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真・失恋王  作者: ランプライト
第ニ章 「失恋王 vs 愛の戦士」
15/24

015

それから1時間後、確かに相田美咲は酩酊状態にあった、


「だからキスです、唇ちゅうじゃなくって、もっと舌を絡ませて舐めあう奴です、映画とかであるでしょ、知らないんですか? 宗次朗はお子ちゃまですね、」


いや、酒を飲んだのは最初の湯呑み半分位の筈なのだけれども、最早鉄壁のお嬢様外骨格は決壊寸前、いや時すでに遅し、こんな相田美咲見た事ない、誰かに見られたらアカリ先生は懲戒免職、写真部は廃部、俺達は停学間違い無し待った無しの状況だと言うのに当のアカリ先生はと言うと、


「どうかしたの?」


キョトン顔で俺を見て剰えニンマリと意味深な笑みを浮かべてる、


「先生ぇ、キスって気持ちいいんですかぁ?」

「私はそう思うけど、……」


博美先輩の追及に、アカリ先生が少し困った風に俺の顔を覗き見る?……何故?


「そりゃ直接粘膜と粘膜を擦り合わせるんだから、生物的には快感を感じるに決まってるだろう、」


相田美咲が俺の肩にもたれかかってくる、


「宗次朗はキスした事あるんですか?」

「無えよ、」


更に詰め寄ってくる、


「じゃあ、どうして気持ちいいって分かるんですか?」

「い、一般常識として、」


「本で読んだ知識だけで語るのは無責任だと思いませんか?」

「教育ってそう言うもんだろう、」


今にも顔と顔が触れそうな位ににじり寄って来て、こいつ酒臭い!


「実学です、私とキスしてみませんか?」


早美都がおじやを噴き出した!


「僕も、未だした事ないよ!」

「いや、駄目だろう、正常な判断が出来ない時に、そういう事は、……」


ちらりと盗み見たアカリ先生は、もしかして一寸にやけてる?

先生!何か楽しんでません?


そしてとうとう相田美咲が俺の膝の上に跨って、首に腕を回して抱きついてきて、


「みーちゃが教えてあげましょうか?」

「いい、遠慮しとく、」


唖然としながらも興味津々に行く末を見守る博美先輩と早美都、


「もしかして怖いんでしゅか?」

「何が怖い、……たかがキス位、」


多分、今の俺は恥ずかしい位に真っ赤に照れていると思われる、相田美咲の柔らかなパーツがあっちこっちに密着してきて、どうしようもなく、生物学的にどうしようもなく、勃起してしまう!て言うかもうしてしまってる!


「生物学的に粘膜を擦り合わせる行為であってぇ、恋愛とは無関係なんです、」

「分かったって、ちょっと落ち着け!」


良いのか?こんな感じでクラスの女子とキスするとか、正直罪悪感が半端ないが、


「粘膜と粘膜ってさぁ、男同士の身体でも、……気持ち良いのかな?」


早美都、本当ゴメン、そこは俺は敢えてスルーする、


「ほーら、みーちゃのファーしゅとキしゅでしゅよぉ、」


ちゅっと、唇と唇が触れた瞬間でギリギリ踏み止まって、


「ちょ、待てって、お前も初めてなのかよ、だったらこんな酔った勢いでとか、止めとけって!」


「あらぁ、宗次朗にも恋愛脳が残ってたんでしゅかぁ?」

「いや、お前が後で後悔すんじゃ無えのか?」


「どうせキスなんかその内、嫌でもしなくちゃならなくなるんですから、さっさと宗次朗で済ましておけば後はどんなのが来ても平気です、」


「どういう意味だよ!」




ーーー

外がすっかり暗くなる頃、とうとう相田美咲は俺の膝を枕にして眠ってしまった、


「なんか最後の方は壮絶だったねえ、」

「僕、一生お酒は飲まないって決めた、」


苦しそうに眉間に皺を寄せながら眠る相田美咲を見て早美都がしみじみと呟く、


「ま、こいつもこいつなりに色々ストレス抱え込んでんじゃ無えのか?」

「もっと、何でも打ち明けてくれる様になれるといいな、」


そう言いながら早美都が、相田の前髪を手櫛ですっと撫ぜてやる、


人は、自分の恥ずかしい所を見せ合えば見せ合うほどに互いの信頼を高めていく生き物である、何故なら弱点を晒すと言う行為は信頼がなければ出来ないからだ、


しかしだからと言って全ての自分を曝け出した時に相手が全てを受け入れてくれるとは限らない、いや、その確率は限りなく0に近いだろう、


時には気持ち悪がられ時には怖がられたりもする、人は、自分の理解を超えたものを恐れるからだ、今の居心地のいい自分本位の世界観の外側に引きずり出される事を恐れるからだ、


だから人は、自分の弱みと言う名の本性を容易に他人には晒したりしない、


受け入れられなければ、もう二度とこの居心地の良い距離感を取り戻す事は出来ないと言うシステムは、何処と無く愛の告白にも似ている様な気がする、




ーーー

「凄いね、宗次朗はみんなを素直な気持ちにさせてくれるんだ、」

「俺じゃ無くって酒の威力ですよね、俺は別に何もして無いですよ、」


夜も遅くなって来たので早美都と博美先輩を先に帰して、以前鎌倉の相田の家まで送っていった事のある俺が相田を家まで送って行く事にした、


「私も宗次朗以外の男の人の前ではこんなに酔うまで飲んだりしないわよ、」

「それは百パー嘘ですよね、」


あられもない格好で俺の膝の上で寝息を立てている絶世の美少女と、色気ムンムンの女教師と、リビドー全開の男子高校生が夜の家庭科実習室に三人きりとか、しかし一体どんな罰ゲームだって言うんだ、


「先生、」

「なあに?」


「こいつ、何か悩んでるのかな、」

「どうしてそう思ったの?」


「さっき変に弾けてたし、なんか変な事言ってたから、」

「お酒の席での失言は、聞かなかった事にしてあげるのがマナーよ、」


俺はアカリ先生が淹れてくれたお茶を受け取って、


「あ、どうも、」

「熱いよ、」


零さない様にそっと口を付ける、


「にが!」

「ごめん、間違えた、宗次朗のはこっち、」


言いながらアカリ先生が湯呑みを取り変えて、

俺の事を見てニヤリとほくそ笑む、


「先生、わざとでしょ、」

「だって、みんな楽しそうだったから、」


そして、ムクリと起き上がる相田美咲、


暫し辺りを見回して状況確認、思考停止してフリーズ、


「京本さん!」


真っ青になって、……


「気持ち悪い、」


それってお酒の所為だよね、




ーーー

「本当に申し訳御座いませんでした、」


帰り道の東海道線、大船駅まで行ってから湘南モノレールに乗り換える、


「まあ、気にすんな、」

「このお詫びは必ず、」


「なあ、そう言うのやめにしようぜ、」

「でも、」


学校を出てからこっち、相田は俺に謝ってばかりだった、


「俺はお前の事を結構気の合う友達だと思ってる、」

「有難う御座います、私も、そう在りたいと思います、」


「だったら、一寸ばかしやらかした位でいちいち迷惑とか思うな、」

「でも、親しき仲にも礼儀あり、ですから、」


「俺は敬語よりもタメ口の方が話しやすくて良いんだけどな、」

「善処します、」




ーーー

西鎌倉駅で下車、

改札に一人の女性が待っていた、……目付きの鋭いスーツ姿の女性、すらっと細身だがビシッと軸の通った姿勢、後ろでお団子にまとめた長髪の黒髪、見た目に歳の頃は三十路過ぎだが、実際の年齢は40を越えているらしい、相田家の上女中、橘さんである、


「こんばんわ、京本様、」

「こんばんわ、」


「わざわざお嬢様を送って頂きありがとう御座います、もしご都合が宜しい様でしたらご一緒に夕食など如何でしょうか?」


「いえ、今日は帰ります、」




ーーー

俺は相田美咲を橘さんに引き渡して、とんぼがえりで大船へ、そこから東海道線に乗り換えて、流石にこの時間でも下り列車は満員で、漸くチラホラと空き始めた藤沢駅辺り、動き出した電車で、


「あれ? 京本、くん?」


幻聴の様に何度も何度も繰り返し頭の中を反芻した、忘れ様の無いあの声が、

突然、俺を金縛りの様に痺れさせる、


振り返った俺の直ぐ後ろには、奇跡の様に西野敦子が立っていた、

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