66.視線の意味が解ったんだが・・・
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相変わらず、貴族らしさの欠片もない様子でつかみ合いをしている二人を他所に、フラッドは先ほどから感じているクラスメイト達の視線について尋ねる。
「ルーク。
さっきからずっと気になってたんだけど、何でみんな俺たちの事を見てるのか解る?」
フラッドの質問に意外そうな顔でルークは答える。
「もしかして、ここに来るまでの間に何もなかったのかい?
それなら理由が解らないのも仕方がないとわ思うけど…」
「ファーミとの事を除けば至っていつも通りだけど…
その口ぶりからして、俺がらみの事だよね?」
ルークの返答を予期して、恐る恐ると言った様子で聞き返すフラッド。
そんなフラッドの様子を見て、ルークは頬を掻き、曖昧な笑みを浮かべる。
「まぁ、フラッド絡みと言えばそうなんだけど、正確にはフラッドとイワンなんだよ」
イワンへとちらりと視線を向けると、その視線に対してか周りの反応に対してか、やれやれと言った様子で首を振っていた。
「俺とイワン君っというと・・・あの決闘の事?」
フラッドの発言に頷く二人。
それを見て、視線の理由を理解したフラッドであったが、同時に此処まで注目を集めるものなのかという疑問が生じた。
「決闘が理由って言うのは解ったんだけど、こうも注目されるものなの?
決闘って、互いに納得が行かなかったときにやるって聞くし、それを考えると学院では多くはなくてもそれなりに行われてるものじゃないの?」
前世の小説などで得た知識から、それらしいことを話すフラッド。
しかし、ルークもイワンも、その考えに半分正解、半分間違いといった顔をする。
そんな二人の様子に、疑問が深まるフラッドに対し、それまで話の流れを黙って聞いていたポーラが閃いたと言った様子で不意に口を開く。
「っ!
きっと皆フラッドの格好良さに気が付いたから注目してるんだよ!
だって、フラッドの格好良さを知ってた私が、また思ったんだもん!
絶対そうだよ!」
自信満々に言い放つポーラに対し、四者四様な顔をするフラッド達。
その内の三人は砂糖の塊でも食べたかのような、それでいて可哀想なものを見るような目ポーラを見つめ、フラッドは突如発せられた賛辞とも好意ともとれる言葉に赤面する。
「フラッドの事に対してポーラがこういうことを言うのはいつもの事ですから今更気にしませんわ。
それは置いておくとして、実際はそうではありませんの」
頭でも痛いのか、こめかみを抑えながら話すティア。
そんなティアに、少し申し訳なさを感じつつフラッドは先を促す。
「それはさすがにわかってるよ。
それで?実際のところはどうなの?」
「実際のところは―――」
ティアが先を話そうとしたところでイワンが口をはさむ。
「それについては俺から説明する。
でだ、今回の件だが・・・
もちろん決闘については、さっきフラッドが言った通り学院内でもそれなりにやってるから注目はそう高くない。
けど、今回は違う」
「今回は?
まるで俺たちの決闘が特別みたいな言い方じゃないか」
「んあ?
なんだ、自覚なかったのか?
俺たちの決闘は特別だったんだぞ?
なんせ、学年主席の一人であるお前と、こういうのもなんだが将来が期待されている俺の決闘だぞ?
それも、入学してから早々の決闘だ。
特別注目も集まるだろ?」
イワンの説明に、当時自分たちの置かれていた状況を理解し始めたフラッドは、入学早々やってしまったと改めて悔いる。
(マジかぁ・・・
代表挨拶だけでもヤバいってのに・・・
そりゃそうだよな、首席で、あの挨拶で、ただでさえ変に注目されてるってのに、決闘なんてやりゃあな。
クラスのほとんどが知っているほど有名なイワンとの決闘で、魔句在りといえ勝っちまったわけで、その上見たこともない魔句を使ったとあっちゃ、そりゃこうなるわな)
「今にして思えば大概なことしてた」
「ようやく気が付いたみたいだね」
「フラッドのコレもいつもの事ですわ」
「それでもフラッドは格好いいんだよ!」
自覚したフラッドに、一人を除き呆れたような顔をする面々。
『レギーナ!今度こそ決着つけてやる!』
『ファーミの押し方はまだまだ』
『クッ!でも、今度という今度は!』
『前回も今回も、そしてこの先もファーミが私に勝つことは無い』
『言わせておけばぁ!
ぶっ飛ばす!』
『ム?
ちょっと強くなった?
でも、この程度なら…』
『ウギーー!』
五人とは別に、一部盛り上がりを見せているが、フラッドは我が身から滲む焦りから気付く様子がない。
他の面々も、気にしないようにしているのか目を向ける素振りすらない。
「フラッド!これはチャンスだよ!
フラッドの格好良さを学院中に広めるの!」
再度口を開いたかと思えば、フラッドの思惑とは見当違いなことを口走るポーラ。
これには、名指しされた当人は言わずもがな、この場に集う三人も面食らった様子である。
「ポーラ?
恐らくですけど、フラッドは変に目立ちたくないと思っていると思いますわ」
「そうだね。
僕も今でなら慣れてはいると言っても、最初の頃とかはこういうことは避けたいと思っていたし」
「俺もある程度なら気にしねぇが、こうも注目されると、何かと面倒くさいからな」
「ポーラさんや、できれば俺はこれ以上悪目立ちはしたくないから・・・その、ね?
ご容赦いただけないでしょうか?」
四人が四人、ポーラの謎のやる気を諫めようと努めるも効果は認められず、ポーラはいかにしてフラッドを輝かせようかと目を爛々と輝かせている。
(あー、これはダメな奴だわ。
こうなるとポーラは止まんねぇし…どうすっかなあ)
ポーラの様子に、過去を思い出し諦めの念を浮かべるフラッド。
後ろで今なお続いている闘いを置き去りに、この後何が起きてもいいようにとイメージトレーニングを始めるフラッドであった。
お読みいただきありがとうございます。
次話の投稿は4/26を予定しています。
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