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77.アルゲンとの決闘を終えたんだが(アルゲンside.)・・・

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 フラッド達が和気藹々と会話をしているなか、アルゲンは取り巻き達の手によって保健室へと運ばれていた。



「クソッ!

 あのフラッドとか言う平民はいったい何なんだ!

 平民の分際でアルゲン様に楯突いただけでなく、あんな不正までして!」


「い、いや。

 あの決闘に不正は、なかった。

 むしろ、あそこまで色々したのに勝てなかったんだ。

 あれ(フラッド)の実力は本物なんだ」


「デレク!

 元はと言えばお前があの時、アイツを失格にしなかったのが問題なんだ!

 お前さえちゃんとしていれば、アルゲン様が恥をかくこともなかったんだぞ!」



 デレクと呼ばれた少年は、その言葉に不快感をあらわにする。



「それを言うならマリオル、お前もだろ。

 予定だと、途中でお前が魔句を使って妨害するってことになっていたのに、実際はどうだ?

 お前は何もしないで、ただ見ていただけじゃないか!

 そもそも私は反対だったんだ!

 いくら平民だからと言っても、この学園に入学したんだぞ?それも首席で!

 それを説明し止めようとしても、アルゲン様もお前もコネだ不正だと真面に取り合いもしなかった。

 その結果がこれだ。

 アルゲン様には恩があるとは言え、せめて私の話を真剣に聞いて欲しかった」


「お前!アルゲン様を裏切るのか?

 今まで良くしてもらったって言うのに、アルゲン様が一度負けたぐらいで簡単に鞍替えしようってのはおかしいだろ!」


「なッ!?

 誰も裏切るなんて言ってないだろ!

 私はただ、自分の言葉にも耳を傾けて欲しかったと言っているのであってだな――」


「アルゲン様の決定が全てだろう!

 それに意見するなんて、裏切りと同じだ!」


「お前はアルゲン様に入れ込み過ぎだ!

 もう少し冷静に考えて――」


「うるさい!

 お前はいつもそうだ!

 事を終えてからあーだこーだと文句ばかり。

 そんなお前をアルゲン様は寛大な心を持って許し、今も傍においていただいてるんだぞ?

 なんでそれが解らないんだ!」



 互いに今回の結果に付随する責任を押し付けある二人。

 それは数分か、はたまた数十分か。

 とにかく長い時間二人が言い争いを続けていると、最低限の魔力が回復したのかベッドに横たわっていたアルゲンが声を漏らす。




「うぅぅん…」


「「アルゲン様!」」



 意外にも周囲の状況が見えていたのか、自らのリーダーであるアルゲンの声を拾ったデレクとマリオルは、声を一つにリーダーの名を呼ぶ。



「ぐ、うぅ…」

(私は、何を?

 ・・・ッハ!そうだ、あのいけ好かないフラッドとか言うやつと決闘して…そして負けたのか)


「アルゲン様、体調はどうですか?」


「なにか一つでもお辛いことがあれば俺たちに言ってください」


(誰だよ寝起きに耳元でうるさいなぁ!

 ・・・ってこいつらか)

「デレクにマリオルか。

 心配をかけたみたいだがだ、大丈夫だ。

 それで?

 私がアレに負けた後はどうなった?」


「そ、それは・・・」


「恐れながらお伝えしますと、会場は奴とアルゲン様の白熱した闘いに歓声を上げていました。

 当初は、諸先輩方が奴を多少なりとも非難する予定でしたが、アルゲン様の実力に心奪われたか、そう言ったことは無く、その後私とマリオルでアルゲン様をこちらへお連れした次第です。」


「あの時のアルゲン様を称える歓声をお聞かせしたかったほどですよ」


「そうか」

(ふーん。

 ほとんどがアイツへの称賛だったわけね。

 まぁ、あれだけ準備して負けたんだからしょうがないんだけど。

 それにしても何なのアイツの力!?

 こっちの世界で、()として生まれて、運がいいことに両親は伯爵家の人間。

 つまりは貴族。

 そうとなれば、私が主人公ってなるじゃない!

 主人公ってことは何のしがらみもなく可愛い女の子と色々出来るって思うじゃない!

 そ・れ・が!

 今までにできた親しい人間はこんな男ばっかりで、可愛いご令嬢なんかとは点で何もなし。

 それでも諦めずに学院入学を目指し、あの場所であの子(ポーラ)と運命の出会いをしたかと思えば、変な虫(フラッド)が付いてるじゃない!

 あの子はあの子で虫にぞっこんみたいだし、コレはもう私が奪ったうえで手取り足取り教えるしかないじゃない!)



 一言返事をしてから黙り込むアルゲンに不安を感じるデレクとマリオルだが、何が原因で怒りが爆発するか解らないため、うかつに声を掛けられないでいた。

 そんな二人の様子など眼中にないのだろう。

 アルゲンはフラッドに対する愚痴を内心募らせていく。



(本当になんなのアイツ!

 見た目はそこそこイケメンで、平民出身だけど家はそれなりに裕福、それにあんなにかわいい幼馴染が居る。

 それだけでなく、学院に首席入学。代表挨拶では新入社員みたいな挨拶決めちゃってさー。

 もう、主人公じゃん!

 私以上に主人公じゃん!

 認めたくないから決闘挑んだけど、結果はどう?

 念のためって色々仕込んだにも関わらず私は負けてるわけ。

 魔法…ってここでは魔句だったわね、がアレだけ出来て、白兵戦も問題なくできる。

 首席で入っている以上頭もいいだろうから・・・

 チートよ、チート!あんなチート野郎に勝てるわけないじゃない!

 私だって、生まれてから何もしてこなかったわけじゃないわ!

 勉強だって剣術だって一生懸命覚えようと努力したわよ!

 でも、レギーナちゃんやゴリラ(イワン)みたいに上には上が居た。

 それでも、満足に教育を受けられない平民出のアイツになら勝てると思ってた。

 はぁ、ポーラちゃんは諦めるしかないかぁ。

 あぁ~私にもポーラちゃんみたいな可愛い幼馴染が居ればなぁ~。

 これなら男としてじゃなく、前世と同じ()()生まれたほうがよかったかも。

 あっ、でもあの虫(フラッド)だけは許せる気にならないわ)



 窓越しに外の様子をぼんやりと見つめながら、そう考えるアルゲン。

 後半は願望の吐露となっていたが、結局フラッドの現在の待遇を思い出したのか当初程では無いにしても嫉妬を感じるアルゲンであった。



「な、なぁ。

 アルゲン様どうしちゃったんだ?

 さっき確認をしてきたかと思えば、黙り込んで外を見つめてる」


「アルゲン様も整理が付いてないんだろう。

 今回の決闘は色々準備をしていた手前、衝撃が大きいのだと思う。

 ここはそっとしておいて、私たちは帰った方がいいかもしれない。」


「そんなことできるか!

 今、俺たちへの指示を考えているかもしれないだろ!

 …それに、勝手に帰って後から怒られるのは面倒くさい」


「…まぁ、それもそうだな」



 未だ外を見続けるアルゲンにどうしたものかと、主人に聞こえないよう小さな声で話し合う二人。

 少し本音を零しつつも、二人は声が掛かるまでこの場で待つことを決める。

 なんとも言い難い空気のまま時は流れていくのであった。

 お読みいただきありがとうございます。今回は間に合いました。

 本話は珍しくアルゲンsideでのお話になりました。

 今後、タイミングを見てアルゲンの転生時の話などをしていければと考えております。

 メインの進展を期待されていた方々には申し訳ありません。

 次話はフラッド達へ戻る予定ですので、お待ちいただければと思います。


 さて、その次話の投稿ですが、8/1を予定しています。


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― 新着の感想 ―
[一言] そんだけなろう知識あるのにやってることが完全にかませ犬なのが笑えるわ
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