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31.急にテストが始まったんだが・・・

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 ひとしきり世間話が終わったころ、ダンはそれまでの愉快そうな雰囲気を消し、真面目腐った顔でフラッドとポーラを見据える。



「さて、親睦を深めるのはここまでとしてだ。

 二人に此処まで来てもらったもう一つの理由を消化してしまおう」


「「もう一つの理由?」」


「ん、何。

 君たちの両親からは毎日のように君たちの話を聞いていてね。

 是非この目で見てみたいと思った次第だったのだ。

 何せ騎士隊長とその副官、それに文官長が絶賛するほどなんだ、当然将来有望な未来の部下の姿を見てみたいと思うだろう?」

 

「そ、そうですね」



 期待の籠った視線を向けられたフラッドは所在無さげに頬を掻くと余計なことを言ってくれたなと両親たちへ鋭い視線を送る。

 隣でポーラも同じように視線を送っており、それを受けている当事者たちは片や息子の視線に気まずそうに視線をそらし、片や娘の視線にオロオロと狼狽えていた。

 そんな大人たちの反応に呆れたフラッドは、小さく深呼吸をすると先を促すようにダンへ質問をする。



「その、実際に見ると言っても、どういったことをやればいいのでしょうか?」


「なに、やってもらうことは至って簡単でね。

 フラッド、君はガラッドの話によると頭も良くて魔句の才能もある。

 実際にジャイアントローチを友人と一緒に討伐しているそうだからね。

 それに、その友人らと一緒にダリウスに特訓を付けて貰ってるようだから、今現在の実力を把握したい。

 よって、うちの文官の採用時に使用している問題集と後は力の確認でスケルトンの討伐をしてもらおうと考えている」


「大人の採用試験問題とスケルトンの討伐ですか・・・

 期待していただけて嬉しい限りですが、私はまだ子供ですよ?

 さすがに無理が――」


「何、その歳でそれだけの受け答えが出来てる時点で他の子らとは違うんだ。

 まぁ、遊び半分でやってみて欲しい。

 ポーラは学力テストはなしで、スケルトンの討伐のみやってもらう。」


「うぐっ・・・。

 領主様、ジャイアントローチを討伐したと言っても領主様がご存知の通り友人らと協力して討伐したのであって、決して個人の実力ではありません!

 それなのにスケルトンの討伐なんて・・・」

(確か、スケルトンって攻撃を当てても痛覚とかがないから怯まない上にそもそも死を恐れないから通常では予想が付かない行動を取ってくるんだったよな?

 討伐方法は核を潰すだけで、それさえできれば簡単に倒せるんだけど、死や痛みを恐れない決死兵それも武器のオマケつきだぞ!?

 四歳ちょっとの子供にやらせる内容じゃねぇよ!)


「ほぅ・・・。

 自身の持つ実力を把握し、市井や若手冒険者が気付いていないスケルトンの恐ろしさも理解していると・・・

 これは楽しみだ。

 なに、万が一のことは気にしなくていいぞ?

 監督はダリウスとエリーゼで、スケルトン自体多少弱らせてある。

 二人掛かりで戦えば討伐は可能だろう。

 もし何かあっても監督役の二人が、な?」



 そう言って視線を向けるダンにダリウスとエリーゼは力強く頷く。

 その様子に大人たちには事前に話が通っていたことを理解したフラッドは、これまた恨めしそうに彼らを睨みつけた。



(事前に話を聞いてたなら教えろってんだよ!)



 フラッドが内心で独白していると、不意に近くに居なければ聞き取れないほどの声量でポーラから声がかかる。


「ねぇフラッド君。

 今更だけど領主様に冒険者目指してること伝えなくてよかったの?」


「今、正直に話して領主様の不興を買うわけにはいかないからね。

 取り敢えずテストは終わらせないと。

 話すとしたらそれ以降になるかな」


「フラッド君がそれで良いならいいけど」



 二人が周りに聞こえないように会話をしていると、ダンの方から声がかかる。



「二人ともそう睨んでやるな。

 内容について話がなかったことは驚きだが、それもこれも私の我が儘だ。

 睨むなら両親でなく私を睨め。

 それと早速だがフラッドの学力テストを行う」



 ダンは大人たちへフォローを入れながら、フラッドに開始する旨を伝える。

 その後、近くに控えていたメイドに案内され隣室で学力テストを行うこととなった。





 学力テストから一時間ほど。

 ダンは驚愕の表情を顔に張り付けながら解答用紙を眺めていた。

 一拍して呆れとも感嘆ともつかない息を零すとダンは解答用紙を伏せフラッドへ顔を向ける。



「正直これほどまでとは思っていなかったぞ。」


(もしかして、かなり間違ってたか?

 いや、でも簡単な掛け算やら足し算やらで、後は読み書きだったからな・・・)

「・・・・と言いますと?」



 フラッドが不安に身を強張らせながら先の言葉を待つと、ダンは伏せられた解答用紙を表へ返す。



「100点満点中83点だ。

 これはこの試験を受けた中でもかなりの上位に食い込むぞ?

 毎度の平均は52点、採用基準は65点以上としている。

 それを難なく突破したうえで、君の父親を含めて10何人と居ない80点越えを達成したのだ。

 その歳で、だぞ?

 これを驚かずにどうしろと言うのだ」


「え、えぇ…」

(なんだ、点数が悪すぎるわけではなかったかぁ~

 それにしてもあの内容で平均が52点ってどんだけだよ…)


「ふふっ、だから言ったではありませんか。

 私たちの息子は天才だと!」


「親のひいき目だと思って話ほどではないと考えていたが、実際に目の前で見せられると信じざるを得ん」



 息子(フラッド)の成績に、ガラッドは珍しく興奮しながら息子自慢をする。

 フラッドはテストの内容から、その程度でと呆れを感じていたが、この世界は日本と比べて教育レベルが大きく下回っており、識字率は50%に満たず、加法(足し算)減法(引き算)を使えるものは少なく乗法(掛け算)除法(割り算)は更に少ない。

 その中で作成された採用試験問題はこの世界の者にとっては難関であるが、日本の教育を受けたフラッドにとっては小学生のテストに等しい物であった。

 逆に今回のテストでフラッドが満点を取れなかった理由はこの言語の読み書きにあった。

 しかしそれを以てしてもフラッドの識字率はかなりのものだったが、それも赤子の頃から勉強をするという普通ならできないやり方をした結果でもある。


 ガラッドの息子自慢にフラーナも加わり少しして、ダンはいい加減嫌になったのか、掛けていた椅子から立ち上がる。



「さて、これで学力に関しては確認が出来た。

 次は戦闘力の確認に移るとしよう」



 そうダンが逃げるように促すと、目的地となる訓練場は外にあるため全員で屋敷を出るのであった。


 お読みいただきありがとうございます。

 そして申し訳ありません!本話で学力・戦闘力の両テストをまとめるつもりだったのですが、投稿が間に合いそうに無かったので戦闘力に関しては次話へ回します。

 ここしばらく面白みがなく申し訳ないところではあるのですが次話までお待ちいただければと思います。

 投稿者自身、意欲と筆の乗りのアップダウンが激しく、読み手の皆さまからすれば非常に読みづらいものかとは思いますが今後ともご愛読のほどよろしくお願いします。


 次話投稿については8/4を予定しています。

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