第31話 その後の出来事
前話のあらすじ!!
・さぁ!ゴーレムとの決戦だ!
・俺がやる!
・いや俺たちで倒すんだ!
「くっそ!きついか……」
イクシオン冒険者ギルドに迫ってきていたモンスターの群れ。ギルドマスターガイゼクトの参入により何とか持ちこたえていたがじりじり押されていく。
その時、モンスター軍のど真ん中に業火の炎が舞い降りた。その炎が数多のモンスターを焼き尽くす。
「あれは火の最上位魔法 《バーストフレア》。ってことは……」
「みんなっ!!もう大丈夫よ!!」
森の奥。モンスターたちの後方にはSランク冒険者ティアナがいた。
「来てくれたか……」
さらに春樹、唯香、ルナの参戦により、形勢は逆転。一気にモンスターたちを殲滅できた。
「ふ~、何とかなったな」
イクシオンに突然現れたモンスターの大群を退けてから三時間後、様々な後処理を終えたガイゼクトは自室で椅子にもたれこみ、くつろいでいた。
時刻は夕方。街もいつもの活気に戻りつつある。
―――コンコンコン
と部屋の扉をたたく音。入ってきたのはSランク冒険者のティアナ・アルデシアだった。
「おう。ティアナ!お前もお疲れ様。大変だっただろう?」
「ええ。本当に……気が付いていたの?」
「うん?何がだ?」
「ハルとユイのこと。あの遺跡のこと……」
「あの二人のことならうすうすな。遺跡のことは分からんが……」
「なら、話すわ」
そう言い、ティアナは遺跡で起こった出来事を話した。モンスターが自然に発生したには多すぎること。遺跡内にゴーレムがいたこと。そして、ゴーレムが魔王の力である黒いオーラを持っていたこと。
「魔王の力を持つモンスターか……」
「今回は何とかなったけど……やっぱりあの力には私たちは敵わない」
「そこはさすが勇者様と言うところか……」
やっぱり、ガイゼクトも気が付いていた。その洞察力はさすがギルドマスターと言うべきか。
「とにかく今回の件には六魔族が関わっていると思う」
「……六魔族。もう二度と聞きたくなかったがな」
「何か変化はないの?このタイミングでこの街が襲われたのは偶然じゃないと思う」
「今のところ何かあったっていう報告はないな…………そう言えば、受付の奴らが地下の水晶がどっかいったとか言ってたけど」
「水晶?」
「ずっと前からあった壊れた水晶さ。魔力を通しても何も反応のない、何に使われていたか分からないものだ。まぁ、バタバタしてたからどっかやしたんだろ。無くなってもいい代物だ」
「そう……」
「とにかくこれから最大限警戒しないとな」
そうしてティアナとガイゼクトの会話は終了した。
「お疲れ様でした。ハルさん。ユイさん!こちらが報酬です」
レーネさんから俺たちは報酬を受け取る。
「今回は今までよりも凄い実績ですよ!!Sランクであるティアナさんと遺跡の調査をし、モンスターたちを殲滅。そしてイクシオンに駆けつけてこの街のピンチも救った。本当にすごい!!…………あっ!それとギルドマスターからの命令で二人ともランクがBランクに上がるので冒険者カードを提出してください」
「はい!?え?Bランクですか!?試験は!?」
Cランク以上のランクアップには試験があるはずなんだけど。
「ギルドマスターからの命令で今回の実績により試験は無しでよいと」
えぇ!?それでいいのかよ!!いや、その方がありがたいんだけどね!!
「あと、伝言で『その方が都合がいいだろ』と」
え?なんかギルドマスターに勇者だとバレてね!?
もしかして……ティアナさんが?
「ハル、ユイ、ルナ」
丁度その時、思い浮かんでいた人が奥から出てきた。ティアナさんは俺たちを奥の部屋に来るように手招きする。
「この部屋って何ですか?」
「普通に話をする部屋よ。個室だから、密談にぴったりなね。春樹、唯香。今回はありがとう。私の思いに応えてくれて。希望を見せてくれて……あなたたちは紛れもなく勇者だったわ」
「いえ……」
そう返すが結構恥ずかしいな。唯香も照れてるし。
「それで提案なんだけど、あなたたちが偽名を使って冒険者をやっているのは訳があるんでしょ。話してくれない。それに私も協力する」
どうしようか。と唯香を見ると、話してあげてというような優しい顔をしていた。それにティアナさんなら信用できるし。
「分かりました。話します」
そうして話す。勇者召喚のこと。王国のこと。貴族のこと。
「なるほど……それはかなり厄介ね。私も貴族には知り合いはいるけど、そんな話は聞かないし。おそらく国の上層部の方で決められ、隠蔽されている。っていうことは『四大貴族』が絡んでいる可能性が高い」
「四大貴族?」
「えぇ。この国に古くから仕える四つの貴族。オールフェイ、ブライトヒー、アルガンス、エクイラーが四大貴族と呼ばれる貴族よ」
「なるほど……」
この貴族には注意しないとな。
「っていうかギルドマスターに俺たちが勇者っていうことがバレてるっぽいんですけど……」
「わ、私じゃないわよ!というか私とあなたたちを合わすときにはすでに気が付いていたっぽいわね。そこはさすがギルドマスターというところかしら」
なるほど。確かに。あの時も強引に俺たちとティアナさんを遺跡に向かわせようとしてたし。結果、上手く乗せられたし。
ギルドマスター恐るべし。
「とにかく王国のことで何か分かったら連絡するわ」
「分かりました。ありがとうございます」
「……話はこれで終わり。じゃぁ、行くわね」
そう言い部屋を出て行ことする。その時、こちらに振り向き、
「ありがとう!勇者!!」
そう可愛らしい笑顔でお礼を言った。
―――夜。イクシオンの街の上空。
そこに二つの影があった。
一人は14歳くらいの銀髪の少年。美少年と言い表すに相応しいその顔からは笑みが伺え、手には両掌に収まるくらいの水晶。
もう一人は灰色の肌に尖った耳、灰色の長い髪を持つ美しい容姿の青年。
その二人は魔法で浮いているわけではない。背中から禍々しい翼が生えており、それで飛んでいるのだ。
「見てみなよ。綺麗だね。この水晶」
銀髪の少年が青年に向かって言う。
「それがお前の探していた物か?」
綺麗なさわやかな声で少年に聞き返す。
「その一つ。だけどね」
「しかし、よく誰にも気が付かれずに手に入れれたものだな」
「まぁ、分かっていたからね」
「ふ、そこはさすがアガリアレプトというところか」
「僕の目標はまだ先だけどね。サタナキア、君の方はどうだい?」
「順調だな。もう少しかかると思うが……」
「そうか。じゃぁ、次は…………『王国』だね」
その二つの影は一瞬にして闇夜に紛れ、消えていった。
これにて第2章終了です。次からは第3章「貴族編」をお送りします。
また、8月中は毎日投稿という自分なりの目標もあり毎日更新していましたが、次章からは投稿ペースを落として週一くらいでの投稿をしていきたいと思います。
ここまでこの作品を読んで下さった全ての方に心からの感謝を!!
では、次章の予告的なものを少し…
「冒険者として確かな地位を築いた春樹と唯香。そんな2人についに貴族からの指名依頼が……王国の企みはなんなのか?物語が一気に動き出す(予定)」




