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真・失恋王  作者: ランプライト
第一章 「失恋王 vs キューティトラップ」
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005

偶々俺一人きりで本を読んでいた写真部の部室に相田美咲が現れる、いや、正確にはドアをほんの少し開けてじーっと中の様子を伺っている、……まあ、何てお行儀の悪い、


「きょーうもーとさん!お一人ですか?」

「ああ、俺だけだけど、」


何だかニコニコ上機嫌で部室に入ってくる相田、何だか相田にしては珍しく落ち着きがないと言うか、なんか舞い上がってる?


「なんか良い事でも有ったのか?」

「ふふっ、教えて欲しいですか?」


「いや、別に良いかな、」

「えー、そんな事言わないで聞いてくださいよぉ、」


学園のアイドル相田美咲がテーブルの俺の前に座って可愛らしい膨れっ面をする、


クラスのみんなは実は相田美咲がこんな変顔するなんて知ったらどんな反応するのだろうか、……教室ではしっかり清楚可憐なお嬢様でシャンと背筋も伸ばした相田だが、部室にいる時はちょっとリラックスしてる、と言うか、普通の女の子と言うか生身の人間臭く見えて少し安心する、それにこっちの方が断然可愛いし、それを目の当たりに出来る俺は少し役得だったり優越感だったり、


だからついつい調子に乗って、


「そうだな、みーちゃの話だったら聞いてやっても良い、」


学園のアイドル相田美咲がテーブルの俺の前に座って可愛らしい顰めっ面をする、


「京本さんはやっぱり意地悪です、」


みーちゃとは相田が小さい時から大切にしている変な顔をした猫の縫いぐるみの指人形の事だ、


「もしもし宗次郎くん、ねえ、聞いて聞いて、」


相田はポケットから取り出したパペットを人差し指にはめて、……って本当にやるのかよ、


「何だよ、」


茶番だとは思いつつも言ったからには付き合ってやるしかないか、て言うかコレ結構恥ずかしい、


「美咲ちゃん、今度彼氏とデートするんだってぇ、」

「ほう、無事彼氏と連絡取れたのか、良かったな、」


嬉しそうにニコニコしながら指人形をピコピコ動かす相田美咲さん高校一年生、


「宗次朗くんのお陰だよ、ありがとう!」

「それで、何処行くんだ?」


「ルスツにあるリゾートパークだよ、」

「へー、遊園地デートか、ベタだけど良いんじゃねえのか、ん?」


なんかスッと腑に落ちない、


「ルスツ?」

「うん、ルスツ、」


「ルスツって何処だっけ?」

「北海道だよ、もしかして宗次朗くんは地理が苦手なのかな?」


「って、なんでわざわざ北海道なんだ?」


いきなり声を荒げた俺にビクっとたじろぐ相田、ちょっと涙目になってる、


「豊田くん、今北海道の全寮制の私立高校に通っているんですけれど、外出許可がとっても厳しいんだそうです、でもその日は丁度同じ高校のお友達と一緒にリゾートパークにお出かけする外泊許可が取れたので、その時に少しでも会おう、と言う事になりまして、」


「ちょっと待て、外泊?」

「お昼はお友達と約束があるので私と会うのは難しいそうです、でも夜なら会えるかもって、」


「夜?」

「はい、リゾートパーク内にあるホテルで待ち合わせする事にしようかと思います、」


夜?ホテル?外泊?


「つまり、お前とその彼は、そう言う仲なのか、いや、駄目とか言ってる訳じゃなくて、上流階級の常識という物がよく分かってないんだが、もっと不純異性交遊には厳しいんじゃないかと思ってたんだけど、違うのか?」


「不純?異性?交遊?」


学園のアイドル相田美咲がテーブルの俺の前に座ってなんだかキョトンと首を傾げる、


「ホテルに一緒に泊まるって事は、つまりそう言う事をするって、そう言う事じゃないのか?」


「そういう事?」


5秒待ってから、…………真っ赤になる相田美咲、


「違います!何を言って、そんな! 私達は未だちゃんと手を繋いだ事も無いんですよ!」


「じゃあなんでいきなり百歩すっ飛ばしてお泊りデートなんだ? 大体なんでお前がそいつの為に北海道くんだりまで出かけていかにゃならんのだ、普通男の方が彼女に会いに訪ねてくるもんじゃないのか?」


お兄ちゃんは頭ん中お花畑なみーちゃの事が俄然心配になって来たぞ、


「だって、彼はうちの父の命令で家族と引き離されて北海道の学校に入れられているんです、その上携帯の通信記録や私生活までチェックされていて、これ以上私の為に迷惑はかけられません、」


相田の話によると、彼氏、豊田君は相田父の推薦と資金援助と言う形で、かなり上流階級な北海道にある全寮制の高校に進学させられたらしい、その上成績次第では近い内にアメリカにある姉妹校への交換留学のチャンスもあるらしいのだが、……要するに相田父の意向に沿わない行動をすると途端に高校中退将来の展望も閉ざされてしまう訳で、要するに相田美咲と豊田を引き離そうとする相田父の策略だと言う事か、


「お前がそいつの事を大切にしてるのは分かった、けど、お前は本当に覚悟は出来てるのか?」


暫しジッと俺の目を見つめて黙りこくる相田美咲、本当に気付いてなかったらしい、


「殿方は、その、やっぱりそういう、エッチな事を、期待されている物なのでしょうか?」

「俺はそいつの事はよく知らんが、俺だったら当然期待するだろうな、」


所謂ジト目と言う奴で上目遣いする相田、コイツどんな顔してても可愛いいな、


「そうなんですか、参考になります、」

「それで、どうする? それでも、行くのか?」


相田美咲は黙ったままコクリと頷く、

俺はやれやれと深い溜息を一つ、


「全く、お前みたいな美人にそこまでさせるとは羨ましい奴だな、」


真っ赤になって、一寸拗ねた顔の相田美咲、


「美咲はそんなにいい子じゃありません、」


相田は口を一文字に結んで、そうだ、始業式の日にクラス分けの掲示板の前で相田は今と同じ様な顔をしていた事を俺は思い出す、相田はあの時からずっとこうなる事を覚悟していて、あの日からずっと諦めるつもりなんてこれっぽっちも無かったのだろう、


「それにしても、お前の親にはどう説明するんだ?」

「あ、……」


「まさか男とデートだとかは言わないにしても、北海道まで泊りがけで出かけるとか普通許してもらえないんじゃないのか?」


「それで、実は京本さんに御協力して頂きたい事が有るんです、」




ーーー

「合宿? それ面白そうだねぇ、」


早美都と博美先輩が合流後、それとなく相田の口から写真部の合宿の話が持ちかけられる、当然相田は彼氏とのお泊りデートの事などこれっぽっちも匂わさないでいて、恐らく前日突然に都合が悪くなって参加できなくなった体で別行動して後の辻褄合わせは全部俺に丸投げするつもりらしい、と言うかこう言う目的の為に俺を写真部に誘ったのだとしたら、


コイツ、可愛らしい顔して結構腹ドス黒いな、


「泊りでやるなら天体撮影なんてどうかなぁ? 後、長時間露光の街の夜景とか素敵だよねぇ、」


何だか俄然ノリノリな博美先輩、写真撮影の専門誌を捲って天体撮影の頁を開いてみせる、


「僕も行きたいな、宗次朗が行くなら、だけど、」


そして何故だか指をモジモジして顔を赤くして照れてる早美都、


「場所は、伊豆半島とか、如何でしょうか?」


相田が困り眉で申し訳なさそうな顔して俺の顔を覗き込む、


「俺は別に何処でも良いけど、」

「南伊豆には有名な天体撮影スポットがあるみたいだよぉ、」


先輩が開いた頁には、灯台の見える夜景と天の川の写真、


「ねえねえ、バーベキューとか出来るかな?」

「どうだろう、調べてみないとだねぇ、」


「でも、泊まりって言っても今から旅館とか予約できるかな?」

「だってぇ、天体写真撮るなら一晩中だからホテルとか無くても大丈夫だよぉ、」


いや、そんなニコニコ笑いながら当たり前の様に言われても、いや、完徹写真撮影大会とか、もしかして写真部って、体育会系なのか?


「でもぉ、機材はどうしようかぁ、レンズは兎も角、赤道儀と三脚は持って運ぶのは大変そうだねぇ、」


「それなら私が車を出してあげるわ、」


何時の間にか背後にアカリ先生登場、そして何故かさり気なく俺の肩に手を置く、そして何故か膨れっ面になる早美都、


「じゃあ、決まりだねぇ、」


俺はもう一度相田の事をジト目で睨みつける、


「本当に良いんだな、」


相田美咲は、黙ったままコクリと頷いた、

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