9.家族でピクニックへ来たんだが・・・
すみません
投稿したと思ったら出来ていなかったので急遽アップします
大変申し訳ございませんでした
今日は休日ということもあり、親子三人で領内の小さな森へピクニックに訪れていた。
この森は町から程近くに位置し、魔物などもあまり出ないことから、領民たちの行楽スポットの一つとして有名である。
そのため、気候も穏やな休日である今日という日は正しくお出かけ日和な訳で、この森はその他の家族連れなどで大変賑わっていた。
今日の天気から思い付きでピクニックを催したガラッドは、事前の場所取りなどしておらず、現在、人に確保されていない日当たりの良い場所を求めて彷徨っている最中であった。
自分から提案しておきながらも、理想の場所を確保できず、あまつさえ妻と息子を場所探しに付き合わせてしまっている現状に、ガラッドは申し訳なさから頭を抱えたくなる。
そんなガラッドの内心とは裏腹に、二人はこのことを大いに楽しんでいた。
(久々の外出だ!庭や買い物の付き添いとかではない!
今この時を楽しまないでいつ楽しむっ!
むっ?あそこに飛んでる虫はなんだ?形状的には蝶なんだが・・・甲虫なのか?)
「母さん、あそこに飛んでる虫って何?」
「え?あぁ~、あれはレストンアゲハって言うの。
見た目以上にあの翅は硬くて、新人冒険者の防具の一部に使われたりするのよ」
「そうなの!?」
(防具に使われるほど硬いのかよ!
それにアゲハってことは蝶ってことでいいんだよな?)
「ふふっ。
虫に興味があるなんて、やっぱりフラッドも男の子ね」
(あれ何匹か捕まえれば自作防具とか出来るかもしれんな。
試しに2・3匹捕まえてくか?使えなくても売れそうだし)
「あれ捕まえてもいい?」
「いいけど、家に帰るときには逃がすのよ?」
(持ち込み禁止か?だったらいいか)
「ならいいや」
意外とあっさり興味をなくしたフラッドに拍子抜けするフラーナだったが、それらを含め、楽しそうに目を輝かせるフラッドの様子と、最愛の人との外出ということで満足感を感じていた。
「ガラッド、あそこあたりどうかしら?」
「ん?あそこか!そうだねそれじゃあそこにしようか。
ありがとう!昔からこういう時は君に助けられてばかりだな」
「そうね。いつもはキッチリこなすのに、偶にこういう風になるんだから。
でも、そんなところも含めて愛してるわ」
「フラーナ!私も愛s――」
「んっんん!」
「「ハッ」」
相も変わらず、唐突に展開される両親の桃色空間に咳ばらいをするフラッド。
ガラッドとフラーナが現実に戻ってから、三人は森を抜け、利用者たちがお互いに整備し合っているのか、程よい長さに切りそろえられた草地に腰を下ろし、今日の昼食を広げていく。
黒パンを薄く切り、この前行きつけの肉屋でサービスしてもらった兎のもも肉のスライスを軽くローストしたものと、新鮮な葉野菜を挟み込んだサンドイッチは、兎肉の肉汁が染み込み、少し硬い黒パンをやわらかくしていた。
兎肉も程よい火加減であったのか、外はパリッと中はジューシーと絵に描いたような食感で、兎肉独特の癖の少ない仄かな甘みに食べているにもかかわらず腹が減る始末である。
また、口に残るはずの脂っこさは一緒に挟まれている葉野菜により払拭され、飽きの来ない仕上がりとなっていた。
次に手を伸ばしたのはマッシュドポテト。
馬鈴薯を蒸し器で蒸かし、あがったそれをバター・岩塩と共に練りあげ、最後に刻んだイノシシのベーコンを加えたものである。
バターによる濃くのある甘みに岩塩の塩っ気がこれまた食を進ませる。
刻み入れられたベーコンは大きさこそ小さいけれど、確かな満足感を与えていた。
最後にデザートとして、フラーナがその場でリンゴを切り分けた。
そのリンゴは蜜の部分が少なく、とても甘かった。ひと噛みするたびに実に蓄えられた芳醇な果汁が口いっぱいに広がり、口へ運ぶ手が止まらなくなる。
それらを食べ終え充実感に浸るフラッドは、その満腹感と春の暖かな日差しにうたた寝を始めてしまう。
「・・・すぅ・・・」
「フラッドったら寝ちゃったわね?」
「そうだね。これだけおいしい君の料理を食べた後に、この暖かい気候だ。誰だって眠くなるよ。
ふぁ~ぁ…かく言う私も少し眠くなっているんだけどね。
それにしても相変わらず君の作る料理はおいしいよ!
またまた惚れ直してしまったよ」
「もう、ガラッドたら――」
そんなフラッドの様子に笑みを浮かべたのも束の間、桃色空間を展開し始める二人。
いつもそれを気づかせるフラッドは眠っているため二人のイチャラブを止めるものは誰もいない・・・いないのだ。
結果として、半刻後、フラッドが目覚めたときにも未だにそれは続いており、すでに手に負えない程の桃色空間を展開している両親を諦め、フラッドは周辺を探索することとした。
(二人ともあの調子だし、とりあえず珍しいものがないか探索してみるか。
とりあえず森の中に行くか~
ワンチャン、武器とか落ちてたりして)
思い付きから森のほうへと足を運ぶ。
(レストンアゲハだったか?結構飛んでるな~
母さんに内緒で何匹か捕まえてくか?)
森に入ると、目の前に10を超えるレストンアゲハの群れがいた。
先ほどフラーナに持ち帰れないと、遠回しに言われたばかりだが、バレなければどうということはないと言う精神で捕獲を考えるフラッド。
しかし、いざ捕獲しようとするとアゲハ達はひらひらと巧みに躱していく。
ならばと、枝葉にとまっているものを掴もうとしても寸でのところで飛び立ち躱される。
いくらそろりそろりと忍び寄っても、死角から飛び掛かっても、まるで全てを把握されているかのように逃げられる。
(えぇ~い、ひらひらと…このっ…いい加減つかまれよ!
これはアレか?俺に虫取りの才能がないのか?
前世だと普通に捕まえられたんだがな~
若しくはこいつらが・・・
どちらにせよここまで綺麗に躱すあたり、なかなかに侮れないな)
あまりにもあんまりな成果に、アゲハ達へ苛立ちを通り過ぎて称賛の意を抱き始めるフラッド。
もはやアゲハを捕まえて防具を作ることなど頭になく、どうすれば逃げられることなく捕まえられるかを考え始めたフラッドは、あることを思いついた。
(この際、魔句を使ってみるか?
たしか水を出すには・・・)
「クリエイトウォーター」
フラッドが唱えると中空に水が生成され、重力に従って落下していく。
その水が落ちきる前に、手を掬うような形にし、何割かを受け止める。
そして受け止めた水を、周囲へ自分を中心とした円の形にばら撒き魔句を唱える。
「フリーズウォーター」
ばら撒かれた水、掬いきれなかった水、それぞれが魔句に呼応して凍る。
なぜか躱さずに水を浴びた一部のレストンアゲハ達は翅や足、はたまた全身を凍らされ身動きが取れなくなる。
そうして、身動きの取れなくなったアゲハ達を満足そうに眺め、フラッドは掴もうと翅の凍った近くのアゲハへ手を伸ばす。
(魔力が抜けて少しだるいが、最初っからこうしとけばよかったなぁ。
しかし、なんでコイツら水を避けなかったんだ?
とりあえず細部がどうなってるかコイツで確認するか)
パリッ!
亀裂音が聞こえたと思いきや、フラッドの触れた翅は粉々に砕け散ってしまった。
「えっ!?」
(駆け出し冒険者の防具に使われるほどには硬いんじゃなかったけか?
それがこうも簡単に砕けるって・・・まじかぁ)
繊細なガラス細工のように粉々砕け散った翅をみて落胆するフラッド。
レストンアゲハの翅は確かに防具に使われるほどの硬度を持っているが、それはあくまで物理的な堅さだ。
魔力に対しては抵抗力が低く、魔句をくらうとあっさりと壊れてしまう。
だからこそ、魔力を伴う攻撃をする魔物と対峙しない駆け出し冒険者の防具に使われているわけだが、フラッドはそのことを知らない。
故に落胆したわけである。
しかし、いかに魔力抵抗力が低いと言っても初歩の魔句で、掴むだけで砕け散るようになるほどのものではない。
今回、砕け散った理由にはもう一つ、フラッドの得意属性が氷属性であるうえで、その適正が通常よりも飛びぬけていることにある。
もちろん、このことに関してもフラッドは知らなかった。
アゲハへの意欲をなくしたフラッドは、捕獲の疲れを感じ休憩がてら魔力操作の練習、つまり瞑想をしようと腰掛けられそうな石、倒木を求めて周囲を見回す。
5メートル先にちょうど良い切り株のある小広場を見つけた。
そこは切り株を中心とし、半径約3メートルの円形に拓けており、切り株は伝説の剣の刺さる台座のように陽光に照らされていた。
(――テレテレテレテレ テーテーテーテー♪ゴマダレ―・・・ってそっちは宝箱か。
とりあえずここで練習するか)
心の中で前世で嗜んだゲームのBGMを流しながら瞑想し始めるフラッド。
いつものように身体の中を廻る血液を意識しながら、同じように魔力を動かしていく。
徐々に徐々に循環させる速さを上げていき、魔力酔いをしないギリギリで維持する。
少しでも気を抜けば流れが乱れ、あの不快感が襲うと思い一心不乱になっているため、自分の肩や頭に、先ほどまで格闘していたレストンアゲハ達が留まっていることに気づかない。
そんな状態で少しして、彼に近づく存在があった。
お読みいただきありがとうございます
前書きでも触れております通り投稿ミスをしまして投稿が遅れました
こんな作品でもいつもお読みいただいている皆様には大変ご迷惑をお掛けしました
次話は私事で執筆が遅れていますが、鋭意執筆中ですので早ければ明日2/24遅くとも2/25には投稿する予定です
重ね重ね申し訳ございません。