表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/102

第42話 アルガンス公爵との謁見

前話のあらすじ!!


・マスター。ノンアルコールの飲み物を

・武闘派貴族!アルガンス!

・決まったぜ!

 アルガンス公爵の屋敷に入るとすぐに入り口の方から人が出てきた。見た目は20代前半くらいの男性だ。



「アルガンス家へ何か御用ですか?」



 爽やかな声でそう俺たちに問いかける。執事服を着ているからアルガンス家の使用人なんだろうけど、随分若いな。イメージだとパープルトーン家のように初老の男性がこういうことをしていそうなんだけど。この人は俺たちとそう年は変わらない。青年って感じの人だ。



 それよりも……



「えっと、イクシオンよりやってきた冒険者であるハルとユイ、ルナです。イクシオンの領主であるパープルトーン男爵よりアルガンス公爵への推薦状をお持ちしました。こちらがその推薦状です」



 それに執事服の青年が一瞬驚いた表情をしたがすぐに真面目な顔に戻り推薦状を受け取って一度屋敷の中に戻った。



 あの驚いた顔は何だろう?



 勇者だと気付かれた?



 いや、それはないと思う。



 今の俺たちはこの世界の人達と何ら変わらない姿をしている。勇者と結び付くには無理があるだろう。



 その理由は俺が《妄想再現》でスキル《幻惑》を再現し、《幻術》を俺と唯香にかけて姿を変えているからだ。だから今の俺たちは周りには黒髪の日本人の姿ではなく金髪でこの世界に居そうな顔立ちをしている。



 だから今の俺たちを見て勇者と結び付くわけないんだけど……



 少しの不安を抱きながらしばらく待っていると、さっきの執事服の青年が戻ってきた。



「お待たせいたしました。アルガンス公爵様から応接室の方にご案内するように命じられましたのでついてきてください」



 そう言われ屋敷の中に入る。中は流石と言ったところかめちゃくちゃに広く、中央には大きな階段があり、そこを上っていく。壁には武闘派の貴族という噂を裏付けするかのように剣やら槍やら弓やらが飾られている。



 二階に上がりさらに階段を上がり三階へ。三階に着くと右側の一番手前に部屋へと案内される。



「中で少し待っていてください。公爵様を呼んでまいりますので」



 中に入ると五人程度は座れるほどの大きなソファーが二つあった。俺たち三人は入り口に近いところにあるソファーに座る。



 しばらくすると俺たちが入ってきた入り口とは反対の方から一人の男性が入ってきた。年齢は40代前半くらい、真っ赤な赤い髪に大柄でガタイのいい体つきの男性だ。その男性が俺たちの前までやってくる。



「よく来てくれたな。俺がこのアルガンス家当主、ジーゼット・フォン・アルガンスだ」



 低い声でそう自己紹介される。



(この人……居た。確かに)



 この世界に勇者として召喚されたその日。広間にてステータスの確認をしている時にその場に居た人だ。



 緊張しながらも俺たちも挨拶をする。バレないだろうな。



「君たちの噂は俺も聞いている。優秀な冒険者だとね。イクシオンの領主であるパープルトーン男爵からも認められているようだし、噂は本当なようだ」



「ありがとうございます。アルガンス公爵様からそのように評価していただき光栄です」



 と言いながらも内心は心臓バクバクだ。



 バレたらその時点で終了。



 その緊張が俺を支配する。




 ―――落ち着け。



 ―――大丈夫だ。雰囲気的にはバレてない。




 そう自分に言い聞かせながらアルガンス公爵との会話に集中する。



「実は優秀な冒険者を紹介して欲しいというのを俺の方から頼んでいたんだ。そこで君たちに指名依頼を受けてもらいたい」



 …………はい?



 え?アルガンス公爵の方から頼んでいたの?



「アルガンス公爵様の方から、ですか?」



「ああ。正確にはこれから話す内容の依頼を受けることの出来る冒険者。だな。家の者たちで何とかならないか試したが駄目だったんだ。そこで俺の方でも何人か優秀な冒険者に声をかけたんだが……全員失敗してしまってな」



 …………は?



 武闘派の貴族で実力的にはAランククラスと噂される貴族のアルガンス家が手に負えず、見繕った優秀な冒険者全員が失敗?



 どんな内容なんだよ。



「い、依頼の内容は一体何なんでしょうか?」



「ああ……その依頼と言うのはだな」



 一瞬にして緊張が最大限に高まる。



 場の雰囲気に呑み込まれそうになり、少しでも気を抜くと倒れてしまいそうだ。それは唯香もルナも同じなようで緊張で顔がこわばり、冷や汗をかいている。




 一体……どんな依頼なんだ……




 アルガンス公爵が逞しいその体と顔を俺たちの方に近づけながら真剣な表情で依頼の内容を口にした。



「依頼の内容は…………スライム討伐だ!」



 一瞬の沈黙。



「……え?」



 俺はそう呟くことしか出来なかった。



 どんな内容の依頼なのかと思ったけど、まさかのスライムの討伐??



 俺の頭の中に水色の丸っとした体に丸い目、ニコッと笑っている口をしたスライムが『呼んだ?』って感じで出てきた。



 あ、倒すと1の経験値と1~3Gくらい落としそう……



 って違う!!



 そのスライムじゃなくて!



 いや、そういった感じのスライムなんだけどな!



 この世界のスライムは雑魚な奴と厄介な奴の二パターン存在する。約三か月前、俺たちが『初心の洞窟』で戦ったのが前者の雑魚のスライム。スキルを発動しなくても一撃で倒せてしまうほどには雑魚だ。



 そして後者の厄介な方のスライムは人間ほどの大きさがあり特殊な能力を持っている。例えば魔法の攻撃が利きにくかったり、逆に物理攻撃が利きにくかったり。武器や防具を溶かす性質を持っていたりと、個体差はあるけど何かしらの能力を持っていて、レベルの低い冒険者であれば手こずる相手だろう。



 でも、基本的にはスライムだ。動きは遅く、攻撃力もそれほどない。だからDランク冒険者パーティーなら討伐は可能。Cランク以上になれば単独討伐できる。



 そんなスライムに複数人の冒険者たちがやられた?



 嫌な予感しかしないんだけど……



「そのスライムのことと場所について詳しく教えてもらえますか?」



「ああ、いいだろう。シルトランスの街の東側に大きな山脈がある。分かりやすく言うと君たちが冒険者活動の拠点にしていたイクシオンの街の東側にある『灰色の鉱山』。それに続いている山脈だ。その山脈でひと月ほど前に異様な姿をしたスライムをとある冒険者パーティーが発見した。その冒険者パーティーはこのシルトランスの街で名の知れたパーティーだったんだが、そのスライムにやられてしまい大怪我を負った。それでアルガンス家もギルドもそのスライムを討伐しようとしたんだが、結果は敗北という形だ」



『灰色の鉱山』。俺たちが『ミスラス』と戦ったあの鉱山だな。そう言えばあの鉱山でも鉱石を食べるっていう奇妙なモンスターであるミスラスが発見されたんだよな。



 何かあるのか?



「そのスライムは普通のスライムとはどう違うんですか?」



「まずはその姿だな。かなり異様な姿らしい。体中に目があり裂けた大きな口に鋭い牙が生えているそうだ」



 なんだ!?そのスライムは!?



 っていうかそれはスライムなのか??



「それはスライムなんですか?別のモンスターであるという可能性は?」



「新種のモンスターである可能性もゼロではないが、分類上はスライムだと思われる。俺たちの方でも調べてはいるが分からなくてな。討伐も難しい。そこで信頼でき、実力のある冒険者を紹介してくれと最大の冒険者ギルドのあるイクシオンの領主、パープルトーン男爵に話をしていたんだ」



 なるほど。それでそこに繋がるのか。



「と言うのが今俺が話せることだな。どうだ?冒険者ハル、ユイ、ルナ。引き受けてくれるか?」



 アルガンス家当主、ジーゼット・フォン・アルガンスが俺の方をじっと見て聞いてくる。



 危険……だよな。



 ミスラスの時も危険を承知で依頼を受けたけど、今回はそれ以上だ。Aランクの実力を持つアルガンス家が手に負えず、イクシオンの次に大きな冒険者ギルドのシルトランスの冒険者たちですら返り討ちにされている。



 俺もアルガンス公爵をじっと見る。その目は真剣そのもの。嘘をついているようには見えない。



 ここで断ると流石にまずいだろ。せっかくの信頼がなくなってしまう。



「分かりました。その依頼を引き受けます」



 危険を承知で引き受けるしかない。そして冒険者として信頼されてからが勝負だ。



「……そうか。助かる。報酬の方は俺が用意できる物であればなんでも用意しよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ