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65.ファーミが貴族だったんだが・・・

4/12

 二人がファーミや記章の事で驚愕を覚えてから少し、三人は自クラスであるAクラスに到着する。

 廊下からでも聞こえてくる賑やかな声は、ファーミが扉を開けると同時により一層大きなものとなり、三人の耳朶を打つ。



(毎回扉閉まってるけど、律儀だよなぁ~

 前世じゃ教室の戸なんか開けっ放しだったぞ?

 ・・・にしても、凄い盛り上がってるけど、何かあったのか?)



 中から聞こえてくる賑わいに、何かイベントでもあるのかと考えるフラッドだが、平然とした様子で教室へ入るファーミを見て、考えを横に置き、それに続く。

 一方ポーラは、賑わいの原因を知っているのか、何故か嬉しさの混じったドヤ顔を浮かべながら続く。

 三人が入ると、それまで聞こえていた声が小さくなったかと思えば、教室に居るほぼ全員と言っていい視線が飛んでくる。

 その視線に、つい最近も同じようなことがあったと思うフラッド。

 ファーミとポーラはと言えば、一人は変わらずに平然と、もう一人は満面のドヤ顔を披露していた。



(この視線が集まる感じ、初日にもあったよな?

 んでもって、ファーミは全くもって気にしてない。

 で、ポーラはと言えば・・・

 ポーラさんや、そのドヤ顔は何なんですかねぇ?

 クラスに入る前もそうだったけど、今はより酷いぞ?

 なんか知ってるんなら教えてくれてもいいと思うんだが?)



 ポーラに対しフラッドがジト目を送るも、彼女はムフンと胸を張り、ドヤ顔のまま見返してくるばかりである。

 そんな応酬をしていると、三人にここ数日で聞き慣れた声が掛かる。



「おはようフラッド、ポーラさん。

 今日はファーミ嬢も一緒なんだね」


「また女性が増えてますわ」


「ダチが一人増えたんだから、そこは喜ぶべきだろ」


「それでもファーミはイカr・・・特殊?だから」




 声の主はルーク達であった。

 ルークはいつもの優しい笑顔を浮かべ、ティアはフラッドを見てため息をついている。

 そんなティアに疑問を口にするイワンと、ファーミについて意見するレギーナ。

 いつもの二人に更に二人加わったその光景に、フラッドはグループが大きくなったなと思う。



(もしかして、みんなファーミの事を知っている?

 と言うことは・・・いや、むしろあんな性格だから有名なのか?)


「ペイルロード様にセフィラムにボロノフ、おはようございます」


「そのファーミ嬢、前から言っているけど僕の事は気軽にルークと呼んでくれて構わないよ。

 それが難しいにしても、せめて家名で呼ぶのはよしてくれないかな?」


「ルーク、ファーミ様に何を言っても無駄だと思いますわ」


「俺も家の名前で呼ばれんのはむず痒いっていうかなぁ」


「皆、ファーミは頭がおかしいから諦めて」



 やれやれと言った様子で言うレギーナに対し、ファーミは苛立ちを隠そうともせずにつっかかる。



「レギーナ?さっきから黙って聞いていれば・・・

 アンタ、私の事なんかいバカにすれば気が済むのかしら?

 前から言ってるわよね?

 私の、何処が、イカれてるって、言うの?

 私はいたって正常よ!

 今日と言う今日は許さないわよ!?」


「いいよ。

 いつも見たいにしてあげる」



 先程から散々なことを言っていたレギーナに対し、眦を上げズンズンと詰め寄るファーミ。

 そんなファーミとレギーナのやり取りにハラハラとするフラッドとポーラだが、二人を除く全員はいつもの事かと言った様子で仲裁にすら入らない。



「ルーク、あの二人止めなくていいの?」


「そ、そうだよ!

 ファーミちゃんってば、さっきも食堂で――」


「フフッ、二人とも落ちついて。

 二人のアレはいつもの事だから。

 僕やティア、イワンは彼女にああして絡まれるのが嫌だから口にしないけど、レギーナはその点バッサリ言う方だからね」


「まぁ、物心覚えたときからあんなだから気にしなくていいぞ?

 それに、今のところレギーナの全戦全勝だ。

 だからこそ、あんな風に出来るんだろうけどなって思うが、アイツに関してはそんなこと関係ねぇか」


「社交界でもああしているから、どうにかして欲しいとは思う所ですわ」



 フラッドとポーラの訴えに対し、三人は彼女たちの今までの関係を話し、それ故に心配ないと伝えてくる。

 三人の話を聞いても落ち着かないことに変わりがない二人は、未だにハラハラドキドキとした様子で見守っているが、ふとフラッドはあることに気が付く。



(ん?物心ついた時からとか、社交界でって・・・

 もしかしてファーミって貴族なのか?)

「もしかしてファーミって貴族だったりする?」



 フラッドの疑問に対し、三人は驚いたような顔で互いを見合うのも一瞬、色々と思い出したのか納得したような顔になる。



「うん。もしかしなくてもファーミ嬢は貴族だよ。

 一応グーラ子爵家の令嬢なんだ」


「フラッドと・・・ポーラもね。

 二人が彼女の素性に気付かないのも仕方がないと思いますわ。

 どうせ、初めからあの感じで貴族らしいところなんて魅せなかったでしょうし」


「ほんとの本当に、ファーミちゃんって貴族様なの!?」


「そうですわ」


「まぁ、アレが貴族らしくないってのは言えてるけどな。

 俺が言えたことでもねぇか!」


(マジかぁ・・・

 まさかそっちだったかぁ。

 キャラが濃いって言うか、なんて言うか・・・はぁ)

「そうなってくると、俺たち結構無礼なことを・・・」


「何を言ってますの?

 今更そのようなこと気にするだけ無駄だと思いますけど?」


「それにここは学院なんだ。

 むしろこの場においては変に敬うことの方がおかしいんだよ」


「ま、ルーク様の言っている通り、ここは学院だ。

 だから敬語やら何やらなんて気にしなくていいんだよ。

 それに、アイツ(ファーミ)もそこらへん気にしない奴だから安心しろ」


「皆がそう言うなら・・・」


「・・・ファーミちゃんが貴族…」



 五人の会話に花が咲いている最中、そのすぐ横合いではファーミとレギーナによる闘いが繰り広げられているのだが、もはやそれを止める者はこの場に一人もいないのであった。

 

 お読みいただきありがとうございます。

 次話については4/19までに投稿します。

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