46.身体測定が始まるんだが・・・
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全員の魔力測定が終わると、マーシーは何人かの生徒を伴って魔宝玉含む一式を片付け始めた。
「ルーク、この後体力測定?みたいだけど、正直やる意味あるのかな?」
「と言うと?」
突然フラッドから飛んできた投げかけに真意を問うルーク。
そんなルークの問いに、フラッドは意外そうな表情を浮かべると、数瞬の後、口を開く。
「いやさ、入学試験の時に適性検査とか何とか、名前は違うけど同じようなことをやっただろ?」
「あぁ、確かにやったね」
フラッドに言われ当時のことを思い出したルークは、フラッドが言わんとしていることを理解し、同様に疑問を覚え眉間に皺を寄せる。
「もう実施して、それを基に各クラスに割り振ってるんだから、改めてやる必要があるか疑問に思うだろ?」
「そうだね。魔力測定については、試験項目になかったから解るんだけどね・・・」
「やっぱりルークでも解らないか」
ルークも学院側の思惑が解らず二人して憶測に頭を悩ませていると、片付けを終えたマーシー達が戻ってきていた。
そのマーシーは二人の会話を途中から聞いていたのか、手伝いを頼んだ生徒たちが列に戻るのを確認すると、全体へ主旨を説明し始める。
「はい、魔宝玉の片付けも終わったから、次は身体能力の測定に移るわよ。
皆も試験でやったのにと疑問に感じているとは思うけれど、アレはあくまで入学基準に達しているかどうかの簡易的なもの。
これからやるのは、個々の詳しい状態を確認して、個人に見合ったレベルの授業をする為のものなの、だから試験の時以上に全力を出すように」
(個人に見合った授業?
つまりマンツーマンってことか?)
「先生!それって一人一人に指導員が付くってことですか?」
フラッドの確認に、マーシーは説明を聞いていなかった生徒を見るような目でフラッドを見返したのだが、一拍の間が空くと何かを思い出したのか焦ったように答える。
「…私としたことが説明するのを忘れていたわ。
ゴホンッ。
これは後で説明しようと思っていたのだけど、今回の測定は今後行われる実技指導の割り振りを決めるもので、実技の時間はその能力に応じた稽古場で受けてもらう形になるの」
「それによってクラスに変動が生じることはあるんですか?」
咳払いの前に何を呟いたのかは誰も解らなかったが、その後に続いた内容に懸念を感じた生徒が質問を投げかける。
「これによるクラス移動はないわ。
これは個人の実力を伸ばす為のもの。
だから、その中での成績でそう言ったことが生じることはあっても、どのレベルに所属したからと言った理由で生じることは無いのよ。
Aクラスで特待生だから優秀と言っても、それはあくまで様々な分野の試験を受け、その平均が上位に入ると言うだけで、一人ひとり得意とする分野は違うわ。
だから、学院は一つの分野だけで評価などは絶対にしないし、させない。
優秀な人材を育成することに重きを置いているからよ。
実技に関しては、個々人の技量差が特に激しいから、成長の芽を摘まないためにも、クラスでなく、技量に応じて指導をするようにしているのよ。」
マーシーによる学院の方針を交えた説明に聞き入っていた生徒たちは、気合の入った表情を浮かべたり、感心したりと各々様々な表情を浮かべていた。
(通常クラスの移動はないとしても、実技クラスの移動はあるんかね?)
マーシーの説明に新たな疑問がわいたフラッドは、それを解消するために質問をする。
「実技クラス内での異動ってあるんですか?」
質問のタイミングが丁度良かったのか、マーシーはこれ幸いと説明を再開する。
「フラッド君の質問にある実技クラスの異動だけれど、あるわ。
実技クラスは個人の技量によって割り振られるものだから、それが伸びれば上のクラスに上がれるわ。
実技クラスが上がれば、成績に大きく影響を与えるのはもちろん、貴方達自身もより高度な指導を受けられるようになるわ。
上位クラスに上がるのは簡単ではないから、適切な指導、評価を受ける為にも、全力を出して測定に当たるよう」
そう言ってマーシーが2、3歩身を引くと、稽古場の出入り口から人影が現れる。
それは、筋骨隆々とした大男で、顔には何かに引き裂かれたのか右眉から左の頬にかけて大きな傷跡がある。
ゴワゴワと硬さを訴えかけてくる烏羽色の髪とその容貌が合わさって、手負いのクマと対面しているような錯覚に陥るほどであった。
「マーシー、遅ぇぞ。
説明が長すぎる。てかなんでそれを今説明してんだか」
腹の底に響くような野太い声が響くと、生徒たちは言い知れない圧迫感を感じ、身を硬くする。
そんな中、マーシーは気にした風もなく熊のようなその男へブーブーと文句を言う。
「いいじゃない、私がいつ説明しようが関係ないでしょ?
とにかく、今から測定を始めるんだから頼むわよ?
この人が今回貴方達の能力を見極めるアイザック先生よ。
実技Aクラスの指導官をしてるから、安心して全力を出していいわよ」
マーシーの紹介を受けたアイザックは、やれやれと頭を掻きながら生徒たちの前に立つ。
「…ったく、お前は良いだろうが、待ってる俺の身にもなれってんだよ。
俺が今回お前らの能力判定をするアイザック・シュナイダーだ。
あいつが言った通り実技Aクラスの担当をしている。
化け物みたいに強くなければ何とかなるから、全力で掛かってこい」
そう言うと、こちらに来る前に取っていたのか、稽古用の大剣を構えるアイザック。
事前に指示をされ、稽古装備に身を包んでいた生徒たちは、最初の一人を除き、移動を開始する。
全員が移動を終え、最初の生徒も指定線で構えると、開始の合図を待った。
いよいよ能力測定の為の模擬戦が始まるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ようやっと能力測定(実技)が始まるのですが、正直未だに体力測定やら能力測定やら代名詞をどうしようか悩んでいる次第です(笑)
技量測定で統一してしまった方が良いのですかね?
閑話休題
さて、ようやく始まると言っておいてこの体たらく、誠に申し訳ございません。
内容を考えている内に、説明やら新キャラやらいろいろと出てきてしまった結果がこれです(汗)
次話こそはフラッド含む生徒たちの模擬戦をと思っていますので今しばらくお付き合いください。
その次話の投稿予定ですが11/24を予定しています。
ただ、ここ最近急な仕事やら私用やらがありまして、もしかしたら1日2日遅れる可能性があります。
もし24日中に投稿がなかったら、そう言った状態になっているということなので、ご理解のほどをお願いします。
その際余裕があれば、(普段使っていない)活動報告にその旨を記載するつもりですのでよろしくお願いします。




