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32.スケルトンと戦ったんだが・・・

8/4


 屋敷を出て少し。

 一同が道を挟んで隣に併設されている訓練場に到着すると、中では既に準備が整っていた。

 コロッセウムの様な円形の訓練場の真ん中には、鉄柵の箱に閉じ込められたスケルトン、その両脇を動きやすさを重視したのか上等そうな革鎧を纏ったダンの私兵と思われる屈強な男が固めていた。



「ダン様!こちらの準備は整っておりますが、早速開始いたしますか?」



 一同が近づくと私兵はダンに敬礼をし、開始の可否を尋ねる。

 ダンはフラッドらへ振り替えると口を開く。



「聞いての通り準備は出来ているようだ。

 お前たちに問題がなければ早速始めようと思うが、どうだ?」



 それに対し、監督役を任されていたダリウスとエリーゼは頷き、それを見たフラッドとポーラも特にこれと言ったこともないため同様に頷く。



「問題はないようだな。

 それでは、始めるとしよう。

 武器についてはあそこにある物の中から好きなものを選ぶと良い。

 もちろん、魔句は使ってもらって構わない。

 むしろ積極的に使ってもらいたいほどだ。」



 ダンはそう言うと、何時からそこにあったのか、フラッドらの後ろの幾種もの武器が乗った台を指さす。

 フラッドとポーラは互いに顔を見合うと駆け足で武器の元へと向かう。

 それを確認したダンは二人へ近づくと開始について説明する。



「二人とも、準備が整ったらあそこに居る兵にその旨を伝えろ。

 そうしたら開始宣言の後にあのスケルトンを解放する。

 それをどんな手段でも構わん、二人で倒して見せろ。

 私たちはそれを見させてもらう」


「「わかりました」」


「ガラッド!ダリウス!お前たちも何かアドバイスがあるなら今のうちに伝えておけ。

 特になければダリウスとエリーゼを除いて私と一緒に監督席に移動してもらう」



 特にアドバイスはないのか、サムズアップをくれるとそれぞれ所定の場所へと移動する。

 ティアは少し興奮した様子で声援をくれると落ち着かなそうに席でソワソワとしていた。



「頑張ろうね」


「うん。父さんたちが見てるし何より領主様やティアが見てる。

 あんなに期待を向けられてるんだ、頑張らないわけにはいかないよ」


「そうだね。それで武器はどうするの?

 私はこの直剣にしようと思うけど・・・」


「僕はこの短剣にしようかな」


「短剣だと威力が足りないかもしれないよ?」


「その点はほら、領主様だって言っていたろ?魔句を使っていいって。

 おじさんに稽古つけてもらいながら母さんや父さんに色々教わったんだ、新しく覚えたやつ、見せてあげるよ」


「そうなんだ。楽しみにしてるね?」



 相談ともつかない雑談をしながらも準備を終えた二人は、言いつけ通り控えていた私兵に完了の旨を伝える。

 それがスケルトンの両脇を固める私兵にも伝わったのか、一人が解放のための準備に向かうと、残ったもう一人が開始の声を挙げる。



「フラッド殿とポーラ嬢の準備が整ったとのことですので、これよりスケルトンを用いた実力テストを開始いたします!」



 開始の宣言と同時にそれまで固く閉ざされていた扉が開き、中からゆっくりとした足取りでスケルトンが歩み出る。

 もともとソレが持っていた物なのか、宣言をした私兵は退避すると共にボロボロの槍を投げ入れた。

 スケルトンは落ちた槍を拾い上げると、ソレを斜めに構え辺りを見回す。

 その頭が一点で止まった先には、それぞれの武器を構えるフラッドとポーラが居た。

 己の獲物を見つけたスケルトンは、訓練場へ出た時とは比べ物にならない速さで二人へ疾駆する。

 カタカタと顎を鳴らしながら走り寄るスケルトンを見ながら二人は動き始める。



「来るよ」


「わかってる。フラッド君、足止めお願い!」



 剣先を地面へ向けスケルトンへと走り出したポーラを援護するためフラッドは魔句を唱える。



(早速教わった技を使うとしますかね)

「ソイルバインド!」



 フラッドが唱えると、地面から土の茨が伸びると、スケルトンの腰に巻きつく。

 使い慣れていない為か、細く頼りないそれは、スケルトンの運動エネルギーに耐えかねボロボロと崩れる。

 しかし、一瞬とは言え動きを阻害された結果、スケルトンは体勢を崩し地面を転がる。

 即座にスケルトンが対上がろうとすると、走っている最中に剣先を正面に向けていたのか、大きすぎる隙を逃さぬようポーラが突きを放つ。

 突撃の勢いが乗った突きは、スケルトンの核がある心臓部分へと真っすぐに繰り出されるが、咄嗟に突き出された腕により剣先はブレ、肋骨数本を折るに留まる。



「はずした!」



 ポーラはそう零すとバックステップする。

 突きを受けたスケルトンは核への一撃は防げたが、衝撃までは如何することもできなかったのか尻もちの体勢から起き上がるところであった。

 一方フラッドは、ポーラの繰り出した綺麗な突きとその威力に戦慄していた。



(おいおいおい!なんだしっかりとした突きは!

 それ以上にその威力!

 どう考えても4歳の女児に出せるものじゃねぇぞ!

 あの二人(ダリウスとエリーゼ)に教えられて型がしっかりしてるのは解るが、

 あの威力はおかしいだろ!

 俺の幼馴染は化け物か!)



 本来なら男女間の力関係で勝っているはずの膂力で上回られたことに戦慄していたフラッドだったが、ポーラから飛んできた叱責の言葉で我に返る。



「フラッド君、ボーとしないで!」


「ご、ごめん」



 スケルトンが体勢を整えると同時に走り出したフラッドは再度魔句を唱える。



(ポーラにばっかりやらせるわけにはいかない!

 てか、これで活躍できなかったら恥ずかしすぎる!)

「アイスブレット・シュート」



 走るフラッドの周囲に氷の弾丸が三つ生成されると、即座に射出される。

 射出された弾丸はちょうどポーラへと突き出さんとしていたスケルトンの槍へ当たる。

 それにより軌道のずれた槍を掻い潜るとポーラは逆袈裟斬りに剣を薙ぐ。

 今度は狙いが甘かったのか、またしても肋骨を折る留まったが、それまで肋骨に隠れていた核が表に曝された。

 これで止めと、ポーラが上に向いている剣を振り下ろそうしたときソレは迫った。



「危ない!」



 それまで、一方的に攻撃されていたスケルトンの反撃の一撃。

 持ち替えた槍での自分ごと貫く突き込み。

 痛みを知る物なら一瞬でも逡巡するその一撃を、痛みを知らないスケルトンは迷うことなく行う。

 フラッドの声に反応したポーラだったが、それを避けるには遅く、悪あがきに身を捻るも、その目と口はこれから来る痛みに耐えるため固く結ばれていた。



(くそ!あれじゃぁ避けられない!

 まだ上手く使えないがあれやるしかないな!)

「アイスウォール!」



 かすかな希望を胸に手を伸ばした先は、それに答えるように槍迫るポーラの背後に氷の壁が出現していた。

 筋肉のない腕でどうやってそれほどの速さを出しているのか解らないソレはポーラの背に届く前に、突如として現れた氷の壁に阻まれた。

 それはあまりにも薄く頼りないものであったが、氷ゆえの硬度をもって、槍の勢いを削ぐ。

 衝撃に耐えかねた氷の壁は儚くも砕け散るが、その一瞬をもってポーラはその間合いからの脱出に成功する。

 そして自身の間合いから逃れたポーラに気を取られたスケルトンを背後から衝撃が襲う。

 直接的な脅威と見られず後回しにされていたフラッドがスケルトンの隙をついてバックスタブを放ったのだった。

 フラッドの握りしめた短剣は、スケルトンの開いた肩甲骨と肋骨の間を通り見事、核を貫いていた。


 一拍の間を置き、核が砕け散るとそれと同時に何らかの力が抜けたのか、人の形を形成していた骨達はバラバラと地面に崩れていく。

 今回の戦闘での最初で最後の接近戦をしたフラッドが、緊張により上がっていた息を整えると背後から声がかかる。



「二人とも合格だ。

 いい戦いだった」



 その声に振り替えると、ダンが笑顔で腕を組んだいた。








 お読みいただきありがとうございます。

 久々の戦闘回いかがだったでしょうか?

 私自身は上手く書けたと思っていますが、もし単調なものになっていたら申し訳ありません。

 

 さて次話についてですが、少し間をいただいて8/18を予定させていただきます。

 仕事が一時的に忙しくなるのでご容赦いただければと思います。

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