第41話 情報収集
前話のあらすじ!!
・シルトランスに到着!
・黒い悪魔
・ぎょえええ!!
冒険者ギルドを後にし、お昼ご飯を食べた後、俺たちはそれぞれで情報収集をすることにした。
「じゃあ、夕方にここに集合。それまでは自由に行動ということで」
「はーい」
「うん」
ということで唯香とルナと別れて、俺はシルトランスの街を探索することにした。
別行動することにした理由はその方が情報が集まりやすいと思うし、唯香もルナも女の子。何かと入用な物もあると思うからね。
男の俺がいると中々買えないものもあると思うし。
とにかく情報が集まる場所と言ったら酒場だな。
異世界物の定番だ。
俺は近くにあった酒場に入る。お昼を過ぎている時間だけど、中にはたくさんの人が食事を楽しみ、お酒を飲んでいる。奥へと進みカウンター席へと座る。
「マスター。ノンアルコールの飲み物を」
そうカウンターの場所にいるマスターに声をかける。こういうの憧れてたんだよな!
チラッと俺を見たマスターは直ぐにコップを取り出し、飲み物を入れて出してくれた。
少し飲むと柑橘系の味と匂いが口の中に広がる。近いものだとみかんの味。オレンジジュースかな?
「マスター。聞きたいことがあるんだがいいか?」
俺は極力低い声で辺りに聞こえない程度でマスターにそう問いかける。
くぅ~。いいね!こういうの!!
「……なんだ?」
「この街の領主であるアルガンス公爵のことと王国について聞きたい」
「そんなことが聞きたいのか?」
「俺は昨日この街に来たばかりだからな。知りたいんだよ」
「そうか……じゃぁ、まずはアルガンス公爵のことだな。と言っても俺が知っていることはそんな無いが。アルガンス家は代々貴族の中でも武闘派の貴族と言われていて、その実力はAランク冒険者に並ぶと称されている。武闘派であるからこそ不正や権力の行使を嫌い、家族でもそう言った行為をした者には厳しい罰が下される。現在の当主であるジーゼット様もそういう人柄だからこそ、このシルトランスの街の人々からは信頼されている……次に王国についてだが、何が聞きたいんだ?」
ちょっと待ってくれ。不正や権力の行使を嫌う?
なんかイメージしてたのと全然違うんだけど。
「アルガンス公爵は不正や権力の行使を嫌っているのか?」
「ああ。これは有名な話だ」
「王国は?権力の行使とかをするのか?」
「さぁ?そこまで詳しくはない。だが、現在の国王であるローランド国王は民から愛される優しい王だと言われている。五年前の魔王復活の際もたくさんの犠牲は出たが、最小限に抑えようと奮闘していたらしい。だから俺は王国は不正や権力の行使を行っていないと思っている」
王国についても俺が思っていたイメージと違うんだけど?
どうなってるんだ?
もちろんこれが表の評価で裏ではあくどいことをしているのかもしれない。
この情報を確定するには……
―――スッ
「なんだ?これは」
俺は10000リル硬貨を5枚ほど取り出し、マスターに差し出す。
「もっと詳しい情報をくれ。確かな情報だ」
正しい情報を得るにはお金を差し出す。定番だな。
「……何を勘違いしているのか知らないが、俺はただの酒場の店員だ。そんな金を積まれても教えれることはないんだが」
…………
…………ですよね~。
そんな都合よくマスターが凄腕の情報屋なんていう展開あるわけないか。
少し、入り過ぎたな。
「分かった。情報をありがとう」
俺はそう言い、席を立とうとする。
「お代は500リルだ」
そう言われ、俺は1000リルをマスターに差し出す。これは?という顔を向けるマスターに、
「情報のお礼さ」
と言い、その酒場を後にする。
決まったな!やりたかったんだよな!これ!
とにかくこの情報は二人と共有して考えないとな。
その後も色々なお店を周って情報を集めたけど、集まった情報は、
「領主は義理堅くいい人だ」
「不正を心から嫌う人物」
「国王は民のことを第一に考える優しい人」
など、結局は似たようなことしか分からなかった。
う~ん。どういうことだろう?
とりあえず唯香とルナに合流だな。
集合場所で二人に合流して宿屋に戻る。部屋に集合し、三人で集めた情報を共有することにした。
「っていうのが俺があの後集めた情報だけど……」
「うん。私の方も同じ感じだったよ」
「私の方も似たような感じだった」
どうやら唯香とルナの方でもアルガンス家、王国に対しての評価は俺が調べたものと同じなようだ。
「う~ん、どういうことだ?」
「情報が操作されているのかな?」
「隠蔽されているのかも?」
どうにも王国や貴族に対して偏見があるから俺たちにはそう見えるな。でも、今回この街で情報を集めていた時に会った人たちは嘘を言っているようには見えなかったし、この国や貴族のことを信じているような感じだった。
「春樹くん、どういうことだろう?」
「う~ん。情報操作も隠蔽もあり得るとは思う。でも、話を聞く限り本当に信頼されているんじゃないのかなとも思っている。結局はどっちなのか分からない!」
俺たちが王国や貴族に抱いている印象と世間が抱いている印象がまるで違う。
「だから直接会って判断するしかないかな……どの道アルガンス公爵には会うんだし」
「そうだね!でも、流石に四大貴族ってなると私たちの顔ってバレてない?」
「そこは大丈夫!俺に考えがあるから」
話し合いはそこまでにして早めの夜ご飯を食べてお風呂に入り、寝た。
そして、翌日―――
俺たち三人はシルトランスの街の北側にある大きな屋敷の前に来ていた。イクシオンの領主であるパープルトーン男爵よりもさらに大きな屋敷だ。流石は四大貴族。
いよいよ、四大貴族の一人と対面だな。
そんな俺たちの背後に二人の少女がいたことをその時は気が付かなかった。




