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真・失恋王  作者: ランプライト
第一章 「失恋王 vs キューティトラップ」
2/24

002

春の風が花弁に輪舞曲を舞い躍らせる正午過ぎの陽気の下で、


「クシュん!」


と可愛らしいくしゃみが何処かで一つ、俺は食べ終わった弁当箱を流しで軽く濯ぎながら大きな欠伸を一つ、ふと顔を上げると運動場の隅の水飲み場の日向で白い猫が丸まって居るのが見える、


「平和だな、」


それで席に戻るとクラスメイトの和田兵庫がやってきて何の前触れもなく恋愛相談を始め出した、


「京本、恋愛に詳しいんだってな、「失恋王」とか言われてるって本当?」

「有人が勝手に言ってるだけだ、」


「実はさ、俺、好きな子が居るんだけど、意見聞かせてくれないかな、」


コイツ人の話を聞く気があるのかそれとも無いのか? それにしたって高校生活始まってまだ一週間だと言うのにもう誰かに惚れたのか? 全くコイツは高校生の本文は学業だと言う事を知らないのだろうか?


「何で俺に相談する?」

「失恋を極めて恋愛を卒業した京本なら、的確な意見をもらえると思って、」


「へぇ、凄いね宗次朗、」


色白ショートカットで睫毛の長い男の娘が俺の隣の席で眼を輝かせている、始業式以来何故かこの可愛らしい男子に俺は懐かれてしまったらしいが、まあ、それは置いといて、


どうやら和田兵庫が好きになってしまったのはクラス1、イヤ今や間違いなく学校一の美少女、相田美咲で間違い無かった、確かにファッション雑誌のモデルとかTVに出ているアイドルとか言われても信じられる規格外の可愛らしさで、その上頭も良くて誰にでも親切で言葉使いも上品で何時もニコニコしていて何処と無く気品に溢れていて、……こういう高嶺の花はクラスの共有財産として黙って愛でて楽しんでいれば良いものを、告白して恋人にして独り占めして学校中を敵に回す事も厭わないとか、全くご愁傷様である、


「同じ教室で同じ空気を吸っているなんてある意味「奇跡」だとは思わないか?」


成程、相田の一つ前の席が和田なのか、全く単純な運命主義者だな、


「それによると少なくとも同じ奇跡を共有している男が20人は居るって事だが、それでなくても相田じゃライバル多いだろう、お前にどれだけのアドバンテージが有るって言うんだ?」


「俺、相田さんと席が前と後ろだろ? プリント回す時にすっごいニコって微笑んでくれたり、時々大した用も無いのに俺の背中をツンツンってつついて来たりするんだぜ、これってつまり俺に気があるっていう事じゃ無いのか?」


それ位なんだ、俺は西野敦子に足の指で脇腹を抓られた事だってある、それだって他愛のない意味の無い悪戯でしかなかったのだ、女子がする事にいちいち恋愛的意味付けをすると言うのは、彼女達の人間としての人格を否定する事に他ならない、人間だもの、当然涎も垂らせば、おならだってする、大体相田がこいつの背中をツンツンしたのはこいつが授業中に居眠りしていた時に教師に当てられそうになっていたからだ、


「いいか、この世には恋愛における2大法則がある、一つは「恋とは知りたいと思う気持ちで、愛とは失いたくないと思う気持ち」だと言う事だ、もう一つは「多くの恋愛が成就しない最大の理由は、お互いのペースが違っているから」だ、片方が一方的に突っ走ったらそれはただの迷惑、恐怖でしかない、」


「ほう、それで?」


「つまりお前が彼女の事を知りたいと思っているのと同じ位に彼女がお前の事を知りたいとアプローチして来ないのなら、今は脈は無いと言う事だ、そして本当にお前が彼女と恋人になりたいと思うなら、彼女のペースに合わせて軽率なアプローチは控える事を進める、」


「そういうもんなのかな?」


何だか合点がいかない様子でスゴスゴと引き返す和田兵庫、後日、と言うかこの一日後、結局和田は相田に告白して、見事振られる事となる、




ーーー

「じゃあ、お店選びは放課後に二人で検討しましょう、」

「はい、分かりました、」


委員会の打ち合わせから戻ってくる上野と相田の学級委員長コンビ、誰が見ても相田美咲争奪戦を一歩リードするのはこの積極性優等生、上野太郎で間違いなかった、


それにしても同じ高校の制服だというのに相田美咲が袖を通すとまるでオートクチュールの様に見えるから不思議だ、デパートでマネキンが着ているステキな服を試着して見た時の何だか違ってる感じで、すれ違う女子の着こなしがチンチクリンだったりツンツルテンだったりに見えてチョット気の毒になる、どうやらこれには手足の長さと頭の大きさのバランスが深く関係しているらしい、


「相田さん、今週末って暇? 神崎君達とボーリング行こうって言ってんだけど、どうかな?」


そして席に着くなり最近スクールカースト一軍を確立しつつ有る神崎グループの微ギャルコンビ、牧野五十鈴と浜野優子が話しかけてくる、牧野はポッチャリ系養殖ギャル、浜野は清楚ビッチ系天然物といった感じ、それにしても二人ともちょっと屈んだだけでパンツが見えそうな位スカート丈が短いが、俺は改めて太腿は見せれば良いと言うものでない事に気付かされる、太めずん胴の脹ら脛とか首から上の印象で株価の暴落した絶対領域ならずっとそっとして置いてくれた方が良かったに違いない、


「すみません、週末は家の手伝いが有って、折角お誘い頂いて申し訳ないんですが、」


そして相田は相手がギャルだろうとキチンと椅子から立ち上がって礼を失せぬ対応、


その足下はと言うと、学校規定の標準膝丈スカートであるにも関わらず、スラット控えめなお尻から恐らく絶妙な曲線で縁取りされるであろう隠された太腿のシルエットと、スカートの裾からチラリと覗く膝裏の窪みから緩やかに伸びる柔らかそうな脹ら脛のカーブ、更に細い足首へと収斂し上履きに覆い隠された魅惑の踵へと続く完全無欠のライン、……思わず意味もなく動悸が激しくなるのを止められない、


元来日本人は着物の裾からチラリと覗く素足の足首だけで十分にエロスを感じる侘び寂び文化を嗜む民族なのだ、


「宗次朗のエッチ、」

「ん?」


振り向くと、早美都が膨れっ面で俺の事を睨んでた、




ーーー

英文法の宇佐美女史が登壇、教科書を開いて午後の授業を開始する、


ふと見た相田がホッと溜息を一つ漏らす、それで、それを俺に見られていた事に気付いて恥ずかしそうにチョット顔を赤らめて今一度姿勢をしゃんと正して黒板に注目、


まあ、あれだけ引っ切り無しに勧誘されたら誰だって疲れてしまうに違いない、人気者も大変だな、……と、今度は有人がツンツンと俺の背中をつつく、


「伝言メモ、」


そう言って宇佐美女子に気づかれない様に小さく畳んだメモを俺にパスする有人、


メモには『相田さん宛』と書かれてある、一体誰だ? そして何時の時代だ?


俺は黙ってそれを自分の机の引き出しにしまう、こんな物を相田に手渡すのは何だか小っ恥ずかしいし、そもそも不真面目だ、そしたらイキナリ何処からともなく消しゴムを小さく千切ったカスが飛んできて俺の頭を直撃、どうやら一番後ろの席を陣取った柄の悪いグループらしいが敢えて無視、……更にもう一発消しゴムのカスが飛んで来て直撃、




ーーー

「相田さんって凄いね、」


放課後、一緒に帰ろうと早美都が声を掛けてくる、


「ん? お前も相田の事が気になるのか?」

「違うよ、そうじゃなくって、さっきの授業の模範解答、」


確かに、相田は授業範囲は完璧に予習出来ているらしく、教師も驚き参考書も顔負けの模範解答の連発だった、恐らく全教科全方位抜かりなし、


「頭も良いし、すごくモテるし、」


確かに、毎日授業終わりは、恐らく今も誰かしらからの呼び出しで愛の告白を受けているみたいだ、入学して未だ一ヶ月も立っていないと言うのに何という運命の出会いの発生頻度の高さ、


「それにとっても親切だし、」

「なんだ、お前やっぱり気があるんじゃないのか?」


早美都がちょっと顔を赤らめている、


「違うってば、この前職員室にノート集めて持って行く時に助けてもらったの、それだけ!」

「何故ムキになる?」


「僕さ、小学校の時に友達のお姉さんに悪戯された事があってそれ以来女子が苦手なんだよね、だから恋愛とかあり得ないし、」


「どうでも良いけど穏やかじゃないな、悪戯って、何されたんだ?」


「無理矢理女の子の格好させられたりとか、」

「なんだそれ、面白そうだな、」


途端に頬っぺた膨らませて真っ赤になって怒りだす早美都、


「もう、宗次郎にそんな事されたら僕一生引きこもるからね!責任とってよ!」


そこへ戻ってくる相田、


「お二人は仲が良いんですね、」

「僕今虐められてたんですけど、」


「お前が凄い奴だって話ししてただけだよ、」


「そんな、私なんか未だ未だです、京本さんの方が落ち着いていらっしゃると言うか、頼りになるお兄さんって感じで素敵です、」


そう言ってニッコリ微笑む相田の顔が見れなくて俺は敢えて目を逸らす、


「変な事言ってんじゃねえ、」


「こいつは落ち着いてるって言うより人生諦めてるって感じだからな、」


とっくに帰った筈なのに何故か引き返して来てここぞとばかりに会話に割り込んでくる有人、


「え?どうしてなんですか?」

「知りたい?失恋王の伝説、」


「気になります、」

「つまんない話してんじやねえよ、」


「相田さん、そろそろ行こうか、」

「あ、はい、」


そこへ割り込んで来る学級委員長、なんだかちょっと独占欲丸出しっぽくて嫌味な感じ、


「よう、委員長特権でデートか?」


すかさずチャチャを入れる有人に、


「そんなんじゃないよ、下品な奴だな、クラスの懇親会の打ち合わせするんだ、」


図星をつかれたのか顔が赤くなってる委員長、


全く、頭の中お花畑な連中のなんと多い事か、

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