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57.ザック達の手紙を読んだんだが・・・

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 両親、主に母からの手紙を読み終えたフラッドは、次いでザック達からの手紙を読もうと手を伸ばすも、わずかに感じるのどの渇きを癒す為、手近に置いてあるコップへ水を注ぐ。



「ふぅ・・・」



 注がれた水を飲み干し人心地ついたフラッドは、早速とばかりにもう一方の手紙へと目を向ける。

 それは四種類の文字で書かれており、四人がそれぞれ内容を書いたことが窺える。

 最初は歪ながらも一生懸命に描いたことが解る文字から始まっており、自身の持つ印象からザックが書き記したものだろうと予測を立てつつ読み始める。



『ようフラッド!

 そっちについてからはどんな調子だ?

 お前とポーラがそっちに行ってから俺たちも色々あったんだぜ?-』



 いつもの調子で書かれたそれは、予想に違わずザックが記したものとわかる。



(やっぱりザックからか・・・

 にしても、アイツら文字が書けるようになってるって結構努力したんだな)



 識字率の低い当世で、手紙を書けるほどに文字を学んだ四人に相当な努力をしたのだろうと想像するフラッドは、この後記されているであろう「色々」に期待しつつ先へと読み進める。

 そのほとんどが他愛のない日常の出来事を面白おかしく記したものであったが、ザックの書いた文章の後半で目を見開くこととなる。



『――ってことで色々あったんだけどよ、その中で特にお前に伝えたいのが・・・俺らついにコボルトを討伐したんだぜ!』



 コボルトを討伐したというフレーズに、フラッドは母からの妊娠報告以上の衝撃を覚えつつ、この世界の亜人について思い出していた。

 フラッドが二度目の生を受けたこの世界には、前世のファンタジー小説でおなじみのゴブリンやコボルトと言った種族が生息しているのだが、一点、前世のそれとは違うものがあった。

 事実それらは誰しもが思い浮かべる「魔物」としての認識があるのだが、それとは別に人類種と共存している「亜人」としての認識があるという点である。

 これだけを聞くと、魔物としてか亜人としてかの線引きが出来ないのではないかと思うのが基本だが、これら二点には明確な違いがあった。

 それは、そもそもの存在が違うことであった。

 これを聞き、さらに疑問が深まると思う、事実フラッドもその立場であった。

 しかし、その「存在の違い」と言うものを認識することで大きな納得を覚えたのだ。

 両者はそれぞれ生殖し増え、容姿も大きな違いはない。

 また、独自の文化・言語を持つという意味でも違いはないのだが、三点違いがある。

 一つ目は、その性質。

 魔物と分類されるそれらは、いずれも獰猛な性格をしており、他種族を見かけるとどんなに友好的な態度を示しても掛かってくる。

 逆に「亜人」分類される者達は、人類種と同様に多少の善悪の違いはあれど比較的温厚なのである。

 つまり一般的に認識される人のそれと変わらない性質なのである。

 稀に、魔物側がそれを理解し亜人を装って接触してくることがあるが、それも次にあげるものでバレるのが大概である。

 二つ目は容姿である。

 基本的な姿かたちは一部を除き差は少なく、一見わかりずらいのだが、一つ明確な違いがある。

 それは瞳の色である。

 亜人側はそれまでの交配による遺伝等で様々な色の瞳を有するが、魔物側のそれはどれだけ多様な交配を重ねようと単一なのである。

 魔物側の瞳は、ほの暗く怖気を感じるような深紅の瞳なのである。

 これに一つの例外はなく、肌の色や毛並みなどが特殊なものであったとしても、その瞳は深紅ただ一つなのである。

 その逆もまたしかりで、未だ確認されていないだけかもしれないが、亜人側でも深紅の瞳の者はいないのである。

 そして三つ目は、魔石の有無である。

 これは個体による違いや、そもそも対象の命が尽きてからでないと確認できないなど諸々とあるのだが、基本的に魔物に分類されるそれらは、死した後魔石を残すことがある。

 これは個体によって変わるところがあるが、魔物に分類される者達は、討伐後魔石を残すことがあるのだ。

 逆に、亜人に分類される者は、どれだけの強者であっても死後魔石を確認されたことがないため、最終的な確認と言った意味でこれが用いられることがある。

 過去に、魔石が魔物と亜人を分けるキーなのではと考えられ、産出された魔石を亜人に移植するといった実験が行われたそうだが、その非人道的な行いを理由に禁止・討滅されたことでその結果は未だに不明なのである。

 その他にも、ゴブリンやオークなどの一部魔物には雌が産まれないことや、亜人側の見た目が魔物のそれと違い人種に近かったりなど違いがあるものの、基本的にはこれら三点が魔物か亜人かの区別に用いられているのである。

 それを学んだフラッドは、ゴブリンを例にとり、男は殺せ女は犯せなヒャッハー系日本産ゴブリンと、妖精ポジションの西洋産ゴブリンがいるんだなと簡単に考えたのである。

 そんなことを思い出しながらも、フラッドは人型の魔物の恐ろしさを考えつつ、それを討伐したザック達の成長に内心驚くのであった。



(おいおい、コボルトって一気に進んだなぁ

 人型だから武器を使えるってだけで厄介なのに、その上あの毛皮だろ?

 魔句ならともかく剣とかだと刃が通りにくいだろ・・・

 それを倒すって…俺もおちおち遊んでられないな)



 ザックの文章を一通り読み終えたフラッドは、帰省時に差を見せつけられまいと鍛錬に励むことを決意しつつ、次の文章へと視線をすべらせていくのだった。

 





 お読みいただきありがとうございます。

 お待たせいたしました。

 一周空けて、説明会。そしていまだに続く手紙編・・・申し訳ありません!

 当初の予定では、本話で手紙を終わらせるつもりだったのですが亜人と魔物の違いの説明で、想定以上に文章を食ったので分割させていただきます。

 おそらく次話で手紙を終えることが出来ると思いますが、今しばらくお付き合いいただければと思います。


 次話の投稿については2/23を予定させていただきますので、それまでお待ちください。

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