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27.領主様と会うことになったんだが・・・

一応仕上がったので投稿します!



 いつものようにダリウスとの特訓でボロボロになった体を引きづりながら帰宅したフラッドは、疲労と痛みで動きが鈍った体に鞭を打ちながら水浴びをする。

 水は体ベタベタとに纏わりついた汗交じりの砂埃を洗い流し、痣や打撲した箇所の熱を拭い去っていく。

 足元に流れ着くころには吸い取った汚れや熱で、生温く汚れたものとなっていたが、それを繰り返すうちにそれもなくなる。

 水浴びの爽快感を感じながら、浴びるだけでは落ちない汚れをゴシゴシと擦る。



「うっ!」



 汚れを落とす過程で脇腹にできた大きな痣に触れてしまい思わずうめき声をあげるフラッド。



「ったくあのオッサンもうちょっと手加減しろよな…」



 その原因となったダリウスの容赦のなさをぼやくと傍らに脱ぎ散らかした稽古着を持ち家に戻る。





 鶏肉の旨味が溶け込んだシチューにフラッドが手にした黒パンを浸していると、何気ない様子でガラッドが口を開く。



「フラッド、明後日は空けておいてくれるかい?

 領主様が一度会ってみたいと仰っててね」


「わかった、空けておくね・・・って領主様に会いに行くの!?

 なにか目に付くようなことしたかな?

 できれば行きたくないな~、その礼儀作法とかわからないよ?」


「その点は大丈夫だよ。

 ダン様は礼儀作法は気にしないほうだし、何かあったら父さんと母さんが付いてるからね。

 もし何かあったとしても私たちが何とかするよ」


「うぅ~そういうことなら・・・

 ところで、ダン様って領主様の事だよね?」



 耳慣れない人物の名を聞いたフラッドは大方予想はしながらも確認の意を込めてガラッドに質問する。

 その質問に対してガラッドだけでなく、隣で話を聞いていたフラーナまでもが驚いたような顔をする。



「知らなかったのかい?

 フラッドはやけに頭が良いから、それぐらいもことも知っているものだと思ってたよ」


「教えていなかった私たちも悪いけど、これ位のことは知っておくべきよ?」


「・・・はーい」

(母さん、いくら何でも子供にソレを求めるのはどうかと思うぞ?

 しかしウチの領主様って男爵だったよな?

 そんで名前がダンだとダン男爵、呼びづらいな)



 半分説教モードになったフラーナに面倒くさそうに返事をするフラッド。

 その後、食卓にはしばしの沈黙が降りることとなったが、不意にフラッドはダン男爵が自分に会いたいと思った理由が気になりそれを尋ねる。



「ねぇ父さん。なんで領主様は僕に会いたいって思ったのかな?」


「あぁ、それはフラッドが魔句が使えることとかを話したら是非ってね。

 ちなみにお隣のポーラちゃんもダリウスのべた褒め具合から一緒にって仰ってたよ」


「そうなんだ。そう言うことならしょうがないよね」

(やっぱり父さんが原因か。

 優秀な息子が居たら自慢したくなるのは解らなくもないが、その結果こういうことになるってことを考えて欲しかったかな。

 まぁ父さんからしたら悪いことではないから何とも思わないんだろうけど)


「その、やっぱり行くのは嫌かな?

 どうしても行きたくないなら無理はしなくてもいいよ?」


「大丈夫だよ。嫌か嫌じゃないかで聞かれたら嫌だけど、それ以上に父さんの面子に傷を付けるわけにはいかないからね。

 それに父さんと母さん、ポーラちゃんも居るんだから大丈夫だよ」


 

 バツが悪そうに聞いてくるガラッドに、フォローともいえないフォローをするフラッド。

 その言葉にガラッドはどこか安堵したような申し訳ないような表情を浮かべると、その後は日程について話し込んだ。

 フラーナは息子の晴れ舞台ともあってどんな服を着せるか云々と悩んでいたが、それを見た父子は女性特有の長い相談に巻き込まれまいと気付かないふりを通していた。





 二日後、領主との謁見をこの後に控えたフラッドは緊張を悟られまいといつもの雰囲気を出しながらポーラと会話をしていた。



「今日は領主様と会えるね!

 お母さんが服装もちゃんとしなきゃって着せてくれたんだけど似合うかな?

 変なところとかないかな?」



 そう言って軽くターンをするポーラの服装はいつもの爽やかなワンピースとは違い、少々華美な装飾の施された生成色のドレスであった。



「・・・すごく似合ってるよ」



 見ようによってはウエディングドレスのようにも見えるその姿に見惚れたフラッドは、その美しさに生唾を飲み込むと思考が鈍ったのかありきたりな誉め言葉を返す。

 間の抜けた表情で褒めるフラッドを見てその感情を察したポーラは小さくハニカムとフラッドの耳元へ口を寄せる。



「ふふっ、うれしいな。

 フラッド君の服もすごく似合ってるよ。

 ――格好良すぎてもっと好きになちゃった」



 耳元から離すときに小さく零れたポーラの囁きは、風に流されることなくしかとフラッドの耳へと届き、結果としてフラッドの頬を赤く染め上げることとなる。

 ポーラの瞳には、黒を基調としたローブの下に白のオックスフォードシャツと黒いスラックスを履いたフラッドが恥ずかし気に頬を掻く姿が映っていた。

 それを見てさらに気分を良くしたポーラはそっとフラッドの腕に自信の腕を絡ませる。

 普段ならそんなことをされれば大袈裟な反応を返すフラッドだったが、今回ばかりはそれを受け入れるどころか、その感触を確かなものとするために強く握り返すほどであった。



(相変わらずポーラの愛情はストレートだな。

 ストレート過ぎてビックリする時の方が多いがコレが嫌じゃないんだよなぁ~

 それもこれも俺自身ポーラの事が好きだからなんだろうけど。

 6歳になったら告白するか)



 そう思いフラッドが隣へと視線を動かすと、愛おしそうにフラッドの事を見つめるポーラが映る。



(てかこの際ハーレムじゃなくてポーラ一筋で行ってもいいような・・・いや、やっぱりハーレムは男のロマン!

 目指さなくてどうする!)


「・・・」



 己が目標を閉ざそうとしたフラッドだったがそれを否定する。

 それを感じ取ったとでもいうのかポーラは一瞬怒気を孕むもその後はうっとりとした様子でフラッドを見つめる。



「ちょっと二人ともお熱いことで!

 イチャイチャするのもいいけどこれからダン様との謁見があるんだからほどほどにしときなさいね。」


「エリーゼ!言い方ってものがあると思うわ。

 それにこれはいい傾向じゃない。

 このまま二人には…ね?」


「それもそうね!

 それじゃお二人さん、館に着くまでほどほどにね。

 ごゆっくり~」



 突如、ニヤニヤと笑みを浮かべ現れたエリーゼとフラーナ(闖入者)に驚くフラッドとポーラ。

 闖入者たちは思い思いに二人を囃し立てるとそのまま去ろうとする。

 


「「母さん!(ママ!)」」

 


 そのことに恥ずかしさを感じ悲鳴のような声を挙げる二人だが、その原因となった母たちはそれをニヤニヤとしながら迎える。

 そんな母子の姿をガラッドは少し困ったような表情で、ダリウスはどこか憎々し気に見つめることしかできなかった。

 その後、母子に因る言い合いは領主の館に着くまで続くのだった。





お読みいただきありがとうございます。

7/7より前に仕上げられたので投稿させていただきました。

本話ですが、特訓の様子から急に話題を変えてしまい申し訳ありません。

一応次回は領主様との謁見を予定しています。


さて、次話の投稿日ですがこれに関しては前話で述べた7/7を予定しています。

理由については、この話自体が本来6/30にあげられるべきものと考えている為です

結果不規則な投稿となってしまいますがご理解のほどよろしくお願いいたします。

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