第３６話 進展
前話のあらすじ！！
・鉱山きれいー
・唯香はバランスブレイカー
・ミスラスにやり
「グァァ！！」
そんな叫びと共にミスラスは口から何かを吐き出した。白銀に輝く格子状のものだ。それが俺たちへと迫る。
「唯香！ルナ！あれは絶対に避けろよ！」
そう言い《疾走》で回避。格子状のものが俺の右隣に落ちる。
なんだ？これは？
考える暇を与えることなくミスラスはその格子状のものをさらに吐き出す。
「くっ！」
避ける――避ける――避ける。だけどここは鉱山の中に出来た部屋のような場所。そのためあまり広くなくすぐに避けるの限界が来た。
「きゃっ！？」
唯香がそんな悲鳴を上げる。ダメージは食らってない。ミスラスからの攻撃を受けたわけでもない。地面に落ちたあの格子状のものに足を取られたんだ。
「なに？これ？」
その格子状のものに捕まり動けなくなっている。
！？あれには接着効果があるのか！
唯香が引っ掛かったのを見てミスラスは唯香に向けてその格子状のものを放つ。
やばい！
咄嗟に唯香の前に出て俺がその攻撃を食らう。
「春樹くん！」
俺はその格子状のものに締め付けられ身動きが取れない状態になる。
「うっ！」
そのまま地面に倒れる。起き上がることができない。急激に力が抜けた感じだ。
まさか……デバフ！？
この攻撃、デバフの効果もあるのかよ！
身動きが取れない俺をミスラスが蹴飛ばした。
「ぐっ！」
レベルと装備の防御力が高かったから良かったけど、もう少しレベルが低かったり、装備が弱かったら致命傷にもなりえる攻撃だぞ！
顔を上げるとミスラスが唯香に向かって攻撃をしようとしていた・
まずい……
ミスラスが狙っているのは俺に攻撃したように防具がある部分ではなく、ない部分。つまり……首筋。
そんなところを攻撃されたら唯香は……
最悪の未来が頭をよぎる。
そんなことはさせない！そう思い起き上がろうとするが体に力が入らず、動けない。
くっそ！！
ミスラスが唯香に攻撃をしようとしたその時、
「ダメーーーー！！！！」
ルナがミスラスに突っ込んで攻撃した。
「唯香には……絶対に攻撃させない！！」
そうルナが叫ぶ。その言葉通り、唯香に攻撃が届かないようにとんでもない猛攻をミスラスに与えている。ミスラスはルナからの攻撃を防ぐので精一杯で攻撃が出来ていない。
今がチャンスだ！
この隙にこの状況を何とかしないと……
何かないか？この格子状のものを……デバフを取り消す方法は？
格子……鉄……？
そうだ！これが鉄だというなら……
《妄想再現》で《付与魔法》を再現。《プロテクション》の魔法を付与し、自分を防御する。そして《火魔法》の《フレイムバーニング》を自分に向けて発動する。
「春樹くん！？」
「唯香！水魔法だ！！」
「っ！！」
突然の俺の行動に驚愕の声を上げた唯香だけど、続く俺の言葉にその意図が理解したようだ。
「《ウォータースフィア》！！」
唯香が《水魔法》の《ウォータースフィア》を俺に向けて発動。そう、鉄は熱した後、急激に冷ますと脆くなる。これで……
《妄想再現》で《剛力》を再現し《剛腕》を使用。それにより俺を捕えていたものを壊す。
よし！いけた！
同じ方法を使って唯香の拘束も解く。ふと思ったけどこの方法はミスラス本体にも有効なんじゃないか？
試してみるか……
「唯香！《火魔法》でミスラスの一か所を集中して攻撃してくれ！俺は《水魔法》を使う」
「うん！分かった！」
《妄想再現》で《水魔法》を再現。なんで俺が《火魔法》を使わないかと言うと、唯香には黒竜の杖の効果の《火属性魔法攻撃強化》があるからだ。俺が使うより唯香が使った方が攻撃力が高い。
「ルナ！一旦下がれ！」
「っ！！」
その声を聴き、ルナが後ろに下がる。それと同時に俺はミスラスに向かい走り出した。唯香の攻撃の軌道線上に入らないように。
「ガァァア！！」
ミスラスの意識が俺に向いたとき、唯香が《火魔法》を発動。ミスラスの右側のお腹部分に直撃。さらに連続で唯香の《火魔法》が直撃する。
唯香の方にミスラスの意識が向く。その直後、俺は《俊足》を解除し、《瞬身》を再現。《神速》でミスラスの右側に回り込み、お腹部分に《水魔法》の《ウォーターフロー》を発動し、当てる。
「ガァァア」
熱せられていた部分が急激に冷まされる。さらにその部分に俺は《神速》で近付き、《破壊斬》で攻撃。ミスラスの硬い体にひびが入った。
よし！この方法ならいける！
一旦下がりミスラスとの距離をとる。
「唯香！この方法でいくぞ！ルナ！俺たちがミスラスの防御を崩すから隙をついて攻撃してくれ！ルナが倒すんだ！」
「うん！」「はい！」
何故ルナが倒すのかと言うとルナの黒竜の爪には《刺突攻撃上昇》の効果がある。斬るのではなく突くのならルナの方が上だ。恐らくこのミスラスには斬るのよりも一点を突く方が効果があると思う。
「よし！いくぞ！」
俺のその一言で動き出す。ルナがミスラスを翻弄し、俺と唯香が魔法で攻撃。
一瞬も油断できない。
―――集中しろ！
三分？五分？時間感覚がなくなるくらい高度な攻防が続いた。
そして、唐突にその時は訪れた。
―――パキッ！！
そんな金属にひびが入る音。少し、じゃない。確実に完全にひび割れた音だ。
「ルナ！！」
俺がそう言葉を発する前にルナは動き出していた。
「はぁぁ！！！」
ルナの右手が光り、その光りが徐々に形を変え、鋭い槍状になる。《鉤爪》スキルの《激突》だ。
その右手をひび割れたミスラスの体に当てる。
―――ゴーーーン！！
という硬いもの同士がぶつかった音の後、
―――パキ……パキパキ
―――ピキピキピキ
そしてミスラスの体についている鉱石が壊れ、ルナの攻撃がミスラスの内部に届く。
「グア……ァァ」
ミスラスの口から血が流れ落ちる。そして……
ミスラスが倒れた。
「ふ～、倒せた……」
まさかこんなに厄介なモンスターだなんて思ってなかったな。
とにかく倒すことは出来た。でも、討伐が目的じゃない。今回の依頼の内容はこのミスラスから採取される鉱石の入手だ。
ミスラスの死体に近づく。とりあえず、この死体と周囲にある鉱石を採取すればいいかな？
《付与魔法》を解除し、《アイテムボックス》を再現。ミスラスの死体と鉱石を《アイテムボックス》に入れる。
「これで依頼は達成だな」
「うん……ありがとう！ルナ。私を助けてくれて」
「え？……は、はい」
その返事を聞き、唯香が少し悲しそうな表情をする。
「ねぇ、ルナ。私たちに遠慮とかしないでほしいな。私はルナの特別になりたいから……」
「特別……」
「そう。あの時言ったでしょ。私はあなたの特別になりたい。だから敬語とか使わないで話してほしい。私の我が儘なのかもしれないけど……」
「そ、そんなことない。私も……そうなりたいって思ってる」
「じゃぁ、そうなろうよ！少しずつでもいいから……ね！」
「うん……」
そう言って二人は抱きしめあう。
うん！実にいい光景だ！本当に姉妹みたいだな！
「俺にも敬語なんて使わなくていいからな」
「分かった。敬語はこれから使わないようにする……でも……」
ルナは笑顔を浮かべ、
「人がいる前では私は奴隷として振るまうから敬語は使うね」
お、おう……そこは譲らないんだな。
まぁ、少しだけでも関係が進展したから良しとするか！
