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30.領主様の見た目が怖いんだが・・・

7/21 祝30話目


「――って言うことがあってね、その時は何とか倒せたんだけど、イオ君が凄い怪我をしちゃって」


「それは凄いですわね。でもジャイアントローチを正式な冒険者でもない貴方達が倒すなんて・・・

 お話に出てきた他の方々とも是非会ってみたいですわ!」



 ポーラの口から紡がれる数少ない冒険譚を聞き、目を輝かせるティアは憧憬の面持ちでポーラとフラッドを見つめながら、ここには居ないザックやローナ達に会いたいと口にする。



「ティアと領主様が良いなら今度連れて来るけど?」



 話をしている内に慣れてきたフラッドがそう提案すると、ティアは一瞬の間もなく即答する。



「えぇ!是非に!

 お父様には絶対許可を取って見せますわ!」



 そんなティアの様子に若干引き攣った笑みを浮かべるフラッドとポーラだったが、傍に控えていたリンとメルから時間が来たことを聞くと真面目な顔に戻る。



「皆さま旦那様の準備が整ったようですのでそろそろ…」


「わかりましたわ、私は二人と一緒にいきますからこのまま案内してくださる?」



 慣れているのかティアは躊躇うこともなくリンたちに指示を出すと、そのままの調子でフラッド達に向き直る。



「それじゃ、聞こえてたとは思うけれどお父様の準備が出来たみたいですから一緒に行きましょう」



 そう言って立ち上がるティアに置いて行かれまいと、慌てて立ち上がる二人。

 三人は先導するメイドに従って応接室へと進む。





コンコンッ


 応接室にノックの音が響くと続けて声が届く。



「旦那様、お嬢様とフラッド様、ポーラ様をお連れしました」


「入れ」



 腹の底に響くような低い声が入室を許可すると、扉が開き

三人が入室する。



「失礼しますわ」


「「失礼します」」



 入室した三人を見据えると、声の主でありこの屋敷の持ち主でもあるダン・セフィラムは大仰に両手を開くと歓迎の意を示した。



「ティア戻ったか!

 無事に二人と仲良くなれたようだな。

 そして二人とも私の我がままでここまで来てもらって申し訳ないな。

 私はここで領主をさせてもらっているダンと言う。

 改めて歓迎しよう!」



 入室していきなり、領主であるダンから歓迎され放心するフラッドとポーラだったが、いち早くソレを抜け出したフラッドが自己紹介をする。



「この度はお招きいただきありがとうございます。

 ぼk…私はここに居ります、ガラッドとフラーナの息子

 フラッドと申します。

 こういった場に慣れておらずお目を汚してしまうような言動が出てしまうかと思いますが、どうかご容赦いただければと」



 こう言った場で使えそうな単語を思いつく限り並べたフラッドだったが、そんな姿を見たこともない両親(ガラッドとフラーナ)は目をぱちくりとさせていた。

 逆にそれを受けたダンは目を細め感心したような声を漏らす。

 禿頭に太い眉毛を持つダリウスとは違った意味で威圧感のあるダンが目を細めると、初めて応対した人物は誰しも機嫌を損ねたかと思ってしまう程に迫力があった。

 それはフラッドも例外ではなく、その様を見て内心冷や汗が止まらなくなっていた。



「ガハハハッ!話に聞いていた通りに優秀な息子じゃないかガラッド!

 さすがお前とフラーナの息子だ!

 これで魔句の才能もあるのだから堪らんな」



 フラッドの対応が気に入ったのか豪快に笑うダン。

 それに驚くフラッドとポーラだったが、二人を除く全員が特にこれと言った反応を示していないことから、これがいつもの事であるのが見て取れた。

 しばらく笑っていたダンの視線がポーラへと移ると、ポーラは緊張を滲ませながら自己紹介をする。



「わ、私はポーラっていいます。

 パパとマm…ダリウスとエリーゼの娘です!

 よろしくお願いしますっ!」



 未だ緊張に身を震わせるポーラの手をフラッドがそっと握る。

 その行為に安心感を覚えたのか、気持ちポーラの緊張が解けた。

 当人たちは他にバレていないと思っていたようだが、正面から二人を見据えるダンにはもちろん、二人の母親であるフラーナとエリーゼにもそれはバレていた。

 ダンはそれを見て微笑ましそうに顔を緩める。



「ダリウスの言っていた通り可愛らしいお嬢さんじゃないか。

 私が幼少期に知り合っていたら確実に惚れていたぞ」


「流石にダン様の命令でも俺のポーラは渡さないぞ?」


「お前の娘を褒めただけであってそういった意味は全くないぞ?

 まったく、私と王都の貴族共(変態ども)を一緒にするな。

 それに…相手はもういるではないか」



 ダンのその言葉にダリウスは疑問符を浮かべるも、それに思い至ったのかフラッドを忌々しそうに睨む。

 それとは別の場所からニヤニヤとした揶揄うような視線を受けていたフラッド達はダンの発言もあり、自分たちの行為はバレていたと知るのであった。



(バレてたかー。

 ・・・母さん達に後でまた揶揄(からか)われるんだろうな

 てか、領主様の言い方からして王都の貴族ってロリコン

が多いのか?

 物語とかでも大貴族とか王族は変態が多いけど現実でもそうだと・・・ポーラは王都に行かせない方が良いかもしれないな)

 


 王都の貴族の一部実態を察したフラッドは、これから先のことに思いを馳せるのだった。





 お読みいただきありがとうございます。

 本話でこの作品は30話を迎えました!これも皆さまの存在があってこそです!

 正直初めて投稿した作品だったので此処まで続けられるとは考えていなかったのですが、少なからず読んでいただけていることが励みになったのでしょうか30話を迎えることが出来ました。

 今後も拙いながらも続けていきますのでどうぞよろしくお願いします


 次話の投稿日ですが7/28を予定しています。

 誤字脱字や改善意見などは今も絶賛募集していますので引き続きよろしくお願いします。

 それでは次話で。


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