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34.あのお姉さんと再会したんだが・・・

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 ホーンラビット討伐の依頼以降、フラッド達は数々の依頼を熟していた。

 ジャイアントラットの討伐などの簡単な討伐依頼だけでなく、落とし物やペットなどの捜索依頼、薬草などの納品依頼など、街やその周辺を東奔西走していた。

 そんな折、以前の領主謁見で知り合った男爵令嬢ことティアからの誘いを受け、現在領主館でお茶をしていた。



「貴方達がフラッドやポーラと一緒に冒険をしているザック、ローナ、エルロス、イオですのね?」


「そうだぜ!俺g――ッ!?」



 いつもの調子で名乗りを上げようとしたザックの口を、イオが咄嗟に塞ぐと、同様に口を塞ごうと動いていたエルロスが代わりに答える。



「ええ、僕がエルロスで、そこで暴れているのがザック、それを抑えているのがイオです。

 そして、言わずもがなですが、そこでお茶を飲んでいるのがローナです。

 大変お見苦しいところをお見せしてしまいましたが、どうかご容赦のほどを・・・」



 そう言ってエルロスが深々と頭を下げるとそれに続くようにイオも頭を下げる。

 するとイオの力が弱くなったのか、先ほどからもがいていたザックが脱出した。



「――プハッ!

 何すんだよ!」


「ザック、いいから黙ってくれ!

 このままじゃ僕たちは不敬罪で打ち首に・・・」


「そうだよ。だからザック、お願いだから静かに――」


「ふふふっ、そんなことはしませんわ。

 むしろ何時ものように振舞っていただきたいほどですもの。

 こうなることが解っていて黙っていたのかしら?

 フラッド?ポーラ?」


「「そんなことはないよ?」」



 ティアに話を振られた二人は、明らかに嘘をついているのがまるわかりな素振りでそう答える。



「まったく、趣味が悪くてよ?

 それこそ、あなたたちの方が不敬にあたると思いますわ。

 ただ、私もソレを期待していたからいいのですけれど」



 そう言って笑いながらティアは冒険譚について聞き始めた。





「やはり、同じ内容でも視点が違うだけで別の物語のように面白いですわ!

 それにここ最近も色々と熟しているようですし、是非そのお話も聞かせて欲しいですわ」


(ティアも良く飽きないなぁ。

 視点が違うと言っても結局は同じことだから何人かに聞くうちに飽きるだろ。

 何か理由付けて部屋から出るかね)

「ティア、ちょっとお手洗いを借りてもいいかな?」


「それでしたら部屋を出て左へ進んでいただくと、突き当りにありますわ。

 こんなことを言うのは淑女として許されたことではないと思いますが、なるべく早く戻ってほしいですわ。

 貴方の話も聴きたいですから」


「善処するよ」



 色々な話を聞きたいティアのお願いに苦笑いを浮かべたフラッドは、ティアに教わった通りに進みトイレに入る。

 用を足したフラッドが扉を開けると、丁度入ろうと手を伸ばしていた女性が目に映る。



「うわっ!すみません!」

(ん?どこかで見たような・・・)


「こちらこそごめんなさいってフラッド君じゃない!」


(あぁ、あの時のナイスバディさんか!

 今日は服を着ているとは言え、これはこれで中々エロい)


「お嬢様がご友人を呼んだって言ってたけど、まさかフラッド君だったとはね。お姉さんビックリだよ!」


「え~と、この間はありがとうございました。

 それでお姉さんはなんでここに?」


「うんうん。お礼が言えて偉い!

 それで私がここに居る理由だね?

 それは私がここで働いているからだよ!」


(となると、魔句師団的な奴に所属してるってことか?

 母さんも俺を身籠る前はそこに居たって言うし、この人

 の腕からするに・・・)

「もしかして、魔句師団に所属されているとか?」


「その通り!

 なんとそこで団長をやっているのだ!

 魔句師団と言っても私を入れて10人ぐらいしか居ないけどね。

 それでもここら周辺では多い方なんだぞ?

 ちなみに前の団長は君のお母さんであるフラーナさんだ!」


 どこか誇らしげに胸を張る女性。おかげで唯でさえ自己主張の激しい双丘が前面に押し出され詳細な形状を布越しに伝えてくる。



(まさか母さんが前団長だったとはな。

 領主とも面識があるようだからそれなりに上の地位に居たのは解っていたが、まさか管理職クラスとはな。

 それとは別にナイスバディさんよ、胸を張らんでくれ。

 この世界ブラとかがないせいで、ポッチやら形状やら目のやり場に困るんだぞ!

 落ち着けマイサン!触れたわけじゃない!

 元気になるにはまだ早いぞ!)


「相変わらず隠せてないぞ?フラッド君。

 まぁお姉さんは気にしないけど、一緒に居たあの子には同じようにしちゃダメだぞ?」


「み、見てないですよ?

 それより、いい加減にお姉さんの名前教えてくれませんか?」


「ふはは、そう言うことにしておくよ。

 私は君の事すごく気に入ってるから見るだけじゃなくて触ってもらっても構わないと思ってるけどね。

 で、名前だっけ?お姉さんはイリーナって言うの。

 だから、今後はイリーナお姉さんって呼んでね?」



 悪戯っぽく笑うイリーナに、普段なら冷めた視線を送るフラッドが、その容姿や動作によって揺れる双丘などの色っぽさに当てられ惚けてしまう。



「えと、とりあえずイリーナさんでいいですか?」


「む~そこはノリが悪いな君は。

 まあそれでいいよ。

 正直呼ばれ方に拘りないからね。

 それとさ、私がこの前、こうグイグイってやったやつフ

 ラーナさんには伝えないで欲しいかな~って」


(この流れはこの人、母さんに頭が上がらない奴だな?)

「え?どうしてですか?」


「それはその~あの人怒らせるとシャレにならないって言うか、地獄を見るって言うか、ね?

 息子にちょっと悪戯したとかなると絶対に怒るから、言わないで欲しいな~って」


「言わない代わりに、魔句を色々教えてくれるならいいですよ?」


「え?フラーナさんに教わってるんじゃないの?」



 フラッドの求める対価に疑問を浮かべるイリーナ。

 それに対してフラッドは現状について語る。



「教えてもらえるにはもらえるんですが、まだ早いとかこの魔句が完璧に出来るようになってからとか、色々理由を付けて教えてくれないんです」


「あ~あの人昔っから魔句に対しては完璧主義なところあったもんな~。

 そう言うことならお姉さんに任せなさい!

 その代わりこの前の事はよろしくね?」


(母さんが完璧主義。これは今後が更に大変そうだな。

 それはさておき、別口の講師をゲットしたわけだから、その点では捗りそうだ)

「わかりました」


「さてあまり長く話しているとお嬢様をお待たせしちゃうから、ここらで終わりにしようか。

 ・・・私の方もそろそろ限界が近いしね」


「それでは、僕も戻りますね」


「うんッて危ない危ない、これを渡し損ねるところだった。

 これを使えば私につながるようになってるから何かあったらこれで連絡してね。

 あとこれは誰にも見せちゃダメだよ?

 最悪フラーナさんならいいけどそれ以外は見せちゃダメ。

 私が面倒くさいことになるから」



 そう言って真珠の様なものが埋め込まれた手のひらサイズの円盤を渡すイリーナ。

 それをフラッドがしっかり受け取ったのを確認するや否やトイレに勢いよく入っていった。



(通信用の魔道具って、これ持ってるだけで俺もヤバいじゃねぇか!

 王族とか大貴族とかそこ等しか持ってないものだぞ?

 どうやって手に入れた?まさか作ったのか?

 とにかく何としてもバレないようにしないとだな)



 イリーナから渡されたものの貴重性に戦慄したフラッドは冷や汗を大量に流しながら部屋へと戻る。本人は何事もなかったかのようにふるまったつもりだったが、他のものらから見れば大変そわそわして見えたそうだ。


お読みいただきありがとうございます。

次話は9/1を予定しています

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