたくない。二度とあのような惨劇を生み出してはならんのだ……」



 普段の凛々しき姿とは打って変わって弱々しい態度で綴られた本音。それを聞いてもなお、フレリーカは納得出来ない。出来るはずがない。



 なんたって、勇者をこの世界に呼び出したのはフレリーカ自身なのだから……。



「そうだとしても、勇者様に呪いをかけるなんて……。そんなことしていいはずがありません!かつて、アイゼンブル王家は世界の危機に勇者様と協力をして立ち向かいました。

 200年前、勇者様を召喚し、共に立ち向かった女王、ライラ・フォン・アイゼンブルは『共に立ち向かい、共に戦い、共に歩む。それが勇者様を支える王家の役目だ』と……そう言ったと伝えられています。その誇りをお忘れですか!!」



「それは昔の話だ!……今は違う。フレリーカもあの惨劇を知っておろう。アリーゼもエルディアも五年前のあの戦いで死んでしまった」



「―――ッ!!」



 ローランドの妻、フレリーカの母で王国の女王、アリーゼ・フォン・アイゼンブルとその息子でフレリーカの兄、アイゼンブル王国第一王子エルディア・フォン・アイゼンブルは五年前の魔王復活の際の戦いにて亡くなった。



 アリーゼは女王として民を守るために……。



 そして、エルディアはSランク冒険者の一人として戦い、その命を散らした。



 それはフレリーカにとっても辛い思い出。悲しい現実。



 でも……。



「確かに……お母様とお兄様が亡くなられたのは、とても悲しく、忘れたくても決して忘れることの出来ない、最悪の出来事です。……ですがッ!!」



 フレリーカは普段の大人しく、優しい姿からは想像できない必死の表情で―――しかし、その瞳には涙を浮かべながら想いを綴る。



「私はお母様と約束をしたのです!王家の者として、王女として、勇者様と共に立ち向かうと!圧倒的な絶望に挫けることなく挑み、民を、世界を救うと!

 お母様が亡くなるその間際まで!私は誓い、約束をしたのです!!」



 それは叫びにも似た声色で語られた想い。その想いを聞き、ローランドは俯く。



 沈黙が辺りを支配する。



 そんな中、フレリーカに話しかけたのはヘルマンだ。



「フレリーカ王女殿下。あなたも陛下に似て、優しい心の持ち主だ。だが、そんな生易しい言葉だけでは世界を救うことなど出来ないのもまた事実」



「オールフェイ公爵……。しかし!」



「私はね、昔から王家が嫌いだったのですよ。大した力もないのにも関わらず、理想論ばかりを掲げる。民のことを第一に考え、それ以外のことは二の次。そんな頭の悪い王家の事がね……」



「そ、そんな……。私は、ただ……」



「だから、エクイラーの呪いとは別の呪いを俺たちにかけたんですか?」



 フレリーカ王女との会話に入ってきた俺を鋭く見つめてくるヘルマン。国王、ローランドは困惑の表情を浮かべていた。だからこそ、推理は当たっていると俺は確信する。



「呪いの力を持つエクイラー公爵の呪いは《呪術・降伏の印》。対して、俺たちにかけられている呪いは《呪怨・王家への服従》。かけようとしていた呪いと実際にかかっている呪いが違う。

 で、俺たちに呪いをかけるという提案をしたのはオールフェイ公爵。つまり、王国の計画とは別の計画をオールフェイ公爵は企てていた。そして、その背後に居るのは……魔王六魔族」



 その言葉を呟いた瞬間、王国側の人達の体が強張った。それだけ、六魔族の名が恐ろしいものなんだろう。



「アサヒナ・ハルキ。貴様、どうやってそのことを知った?」



「さぁ?どうやってでしょうね」



 ユニークスキル《妄想再現》は王国側には知られていない俺の切り札だ。教えるわけがない。



 ヘルマンの忌々しい呟きを受け流し、俺は続きを話す。



「そしてここ最近、各地で起こっているモンスターの大量発生。それは強力なモンスターを手に入れるためで、手に入れたモンスターを使い、王都に攻め込む計画だった。その証拠に王都周辺や王都内にも大量の召喚魔法陣が設置されていたよ」



「じゃ、じゃあ!今、ここには大量のモンスターが迫ってきているっていうことかよ!」



「いや、それは大丈夫。さっきも言ったけど、王都周辺の召喚魔法陣はほとんど潰したし、発動した魔法陣の対処は信頼できる人たちがやってくれている。王都内に現れたモンスターは騎士団や冒険者たちが対処しているし、俺の仲間もモンスターを討伐してくれているから、全滅するのは時間の問題だと思う」



 俺の言葉で一安心といった感じでため息をついたのは大介や望月たち事情を知っていた組。他の人達はまだ安心できないのか辺りを見回している。



 それにつられるように辺りを見ていた唯香がポツリと呟いた。



「あれ?楓ちゃんは?」



 その呟きで俺も気が付く。そう言えば、西山も、剣斗もいない。



「西山は……原崎に連れていかれちまった」



「なっ!?」



「ッ!?」



 大介の言葉で俺と唯香が絶句する。



 くっそ!原崎はヘルマンと手を組んでいた。これが狙いか。



「剣斗は?」



「分からねぇ。けど、恐らく西山を助けに行ったんだと思う」



 剣斗のステータスは勇者の中でも最低。



 対して原崎は勇者の中でも高いステータスを有している。普通に戦えば剣斗に勝ち目はない。



 早く決着を着けて剣斗と西山を助けに行かないと……。



 そう思った、その時、



「《呪怨》!」



 突如としてヘルマンが呪いの言葉を発する。それを聞き、大介たち事情を話している以外の者が怯えを見せるが、その後、何も起こらないため困惑する。



「…………なるほど。どういう手を使ったのかは分からないが、どうやら呪いを解除したようだな」



「ええ。ですから、俺たちの誰も操ることは出来ませんよ。最初に言った通り、オールフェイ公爵、あなたの計画は潰えたんです」



 そんな俺の言葉にオールフェイ公爵は今までの余裕を崩す―――ことなく、



「ふっ、はっははは――――」



 笑った。



「――――……確かに、貴様はよくやった。だが、策というのは二重、三重にも張り巡らせておくというものだぞ。アサヒナ・ハルキよ」



 そう言いながらヘルマンは近くにいた護衛の人から杖を受け取る。その杖は成人男性の背丈はある巨大な杖。巻かれている布を取ると、先端には歪な形の青白く輝く水晶が現れる。



 オールフェイ公爵家の屋敷で見た杖だ。



「私にはまだ、これがある」



 そして、懐から赤い水晶を取り出し、勝ち誇った顔で杖を掲げる。



 しかし、



 ―――何も起こらない



「な、何故だ!?何故、何も起こらない!」



 あっぶね~。やっぱり、あの杖は危険な物だったんだな。



「王国の計画を暴くために俺たちは冒険者として活動していた。当然、怪しい立場にいる四大貴族の屋敷も調べました。オールフェイ公爵家の屋敷に行ったときにその杖を目撃したので、杖の能力を封印したんですよ」



「なんだと……ッ!!」



 ここに来てヘルマンに焦りが見え出した。



「さっきも言ったけど、ヘルマン・フォン・オールフェイ。貴方の計画は潰えた」



 ようやく、この陰謀劇に終わりが見えてきた。




 かに思えた、その時、




 ある人物が動いた。



 その人物は今まで誰も警戒も注目もしていなかった人物。



「ここまでのようですね」



 ちょび髭を生やした男がそう言いながらヘルマンに近づき、懐から取り出したナイフで、




 ―――ヘルマンの心臓を刺した




 飛び散る鮮血。そして、悲鳴が上がる。



「こ、コーリック・フォン・ルーズウェル……な、何をしている……」



「いやいや。先ほども申した通り、ヘルマン・フォン・オールフェイ公爵。貴方の役割はここまでというとこですよ」



 コーリックのナイフでの攻撃はかなりの威力があったのか完全に身体を貫通しており、もう、助からないということが分かる。



 傷口からドクドクドクと大量の血が溢れ、時間経過と共にヘルマンが弱っていっているのを感じる。



 それほどまでに生々しい光景。



 それを行ったコーリックはヘルマンの手に握られていた、彼から流れている血のような真っ赤な水晶を奪い取る。



「ど、どう、いう……こと、だ。貴様も……わ、私と同じ、お、おうこくを……おう、けを……」



「いやはや、さぞ、滑稽でしたよ。自分の思い通りに全てが動くと思っているような生粋の愚か者。そんな自分が本当の意味で利用されているとも知らずに……。そのような()()の様を見ているのがね」



 皮肉にも。



 皮肉にも、それはヘルマンが原崎に思っていたことと同じことだった。



「オールフェイ家が王家に?そのような淡い願いなど、叶うはずもないのに」



 そう、コーリックが言い終わった直後。



 ヘルマンの口から血が溢れ出て、瞳から輝きが消える。



 そして、徐々に力が無くなり、前のめりに倒れる。



 その光景は酷くゆっくりと映った。



「き、きゃぁぁあああ!!!」


「うわあぁぁぁあああ!!!」


「し、死んだ。人が、死んだ!!」



 人間の死。



 それを間近で見たクラスのみんなが一際大きな悲鳴を上げる。



 俺も動揺しなかったといえば嘘になる。



 ヘルマン・フォン・オールフェイとは今さっき、初めて会話した。だけど、あの人はアリスとイリスの祖父だ。



 知り合いの祖父が死ぬ光景。そんなものを見て、平気ではいられるはずがない。



 だけど今、注意するべきはそれを行った人物。



 俺の視線を受けて、ちょび髭の男―――コーリックはとても人間のものとは思えない気持ちの悪い笑みを浮かべ、水晶を掲げる。



「アサヒナ・ハルキ。お前は邪魔だ。消えてもらおう」



「ッ!?」



 いや、大丈夫だ。杖の能力は封印している。



 という俺の想いとは裏腹に水晶が赤く輝きだす。



(くっそ!!杖なしでも発動することが出来るのかよ!?)



 即座に黒竜の剣を抜き、コーリックに斬りかかろうとする。が、突如として突風が吹き荒れたため、俺の足は止まった。



 部屋の中なのに突風が吹き荒れたのだ。



 嵐の如き爆風が止む。と、同時に王城南側。俺の後ろ側にある壁が轟音と共に破壊された。



「きゃぁあ!!」


「痛ってーー!!」


「何だよ!何なんだよ!?」



 近くにいたクラスメイト達の何人かが怪我をする。それを見た唯香が即座に《回復魔法》を使用し、回復させる。



 取りあえず大丈夫そうだ。俺は視線をクラスメイト達から破壊された場所に移す。




 そして……




 煙が治まった後、その場所に居た存在に俺は絶句した。



 いや、俺だけじゃない。唯香も大介も望月も桐生も、他のクラスメイト達もだ。



 そこに居たのは――――竜。



 ただ、嘆きの洞窟に現れた黒竜のようなものじゃない。




 ―――()()()()()()()とは比べ物にならない。




 真っ赤に輝く瞳に同じ色の鱗。獰猛な口元からは炎が吹き荒れ、人の手以上の大きさのある牙、槍にも思える鉤爪が手から生えている。巨大な翼と尻尾は細かに動き、それが空気を揺らし、轟音となって俺の耳に響いてくる。



 そして、一番の特徴はその大きさ。全長はあの黒竜の三倍近い。20mはあるだろうか。



 比較対象をあげるなら一般的なマンションの七階に相当する大きさ。



 あまりの巨躯。存在感に言葉が出てこない。



 そうだ。



 黒竜の武具を作ってもらった時、あの時にジダンさんが言っていたじゃないか。あの黒竜は幼竜だって……。



 今、俺たちの目の前に居るのが大人の竜。



 これが成竜。これが本物の竜。



 しかも、この真っ赤に輝く鱗。そして、竜の口元から時たま上がる炎。



 間違いない。



 俺が憧れた存在。そして、恐怖の存在。



炎竜(えんりゅう)…………」



 俺の呟きとほぼ同時、



「グギyAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」



 黒竜以上の咆哮が鳴り響いた。


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