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23.依頼の手伝いをしてみたんだが・・・

遅れてすみません。

文章の確認に手間取りました。

急いで確認をしたので漏れが多々あるかと思いますがご容赦を//

 男たちがポーラの蔑むような視線を向けられてから幾ばくか、未だに蔑むような視線は変わらないものの、その原因となった現象が治まった男たちは、ポーラの視線に気付きつつも何事もなかったかのように依頼についての話をする。



「今回僕たちが受けた依頼って言うのが、薔薇が彫刻されたシルバーリングの捜索でね」


「物探しなのはいいけど、そんな小さなしかも高価な物ってのは予想外なんだけど、見つからなかった場合の違約金とかの確認はエルロスがちゃんとしているんだよね?」

(もしこれで違約金やら何やらで多額の請求とか鉱山送りにでもなったらシャレにならんから、それ如何では降りるか)


「ああ、その点は依頼主が半ば諦めてるのもあってか、違約金とか免責事項はないみたい。

 でも、フラッドはまだ冒険者見習いでもないのによくそんなこと知ってたね?

 やっぱり家柄なのかなぁ~」


「いつも言ってるけど、僕の家は皆のところとそう変わらないよ?

 違約金とかについては、この前受付のお姉さんに聞く機会があったからそれで知ったんだよ」

(前世で読んだ異世界物でそういうパターンがよくあるなんて言えないからな)


「エルロスの言う通り、罰則とかはねぇから安心しろよ!」


「基本的に僕たち冒険者見習いが受注できる依頼ってそういった免責事項がないか、あったとしてもとても軽いものばかりなんだ。

 だからと言って、ザックみたいに余裕を持ちすぎるのも良くないけどね」



 そう言ってエルロスはザックを半眼で見やるが、当のザックは気にした素振りもなく話を聞いている。

 そんなザックの様子に半ば諦めながらエルロスは捜索場所について語る。



「それで、場所なんだけど、依頼主が落としたと思われるのが水浴び広場みたいだから、そこの水路とそこから繋がる下水路を探すかたちになるかな」

 

「エルロス、なんで水路だけなんだ?

 落としたって言うなら地面に落ちてることもあるんじゃないかな?」


「それは~わたしも気になってたの~

 下水路は~なるべく行きたくないから~」


「それはね――」


「依頼主が簡単に探してたってことと、今回は小物だろ?

 だから被った水に流されて、水路に落ちるってことがあるからだ」


「ザック!僕が説明しようとしたのに、君ってやつは~」


「お前の話は長いんだよ、とにかくこれで大体の説明は終わったんだろ?したら早速探しに行くぞ!」



 いつものように催促するザックにエルロスは準備が整っているか確認をする。



「ザック、準備は終わってるんだろうね?

 網とか、ランタンとか、後は万が一のための武器とかさ」


「んあ?武器なら・・・この、父ちゃんに買ってもらったこの短剣があるぜ」



 そう言うとザックは背負っていた雑嚢から粗雑な鞘に納まった赤褐色の短剣を取り出し、皆の前に掲げた。

 鞘自体は有り合せの皮で作ったのか所々色の違う部分がありそのことを隠そうとしていない。

 しかし、その短剣は簡素な作りながらも、その刀身は見事なまでに磨かれており、銅製であるにもかかわらず、それを持つザックや見つめるフラッド達の姿を鏡のように映していた。

 驚きの表情で見つめる一同に自慢げに鼻を鳴らすザック。



「へへっ!すげぇだろこれ、結構いい値段したんだぜ。

 おかげで俺の分の報酬は当面これに当てることになったけどな!」


(((つまり親父さんに借金したと・・・)))



 そこでふと、ランタン等の他の物資がザックの雑嚢に入っていないことに気付いたエルロスはそれを尋ねる。



「ザック、君の雑嚢にランタンとかが入ってないようなんだけど、準備したんだよね?」


「は?俺はこの剣しか持ってきてないぞ?

 そういうのの用意はお前とローナの仕事だろ?

 それにこの剣買ったから他買う金がないしな!」

 


 ザックのあまりにもあんまりな発言にエルロスのこめかみがピクピクと痙攣すると間を置かずに説教が始まった。

 珍しく怒ったエルロスの剣幕はそれを見ていた他の面々をも正座させるほどのもので、それを全面から受けているザックは最初こそいつものようにヘラヘラとしていたが、終盤には肩を縮こまらせ下を向いて説教を聞いていた。

 正一時間ほどして説教が終わると一同の張りつめていた空気は弛緩し、緩やかにいつもの様子へと戻っていった。



「それじゃ、皆行こうか。

 フラッドにイオ、ポーラちゃんは道具とか持ってないと思うから、下水路に入るときは僕たちの近くに居てね。」



 そうエルロスが号令をかけると、一同は捜索場所となる水浴び広場へと移動する。

 暫くして今日も今日とて多種多様な人たちで賑わっている広場に到着すると、一同は三人づつに分かれて水路の捜索を開始する。

 ザック達三人は自然と別れている内の男性側の水路へフラッド達は女性側へと歩を進める。

 エルロスが目を凝らし水底を見探していると、突如後ろから水を掛けられる。



「うわっ!?」



 何事かと後ろを振り向くと、可笑しそうに腹を抱えて笑っている少年たちが居た。



「君たちいきなり何するんだ!」


「兄ちゃん足元見てボーとしてっから水かけたんだよ」


「うわっ!?ってそんなにビックリするもん?

 暇なら俺らと遊ぼうぜ!」


(小さい子たちの考えはよくわからないな)



 子供たちの返答に怒りを覚えたエルロスだったが、フラッドとの出会いを思い出し、その怒りも覚める。



「君たち、人にいきなり水をかけちゃダメだよ?

 それも特に知らない人にはね。

 僕だったから良かったものの、もし怖い人なら何されるかわからないよ?」 


「ちぇ~つまんないのー

 この兄ちゃん面白くないからあっち行こうぜ」


「あそこのおっちゃんにやったら面白そう!」



 怒りを抑えて注意をしたエルロスだったが、それをした子供たちは怒り狂う様を見たかったようで、エルロスの反応にガッカリしながら奥で体を洗う強面の男の元へと駆けていく。

 そんな子供たちの反応に釈然としない思いを抱きながらエルロスはザックとローナの様子を窺う。



(やっぱり小さい子の考えることはわからないな~

 二人はちゃんと探してるかな?)



 エルロスが視線を向けたさきには、筋骨隆々の男に憧れの視線を向け手が止まっているザックと、全裸の男たちが居るのを気にした様子もなく黙々と探すローナの姿があった。

 ザックは思い出したかのように水底を探すも少しするとその男の筋肉へと視線を向け作業が止まってしまっていた。

 逆にローナは、本来年頃の女の子であれば視界に男の裸体や象徴が映れば少しは恥ずかしがるところを、全く気にせず捜索を続けていた。

 ザックに見られている男は視線に気付いているのか、少し自慢げな様相でさり気無くパンプアップを行い、その筋肉の躍動にザックはより一層目が離せなくなっていた。

 ローナの周囲では自分の近くに女の子がいることで恥ずかしくなっている者や、視界に移っても無反応なローナに自信を無くしている者が量産されていた。

 そんな二人とその周囲の状況をみて深いため息をついたエルロスは自分の担当した場所の捜索へと戻った。


 一方女性側を捜索していたフラッド達は、一人だと色々な意味で怖いと言うイオに、フラッドに頼まれてポーラが付いていた。

 最初こそ、フラッドと一緒に居たいポーラは反論していたが、効率や印象などと説明するフラッドに負け、泣く泣くイオと一緒に探す形となった。

 結果として一人での行動となったフラッドは持ち前の集中力を活かし自分の担当したエリアの捜索を終えていた。

 一人暇を持て余したフラッドは、この捜索に魔句が使えないかと思考を重ね始めた。



(魔句はイメージと動句がしっかりしたものなら、指定句が曖昧でもなんとかなるはずだ。

 そして魔法言語とされているものは前世で言う英語とほぼ一緒だから、英単語さえわかればワンチャン捜索魔句みたいなのは出来るはず!

 あとは、その英単語だが・・・探すは~・・・サーチで良いんだったか?

 指輪は~・・・ってリングか。

 サーチリングだとなんか違う気がするんだよなぁ~

 後は物体ってことでオブジェクトか?

 やるとしたらサーチオブジェクトだな、なんかそれっぽいし。

 ただ、もし仮説が間違ってて暴発でもしたら・・・――)



 捜索に使える魔句を考えるフラッドに何者かの影がゆっくりとかかる。

 もちろん思考の海にどっぷりと浸かっているフラッドはその者の接近に気が付かない。

 そしてフラッドの全身がその者の陰で覆われた時、不意に背中に当たるやわらかい感触と共に耳元でやけに艶のある女性の声が発せられる。



「ねぇ?君、この前の子だよね?」


「ッ!?」



 突然の出来事に体が跳ねるフラッド。その振動は背中に押しあたるナニかにも確かに伝わり、耳元で再度女性の声が漏れる。



「あんっ!」



 ただそれだけで、自身の背に当たるものが何かを認識したフラッドはそれと共に熱を帯び始めたソレに気を配りながらゆっくりと振り返る。

 振り返った先に居たのは、初めてここに来た時見た10代後半ほどの女性が、あの時と同じ姿で立っていた。



「君が突然動くから変な声が出ちゃったじゃないかっ・・・ておや~?その様子だと・・・

 ふふっ、この前もそうだったね」



 自分が驚かせたことについては触れず、フラッドに軽口を言う女性は、フラッドの様子から察し、邪な笑みを浮かべた。



(この人はこの前のナイスバディさん!

 相変わらずエロい体してんなおいっ!

 これは少し期待できる展開だが…早々うまくはいかんだろ)

「お姉さんは何の用があって僕に近づいてきたんですか?」


「う~ん、意外と堅いね君」


(堅いって何がだよ!まさか・・・いや触られてないし、態度だろうなこの場合、うん、きっとそうだ。

 ・・・そうであって欲しい)

「っ!?・・・質問に答えてください」


「ふふっ、私が君に近づいた理由は、この前私の事すごく見てたからってのと」


「うっ、・・・それと?」


「君、魔句使えるでしょ?

 魔力量とか魔力操作がしっかりしてるからね~

 それで気になって話しかけたのよ。

 あと、もうちょっとバレないように見たほうが良いよ?」


(バレていたか、男のチラ見は女のガン見というが本当みたいだな。

 まぁそれはいいとして、この人、他人の魔力量や魔力の動きが解るってことか?

 母さんから見れるようになるなんて教わってないから、さぞ名のある魔句師か特殊能力者と言ったところか?

 どちらにせよ、立場は上の方だろうな)

「お姉さんは、他人の魔力量やその動きが見えるんだ?」


「へ~そこに着目するとはなかなかだね~

 そう、お姉さんはそういったものが解るんだよ!

 それで、この前見かけた少年がなにやら考え込んでいて、なおかつ魔力の動きから魔句について考えているってわかったからね。

 あれかな?覗きの魔句でも考えてたのかな?」


「んなっ!?覗きなんて考えてないですよ!」


「ホントかな~?」


「それより、魔力の動きで魔句について考えてるってわかったんですよね?

 それはどうしてわかったんですか?」



 お互いに自己紹介もなく続く会話に何の疑問も抱かないフラッド。

 そして、フラッドの質問に更に興味が湧いたといった表情で彼を見る女性はワクワクとした様子でフラッドに答える。



「いいね~君の事益々気に入ったよ!

 お姉さんが教えるときはそれ相応の物を貰うんだけど、君には特別に教えてあげよう!

 魔句って、イメージも重要ってことは知っているよね?

 実際は魔法言語に魔力の乗せるだけで魔句は発動するんだけど、イメージの有無やそれの強弱に応じて発生する事象の精度や規模、威力なんかが変わってくるんだ。

 なぜたかがイメージだけで変化が生じるかと言うと、魔句発動時にイメージをするときはそれに魔力が乗るんだ。

 その魔力の乗ったイメージは言葉の補完として事象の再現に使われるんだ。

 だから、魔句師やその才能がある者が魔句の開発やらでイメージをすると、実際に使う時のように魔力が使われる。

 つまり魔力に動きが生まれるんだ。

 そうした、動きから魔句について考えているって判断するわけ。

 ちょ~と長くなったけどわかったかな?」


「ってことは逆にイメージが強くてしっかりしたものなら句が不完全でも発動するってこと?

 それにそれが本当なら魔句師相手に戦うとき、お姉さんみたいに解る人だったら先手が打てる・・・」


「さすがだね~呑み込みが早い!

 で、君はどんな魔句を考えてたのかな?」



 女性によるちょっとした講義から、通常の質問に変わったことに少し戸惑いながらもフラッドはこれまでの経緯を語る。

 その頃にはフラッドの熱く猛っていた者は鳴りを潜め、フラッド自身も彼女の姿を気にしなくなっていた。



「―――と言うわけで、捜索の魔句を考えてました。」


「なるほどね~、君の仮説はほぼ正しいね。

 ちなみに捜索魔句は既にあって、それは君が思いついた

 サーチオブジェクトだね。

 絞り込みたい場合は、更に句を足せばいいんだけど・・・

 今回みたいなケースはイメージで何とかなっちゃうから~出血大サービスってことでお姉さんが特別に探してあげよう!

 お姉さんの魔句を見てしっかり覚えるんだぞ?」


「え、ちょっと待って!」



 フラッドの制止も聞かずに女性は魔句を唱える。



「サーチオブジェクト」



 魔句の詠唱と共に半透明な波動の様なものが彼女を中心に球体が膨らむように広がっていく、まるでエコーを可視化したかのようなソレは、見える者と見えない者がいたようだ。

 波動が広がってから少しして、彼女がフラッドを見据える。



「今のがサーチオブジェクト・・・」


「君、探し物見つかったよ?

 お友達が予想した通り、下水路にあるみたいだね。

 入ってすぐのところだからまぁ大丈夫かな。」


「へ?あ、ありがとうございます!」


「ほら、お友達を呼んで依頼を完遂してきなさい。

 あの女の子は特に急いで呼んであげなね?」



 そう彼女が指をさす先には怒りと悔しさが混在した表情を浮かべ堪えるようにこちらを見つめるポーラと、それを心配そうに見るイオの姿があった。

 ポーラとイオは、フラッドが女性に話しかけられるところから見ており、女性の行為とその後のフラッドの反応から、親の仇をみつけたような表情でポーラが突入しようとし、イオはそれを止めようとして引きずられていた。

 二人の会話が聞こえてくるまで近づいた段階で、女性の魔句についての話を聞き、また、それを真剣な表情で聞いているフラッドの様子を見て、ポーラはその歩みを止め、今に至る。



「ポーラちゃんたち近くに居たんなら早く言ってよ」


「ふふっ彼女たちも行くに行けなかったのよ。

 それじゃあ、お姉さんは帰るね」


「えっ!ありがとうございました!

 あのっお名前を教えていただけると」


「私の名前は秘密。

 そう遠くない内にまた会えるからその時にね。

 それじゃあね()()()()()


「ッ!?」

(なんで俺の名前を!?)



 フラッドが女性に名を呼ばれたことに驚いている内に彼女は水浴びに来ている人々の中に紛れていった。

 そして少し経ってからザック達と合流し、いよいよ下水路の捜索へと向かうのだった。



お読みいただきありがとうございます

今回投稿が遅れましたことお詫び申し上げます。

途中から大分筆が乗り、予定よりも文章量が多くなってしまいまして、それに合わせて確認をしていましたらこのざまです(笑)

今後このようなことがないようにもう少し余裕をもって作成しようと思う次第です。


次話についてですが、6/9を予定しております。


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