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4.隣人と幼馴染

 どこかくぐもって聞こえる笑い声と、傍から聞こえる小さな寝息にフラッドが目を覚ましたのは、日が傾きそろそろ夜の帳が降りそうな夕方だった。



「んみゅぅ・・・はぅあぁ」

(くうぅぅ・・・よく寝たぁ)



 そう彼が呟くと、何かが彼のことを押す。

 未だ夢見心地でいるフラッドは、押されたことに若干の煩わしさを感じその何かを押し返す。すると、モチモチとしたまるでマシュマロを突いているかのような柔らかな感触が返ってくる。

 その柔らかな感触を堪能しようと突き続けると、フラッドを押したその柔らかな何かは煩わしそうに彼の手を押しのけた。

 そこでようやく意識が覚醒したフラッドは、己を押した柔らかな存在を確認しようとその方へと振り向いた。

 フラッドが振り向いた先には、絹のようにサラサラとした銀髪と自然と周りを優しい気持ちにさせる可愛さを持つ見知らぬ赤子が寝ていたのである。



「んニャッ!?あびゅびバッ!?」

(誰っ!?てかなんで一緒に寝てんの!?)



 あまりにも予想外な展開に思わず驚愕の声を挙げるフラッド。

 そして、その声を間近で聞き目を覚ます赤子。



「あうぅ?……スンッスンッ…ビィエエェェェ――!」


「みゃっ!?まじゅびあ!

 あうぅ…うみゅぅ…ビエエェ――!」

(ちょっ!?泣くな泣くな!

 どうすればいい…どうしたら泣き止むんだ…

 母さ~んプリーズヘルプミー!)



 そんな二人の赤子の泣き声を聞きつけて、慌てた様子で二人の女性が部屋へと飛び込んできた。

 一人はフラッドの母親であるフラーナ。

 もう一人は見知らぬ女性。しかしあの赤子と同じ、絹のようにサラサラとした銀髪に二人とも右目尻に小さなほくろがあるという共通点からあの赤子の母親だと窺えるだろう。

 二人は、いの一番に我が子を抱き上げあやすのであった。



「フラッドごめんね。寂しい思いさせちゃってごめんね。

 お母さんはここにいるから安心していいのよ?」


「まぅ、みゃみまっ!…あぅま」

(いや、そうじゃなくてあの赤ん坊が泣き止まないから

 ・・・まぁいっか。)


「ポーラどうしたの?よしよし、ママはここに居るから泣き止んで?ねっ?」


「ビィエェ――…グスンッ グスンッ」


「エリーゼ、私言ったわよね?

 子供たちも一緒に居間に居たほうが良いって」


「確かに言ってたけど…ポーラは普段あまり泣かないのよ?

 それにフラーナだってフラッド君もあまり泣かないからって、最終的に許可してたじゃない!」


「はぁ…とりあえず居間に行きましょう?」


「むうぅ…わかったわよ。でもなんか釈然としない!」


 そんな会話をしながら二組の母子は夫たちの待つ居間へと歩を進める。

 日も沈み、しんしんと冷える冬の夜は母子達の身体を冷やすには充分過ぎるものだった。


 

「あぅっあっあっヘクチッ!ま゛ぅ゛ぅ」 ブルルッ

(うぇくしょい!うぅ~寒ぃ~。

 かなり薪使ってるって言ってたけど、この寒さなら仕方ないよな。今すぐいつもの部屋に戻りたい)


「いけない!居間に急ぎましょ!このままじゃフラッドも

 ポーラちゃんも風邪ひいちゃうわ!

 フラッド、もうちょっと我慢しててね。お父さんたちの居る居間は暖かいからそれまでの辛抱よ」


「フラーナ、この寒さは子供たちだけじゃなくてうち等も

 風邪ひくよ」


「グスンッ ズビビッ ま゛あ゛ぁ?」


「もう、ポーラちゃんも辛そうなんだから軽口叩いてないで早く行くわよ?」



 エリーゼはそう言われると、投げやりに返事をした。



「はいはいわかりましたよーだ」



 他愛もない会話をしながら、ようやく暖かな居間へと到着する。するとガラッドともう一人、鈍色の短髪で橙色の瞳を持つ、厳つい相貌の男がそれぞれの妻子へと話しかけた。



「フラーナ戻ったか、フラッド達は大丈夫そうかい?」


「あぶぅ」

(寒かったぁ~。うちって意外と広いんだなぁ)


「ええ。目が覚めたら私たちが居なくて、寂しくて泣いてたみたい。

 御覧の通り、私たちが来たら泣き止んだわよ?」


「そうだったのか。フラッド、寂しい思いをさせてごめんな」


「あまぁ?」

(いや、別にそう言うわけではないんだが・・・

 にしてもさっきから隣がうるせぇ!)



 隣から聞こえる涙交じりの声を聴けば、フラッドでなくともそう思うことだろう。



「ボーラ゛あ゛ぁ゛~寂じがったろぉ~

 近く(ぢがぐ)に居れなぐてごべんなぁ゛~

 こんなパパを許じでくれるが?」


「もう、ダリウス大袈裟!

 フラーナ達はあんなに落ち着いてるのに恥ずかしいったらないな~。

 そんなに心配するならうちの心配もしてよ~」


「そうは言うがエリーゼ、お前なら賊の一人や二人問題ないだろ?

 だがポーラは違う!

 ならお前よりポーラを心配するのは当たり前だろう?」



 キョトンとした様子でダリウスと呼ばれた男が返すと、その意味が解りながらも自分の心配をしない夫へ苛立ちと少しの諦めをぶつけるのだった。



「そりゃぁ賊の一人や二人はちょちょいのチョイよ?

 それでも自分の妻なんだから少しは心配しなさいよ!

 はぁ・・・なんでコイツと結婚なんかしたんだろ」


「キャッキャッ!」



 そんなエリーゼ達母子と、ダリウスという男の騒がしいやり取りに、フラッドはただただ呆れてしまう。



(なんだ?あのダリウスとか言うおっさん。

 おそらく、あのポーラとか言う赤ん坊の父親だとは思うが、鬱陶しいほど親バカだろ。

 普通、赤ん坊が夜泣き?したぐらいでああまでなるか?

 てか賊の一人や二人って・・・何者だよあの女)


「相変わらずダリウスさんは親バカを披露してるわね?」


「そう言ってあげないでくれ。彼は仕事中はとても厳格で真面目なんだ。

 あれぐらい許してあげなよ」


「別に責めているわけじゃないのよ?

 ただ、部下の人たちが見たら驚愕しそうだなと思ってるだけ」


「ははっ。まあ確かに彼の部下がこの様子を見たら心底驚くだろうね。」


「むむっ!?ガラッドにフラーナ!

 先ほどからこちらを見ながらコソコソと、何か言いたいことがあるならハッキリと言え!」


「フフッ見つかっちゃったみたい」


「みたいだね」



 二人の会話を耳にしたのか、ダリウスが語気を強めに話しかけた。二人は秘密の宝物がバレた子供のような雰囲気を出しながら、フラッドを連れ賑やかな会話に参加するのだった。



「はむっ」

(いい加減説明が欲しいのだが?)


 お読みいただきありがとうございます。

 皆様お気づきかとは思いますが、前話から地の文を一人称ではなく第三者の視点で書いています。これは、私の一つの試みなので今後何話か、はたまたずっと続くかもしれません。読者の皆様には大変ご迷惑をお掛けしますがご理解のほどお願い申し上げます。

 こうしたら読みやすい、こうしたらわかりやすい等の意見があれば是非コメント等でご教授ください。

 併せまして、誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですのでよろしくお願いします。


次話は1/20を予定しています


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